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『 NOISE 』 服部峻 x 遠藤麻衣子 対談

遠藤麻衣子氏 撮影 = 服部峻

服部峻 = H
遠藤麻衣子 = E

【H】アルバムの感想とかもしあれば、教えて欲しいんですけど。もしあれば。ない?

【E】いやなんか、ロマンのあるアルバムだなと思いました。

【H】ありがとうございます。『 NOISE 』に収録されてる3曲が、遠藤さんの映画『 TOKYO TELEPATH 2020 』に関わる曲なんだけど。オリンピック前の2018年の東京が舞台の作品だったけど。オリンピック終わったじゃないですか。今年。なんか自分で心境の変化とか。あと実際キョンちゃんは東京を救えたのかとか(笑)。色々気になってるんですよ。どうですか?オリンピック終わって。

【E】キョンちゃん、あの映画の中で、色々結界張ってるんで。それがあのスタジアムにも、どう作用したのかわかんないけど。

【H】ね。守ってああなったのか。守れなくてああなったのか。

【E】そうそうそう。まあ、なにかしら。だけど、ずっと戦いは続いてます。

【H】開・閉会式の演出を見てると、すごい漂白されてたっていうか。個人的にはグッとは来なかったんだけど。無難なものを選んでった結果、誰の心にも刺さらなかったというか。なんか街自体も、徐々にそうやって漂白されていってるなって。僕は思うんだけど。遠藤さんは東京育ちだけど。NYにも住んでたと思うんだけど。東京を見てきて、なんか昔と今と違うことってあるんですか?

【E】街はもうちょっと汚かったかな、小ちゃい時。ビラとかも全然落ちてたりとか。あとなんか電車乗ってると、ひとりでぶつぶつ言ってるおっちゃんみたいなのが、今よりいっぱいいた。

【H】へえ~。

【E】なんかよくわかんないけど。なんかもっといて。

【H】もっとアンダーグラウンドっていうか、ごちゃごちゃしてた?今巨大施設がボン、ボンッて感じだよね。大きい。六本木ヒルズとか、昔はバーとか、小さいビルがあの場所にあったらしいんだけどさ。それを知らないじゃん。自分は。できてからだから、来たのが。

【E】でも、どこもそうなんじゃん。NYも東京も。

【H】東京の好きなとこってありますか?とか、好きな場所。自分は深大寺が好き。あと街だと上野。

【E】全部好きかな。パッと思い付かないから。

【H】今後の予定は?

【E】2月に恵比寿映像祭で新作、オンライン映画プロジェクト。

【H】他、何聞こうかな。これで一応終わりなんだけど。聞きたかったことは。いいよね、これで。ちょっと深みがないけど。なんか深い話してよ。

【E】何?とりあえず深い話してって(笑)。どういうこと?

場所を移動する2人

【H】ロマンのあるアルバムっていうのは、今までと比べて?一応自分は、今までで一番満足できたっていうか。すっごい籠って。特にミックスを、かなりやりたいことできたから。

【E】アルバムを聴いた感じだと、それぞれの空間で遊ぶみたいな。空間っていうものの作り方が、どんどん遊べてるっていうか。そういう感じがして。空間で遊びつつ。けどあるわけじゃん、スペースが。それがたぶんテクニックがないと、ごちゃごちゃしちゃうと思うんだけど。メリハリ付かなかったりするけど。そこがちゃんと立体になってるっていう感じ。磨きがかかってるんじゃないかな。

【H】ちょっと大人になったなって、自分でも思う。

【E】あとこれが違うなって思ったのは、間?間がやっぱできたかな。それが一番大きいかな。

【H】それはフジコ・へミングにすごい影響を受けてると思う。フジコ・ヘミングってさ、だらっと曲を。自己流の溜めをすごい作って。オーケストラとの共演でも、指揮者を見ないで弾くから。逆にストリングスとか木管が合わせてる気がする。でも合わない。全然合わない。一定じゃない。ぐしゃって、ドロドロって朽ち果ててるような演奏になっちゃってるんだけど。それがすごく好き。そのもたれというか、ヨレみたいな。そういうのを意識して。シーケンス(のグリッド)に依存して作らなくなった。前半の曲は。後半はループものだけど。だから溜めとか間っていうのは、たしかに。

【E】なんか今までのやつだと、音が始まったらコロコロ。ずっとなにかしら、こう。

【H】ずっと、転がり落ちてる感じだよね。

【E】そうそうそう。で、細かく。いろんな音が。今回のはその間っていうのが違うかな。

【H】そう。今ハマってる作り方で、シーケンスに依存しないで曲作るのの方が、逆にたのしくって。

【E】シーケンスに依存しないっていうのは、要するにループをしなければシーケンスに依存しないっていうこと?

【H】クリックをオフにして、DAWのBPMとか関係なく、録音して弾いて、それに重ねてくみたいな。前半の曲は、自分でも拍子とか、拍の頭とか意識しないで作ってる。たとえば「まなざし」っていう曲。あれは、もうザーッと自分で弾いたのをエディットしまくってる。今、何拍子、とか考えてない。

【E】自分の理想の、頭の中の、こういう音鳴らしたいとか。その理想が、どのぐらい実現できてるの?

【H】今回は相当満足いって。満足いくっていうのが今回のテーマだったから。かなり満足いった。今まではどうしても時間的な制限があったりとか。まわりの、レーベルの人の、小言みたいなものに影響されて。やりたいことも、はしょらざるを得なかったんだけど。今回は誰にも会わずに。でも7ヶ月だけど。だいぶ早くなった。頭の中にあるのは、音色とかはぼやけてるけど。結構構成はカッチリ。例えば、音のノートの長さ、この「溜め」だと短い、これだと長い。っていうところ。そこを徹底的にイメージ通りに。シーケンスのクリックの、1、2、3、4っていう刻みを無視して作った。だから「 Fate 」って曲も、一定のテンポじゃ刻めない。

【E】だからなんかすごい、制御っていう言葉が浮かんで。

【H】たしかに。機械っぽい音もオッケーな世界観だし。いきなりザーッみたいな持続音が始まるとこが、今回試してみて、『 NOISE 』の世界観。いきなり鳴る。貼ってるだけなんだけど。それとかも「このタイミングで!」っていうのがあって。ここでこの音が鳴ってほしいっていうのを貼って、ちょっとでも違うと、少し後ろに移動したりとかっていう、その駆け引きみたいなのが。すごいたのしかった。そこが僕は、ずっとやりたかったから。そういうのを時間を気にせずに。だから今回初めてたのしめた。最後まで。

【E】あのアルバムの、電子音で、ちょっとノイズじゃないけど。そういう音が多いわけじゃん。あの辺も、自分のその理想の操縦感っていうか。

【H】機械の声みたいな。

【E】あれはなに?

【H】あれは、なんていうのかな。まさに世界観!ああいう世界の作品で。この作品の声。ノイズっていうタイトルは、僕の中では肯定的っていうか。自分は否定的になにかを作ることはないから。なんか、ずっと5年ぐらい前から、次は『 NOISE 』だって決めてて。その世界観を磨き上げるじゃないけど。映画と同じだよね。こういう世界観で、こういう音が鳴ってる世界っていうのを頭の中で作ってて。だからあれは絶対重要な人物で、人物なのかわかんないけど。必要な音。

会話が成立してくる2人

【E】なんで自主で出すって決めたの?

【H】レコードって、実は自分レコードプレーヤー持ってなくて。フィジカルっていうんだけど。盤を出すのが。CDを出しても、レコードを出しても。実は自分今どっちも聴けなかったりとかして。普段聴いてるのがサブスクで。ネットでなんでも聴くみたいな感じだから。あんまりお金の事とかを気にしなくなったし、僕は最近。あともうまわりの人の意見を聞いている余裕はなかったっていうか。攻撃力100で、防御力は0じゃないけど。そういうタイプじゃん、僕。そういうタイプだから今回はもう作ることだけを100。完成したらポッて出すじゃないけど。ディアンジェロにすごい影響を受けてて。『ブラック・メサイア』は完成後、即ネットで発表、みたいな感じだった。『ブラック・メサイア』はマスタリングが、全然音が出てなくて。全然出てないんだ。ハイの部分とか。でも音圧至上主義みたいなのが、なんか終わりを告げるじゃないけど。あれが出てから、ちょっと流れが変わった気がする。自分も、昔は音圧を気にして、あれもしなきゃこれもしなきゃっていって。ストレスだった、前のアルバムは。今回はもうたのしむだけたのしんで、マスターにコンプはかけず。スッキリしたら、出しちゃえっていう。でも、来年フィジカルも考えてるけど。そういう発想。でもこれは、いいことかどうかはわかんない。次のはもうちょっと、完成させてからのプロモーションとかレーベル探しもがんばりたいと思ってる。次もあるから、今回はこれでいいやみたいな。

【E】次はもう決まってるの?

【H】いや、決まってないけど。音源自体はもう溜まってるっていうか。なぜかっていうと、今回は6年もかかっちゃったから。色々あったから。すごい遅れたから、今回はそうしようって決めてた。

【E】6年かかって作って。今だからまた思う、自分にとっての音楽ってなんなの?

【H】水みたいな感じじゃない?もう水がないと生きていけないじゃないけどさ。自分の体も水だし。飲めないと喉がカラカラになって。フラストレーションがそれだけで溜まるから。水みたいなもんだと思う。

【E】作る音楽と聴く音楽は?

【H】聴く音楽は、結構癒しを求めるかも。アリアナ(・グランデ)とか。自分にないものを求めちゃう。作る音楽はやっぱり、それこそ水じゃないけど。可塑的っていうか。やっぱり昔からクラシックとか聞いてきて、なんかぐにゃぐにゃと変化していくのが好きなの。樹木的というのか。一定のテンポで進むループものとかは、火星1周分ぐらい聴いてるから。自分で作ろうって思わないかも。やっぱり変えていくのがたのしい。作っててたのしいっていうのは、すごい重要で。自分がたのしめるか、たのしめないかっていうのが。だから最近思うのは、クライアントワークとかって、たのしくないのあるじゃん。自分が満足いくものが採用されるかどうかもわかんないし。自分には、そういう仕事仕事した音楽制作は向いてないんじゃないかなっていうのは、ちょっと感じてる。

【E】アルバムの中で、映画の曲が何曲か入るわけじゃん?でもそれでも自分のアルバムなわけじゃん。そこのなにかしら映画のテーマと、アルバムと、なにかが共鳴するのか。その関係性みたいな。

【H】一応『 UNBORN 』の時からずっとだから。実は(遠藤と)関係がないアルバムっていうのは、まだ出したことがなくて。自分の中で、ちょっとライフワークじゃないけど。10代の時から知り合いだし。他の人の映画をやっても、おそらく入れてないっていうか。なんかそこは自分の中でライフワーク。最初にそれをやっちゃって。2回目もそうだったから。今回3回目で、特に意識せずに。『 NOISE 』っていう、僕の中のアルバムの世界観の中に入ってるんだと思う。『 TOKYO TELEPATH 2020 』のあの世界も。ちょっとだからこう、重なってる部分がある。全然他人なんだけど。そこはだからまあ、コラボみたいな感じじゃない?ヒップホップのフィーチャリングじゃないけど。そんな感覚で、映画とか音楽とか意識せずに。なんかすんなり入ってくれるし、自分も入っていけるっていうのはありがたいこと。自分めちゃくちゃ引きこもりだし。まあ、学校とか行ってないけど。そういう出会いが10代の時にあったのは、すごいうれしいなと思ってます。

【E】で、なんか私もアルバム聴いて。また次一緒にやるのがたのしみになりました、みたいなことを書けば?

【H&E】(笑)。

【H】っていうのを書けば?って書くわ、じゃあ。


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HATTORI Takashi - NOISE

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とうとつに始まった「 NOISE 」対談・・・次の対談相手は・・・貴方です!!!

服部峻
20211203

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