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鈴木武蔵が後半途中から出場、惜しいシュートも

北海道コンサドーレ札幌から8月18日にベルギー1部リーグ(ベルギー・ファースト・ディヴィジョンA。スポンサーであるビール会社のブランド名「ジュピラー」を冠してジュピラー・プロ・リーグとも)のKベールスホットVAへの移籍が発表された日本代表FWの鈴木武蔵は、現地時間30日のスタンダール・リエージュ戦に78分から途中出場。
ポストに当たる惜しいシュートがあるなど、ゴールは奪えなかったものの短時間で連続してチャンスを生み出した働きぶりに現地メディアも「(ポストに当てたシュートは)ゴールに値した」などと好意的に伝えているそうだ。

鈴木武蔵という男

鈴木武蔵は26歳。群馬県太田市出身。186cm、74kg。ジャマイカ人の父と日本人の母を持つ。2012年にアルビレックス新潟でJリーグデビュー。水戸ホーリーホック、松本山雅FC、V・ファーレン長崎を経て、昨シーズン北海道コンサドーレ札幌に加入した(Jリーグ・アンダー22選抜としてJ3でプレーした時期もある。また水戸と松本山雅は期限付き移籍)。
昨シーズンは札幌で33試合に出場して13ゴールをマーク。また、ルヴァンカップではチームの準優勝に貢献し、自身は7ゴールを決めて大会得点王となった。今シーズンも出場したリーグ戦4試合すべてでゴールを奪っていたが、8月18日にKベールスホットVAへの完全移籍が発表された。
日本代表には2019年より選ばれ、7試合に出場して1ゴール(2019年12月10日の中国戦)。
特技はものまねで、ジャパネットたかたの高田明氏のものまねは定評があり、北海道のテレビ番組内でも何度か披露している。

現在のチームは"2代目"のベールスホット

KベールスホットVAは、首都ブリュッセルに次ぐベルギー第2の都市で、市としては最大の人口を持つベルギー北部のアントワープ(アントウェルペン、アンウェルスとも)にあるクラブ。
「鈴木武蔵がベールスホットに移籍か」というニュースが流れて、Wikipediaでベールスホットを調べた人は皆ビックリした。なぜなら「ベルギー・アントウェルペン州・アントウェルペン南部を本拠地としていたサッカークラブ」というのが出てきたからだ。
だが、これは「KベールスホットAC」についての記述。書いてあることは間違いではないが、このクラブは2013年に破産宣告を受けて解散した別組織。
その後、ベルギー5部のアマチュアチームKFCOウィルライクが吸収合併に名乗りをあげ、「ベールスホット」の名前を継承。カテゴリーは4段階下がり、国内リーグの5部に値するアントワープ州1部リーグから「KベールスホットVA(以下ベールスホット)」として再スタートした。
このチームが2014年に4部昇格、2015年に3部昇格、2017年に2部昇格と着実に昇格をし続けて、2020年についに1部昇格を果たした。本拠地はオリンピスフ・スタディオン(オランダ・アムステルダムにも同名の競技場がある)。1920年に開かれたアントワープ五輪のメインスタジアムで、五輪後はサッカー専用スタジアムに改修された。収容人員は12,771人(UEFAの大会では12,206人)。

日本人選手が活躍しているベルギー1部

今シーズンは18チームが加入しているベルギー1部リーグでは、今シーズンも二桁の人数の日本人選手がプレーしている。一番目立つのが、伊藤達哉、シュミット・ダニエル、鈴木優磨、中村敬斗、松原后と5人が所属するシント=トロイデンだ。
さらにKRCヘンクの伊東純也、サークル・ブルッヘの植田直通、ワースラント・ベフェレンの小林祐希、ロイヤル・アントワープの三好康児、シャルルロワSCの森岡亮太と錚々たる顔ぶれが揃う。
ロイヤル・アントワープは同じアントワープにあるクラブで、本拠地のボサイル・スタディオンはオリンピスフ・スタディオンとはわずか11kmしか離れていない。
ベールスホットのサポーターは5部からやり直しになってもベールスホットの新チームを応援し続け、ロイヤル・アントワープに鞍替えする人はほぼいなかったという。かつてコンサドーレに在籍した同士の鈴木武蔵×三好康児が対決するアントワープダービーは今から楽しみである。

10番の鈴木武蔵に日本のサッカーファンは仰天

ベルギー1部の試合は日本人選手が所属するチームを中心にDAZNが中継している。ベールスホットとスタンダール・リエージュ(以下リエージュ)の試合もDAZNで日本語実況つき(解説者無しのワンマン実況)で放送された。
鈴木武蔵はベルギー入国後にコロナ禍による防疫の観点から隔離を余儀なくされ、チームに本格合流したのは前日だったと伝えられていたが、それでも期待は大きく先発は回避したもののベンチ入り。しかもチームのこのツイートで、日本のサッカーファンは仰天した。

んんん!? 10番!!?
50番とか96番とか情報が飛び交っていたが、まさかまさかのエースナンバー10番??
実は今シーズンのメンバーにすでに10番をつけている選手がいたはずで、これはたまたま借りて着ただけでは、と半信半疑な人もいたが、DAZNの中継でも実況担当の喜谷知純アナが背番号10と伝え、現地の表示も10。期待が半端ないことが伝わってきた。

相手のリエージュは、ベルギー東部の工業都市であるリエージュのクラブ。サイクルロードレースファンなら、ワンデーレースの「リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ」でお馴染みの地だ。かつては川島永嗣、永井謙佑、小野裕二と3人の日本人選手が在籍したが、現在は日本人選手不在。
30日の試合は第4節で、ここまでベールスホットは開幕から3連勝し、勝ち点9。リエージュも2勝1分で勝ち点7と、好調同士の顔合わせだ。

試合はベールスホットが3-5-2、リエージュが4-3-3のフォーメーションでスタートした。ベールスホットは9番をつけたカメルーンのマリウス・ヌビッシと34番のオランダ生まれでモロッコ国籍のタリク・ティスダリの2トップ。
立ち上がりからしばらくどちらも大きなチャンスを作れない展開が続いたが、先に得点を奪ったのはリエージュだった。32分、DFファイとのパス交換でボックス右から侵入したMFラスキンの折り返しをFWアベナッティが流し込んだ。
そのまま0-1で折り返すと後半ベールスホットが反撃。69分、75分と決定機を迎えたが、いずれもシュートが枠に飛ばず点にならない。逆にその直後、リエージュはラスキンのスルーパスで抜け出したFWレスティエンヌがボックス右から侵入して冷静にゴール左隅に決め、差は2点に。

78分、ベールスホットのロサーダ監督(38歳)はMFサヌシを下げて鈴木武蔵を投入。鈴木はさっそくチャンスをつかんだ。82分、味方の左サイドからの横パスをバイタルエリア中央に走り込んだ鈴木が右足でミドルシュート。さらにこのクリアを拾って攻め続け、ボックス右横でパスを受けたティスダリからのマイナスのクロスボールを再び鈴木が今度は左足で狙ったが、これは惜しくも左ポストを直撃した。
直後の83分、リエージュはレスティエンヌの右クロスをファーサイドから途中出場のFWウラレがヘディングで叩き込み、0-3となって勝負は決した。

コンサドーレに似ている? ベールスホット

ベールスホットは今シーズンの初黒星を喫し、3位に後退。代わって4連勝のシャルルロワが首位に立ち、リエージュが2位に浮上した。
ベールスホットは細かいパスをテンポ良く繋ぐサッカーを見せ、コンサドーレに似た印象だ。試合でのパス数が469本でリエージュの396本を大きく上回り、パス成功率も81%と相手の75%より高かった。
この試合ではシュートを21本放ち、積極的にゴールを狙う姿勢も感じられた。ただし、枠内シュートは5本にとどまり、シュート17本中8本が枠内だったリエージュより正確性という点では見劣った。
ボール支配率は55%と若干上回ったが、これはリエージュがしっかり守りを固めてきたため、穴を探してボールを回す時間が長かったこともあるだろう。ファウル数が14でイエロー3枚はやや多い印象。コーナーキックは7回あったが、いずれも得点に結びつけられなかった。今後は鈴木のヘディングが見られるだろうか。

鈴木は「年齢的に最後のチャンス」と海を渡った。その移籍先は、札幌に似たサッカーをするだけにやりやすいだろうし、速さという点では鈴木のほうが速い。アピールしたいと言う裏へ抜ける動きを味方が察知してラストパスを出せば、遠からず初ゴールの瞬間が訪れるだろう。まずは、スタメンを奪取して90分フルで戦う姿を観たい。


地元網走に帰ってきて5年半経ちました。元競馬専門紙編集部員。サッカーや野球、冬はカーリングなどスポーツ観戦が好き。もちろん、競馬も話題にしています。時事ネタや網走周辺の話題なども取り上げます。よろしければ、サポートもお願いいたします。