18時 出発

 こんな時間に家を出ることに罪悪感を感じなくなったのはいつからだろうか。

 これまでも夕方暗くなってからコンビニに行くことなどは何度もあった。けれど、夕方からその日のうちの大きなイベントを迎えに家を出るなんてことが始まったところには、何か明確な境界線がある気がする。それはいつの間にかまたいでしまったもので、その存在にこれまで気付いていたわけではなかったのだけど、その日の次郎はなぜだかそれを考えてしまった。恐らくそれは、自分が今からやることが突拍子もなく、馬鹿らしく、先が見えないけれどわくわくするものであったからなのだろう。そんなことをするのは、小学生の時以来だった。

 実はその次郎の結論は間違っている。彼はいつだって突拍子もなく、馬鹿で、先の見えないことをわくわくしながらやってきた。やっていることは変わらないのだ。今日、いつもと違う点、それは他の人の為に行動しているということだ。そんなことにも彼は気付かず、約束の場所へと向かっていった。

 次郎は自分はヒーローではないということを知っていたけれど、ヒーローになりたいという願望は知らなかったし、その心をくすぐられながら誘われていることにも気付いていなかった。けれどもそれは次郎にとっても、彼を誘ったタカシにとってもなんら問題のないことだった。彼は今からヒーローになる。そして朝が来ればまた眠る。それは、変わらない。

 今日のヒーローは、少し息を切らしながら登り坂を自転車で登っていく。ヒーローは自分のなまった体を呪いながら、額の汗を拭いた。

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