19時 結果発表へ歩く

 もうすっかりと日も暮れた道を、小沢君と並んで歩く。目的地は先ほどカメラを預けた写真屋だ。こんな時間までやっているのはご苦労様だなと思ったけれど、チェーンの経営はそんなものなのかもしれない。

 とっさに心霊写真を撮っていると言ったのだけれど、どう思われたのだろうか。実際写真撮影から放課後の現像まで付き合ってくれているのだから、興味を持ってくれはしたのだろう。だからこそ、少し悪い気がしてくる。今更本当は心霊写真を撮っていたわけではない、なんてことは言いだせない。何も映っていないであろう普通の写真たちが待っていることを知りながらも、心がドキドキしていたのは、罪悪感から来るものなのだろうと思っていた。

 もちろん、撮ろうとしたものはあったのだ。私はたまに教室で見る小さな人。ふわふわと飛びながら、誰に何をすることもなくそこにいる人。あまりにも自然だったので、初めて会ったその瞬間こそ驚いたものの、そこで声を出さないことに成功してからは、もはや驚くこともなくなっていた。けれどもそんなことはクラスの誰にも言えやしない。だから、朝早く来て一人で確かめようと思っていたのだ。

 わざわざ使い捨てカメラを用意したのは、スマホのカメラで実験したけれどうまくいかなかったからだ。スマホが普及して心霊写真が減ったなんて身も蓋もない話を聞いたことがあったが、まさかそれを自分の行動の指針とする日が来るなんて思いもよらなかった。馬鹿らしいと思いながらも、朝早く家を出るその足は、いつもより軽快だった。

 そして今、罪悪感を感じているはずの足どりは不思議と軽い。たとえあの私にしか見えない「小さな人」が写っていなかったとしても、それでもいいかもしれない。
 もし写っていたら、それは二人の秘密になるだろう。写っていなければ、それは…。

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