ゆく年くる年〜今年の感想とこれからの果樹の展望〜

今年もあっという間に一年が過ぎてしまった。コロナウイルスによる経済活動の停滞による消費の冷え込みだけではなく、今年2月の高知など襲った寒波や北海道の干ばつなどの異常気象も追い討ちをかける。特に春季に東北一帯を襲った霜害は類を見ないほどの被害を与えた。特に山形のオウトウ(さくらんぼ)は壊滅的な被害を受け全体の収量が例年と比較して3割も減少し、先日の山形新聞の記事によると3~5割減の農家が36%と一番多く5~8割減の農家も24%あったそう。りんごもサビが目立ち、豊作と言われた去年と比較してもあまり宜しくない。一昨年(2020年)と同様にラニーニャ現象の影響を受けて例年よりも気温が下がるとされる。ビワで有名な長崎、ミカンで有名な愛媛など比較的温暖な地域も再び冷害を被る可能性がある。特にビワは段々と消費が落ち込んでいくなかで、千葉も2年前に襲った台風被害から完全に復活できておらず、長崎も5年前の凍害からようやく戻ってきたといったところでここで寒波が来るとかなりマズいと思う。春には戻るそうだが今年のような冷害がないとは言えない。いずれにしろ地球温暖化による被害であるのは間違いないが干ばつや大雨、高温や寒波・霜害など本当に極端である。近年は台風が少ないのがせめての救いである。温暖化の影響はこれだけでなく産地や種類問わず収穫時期が7~8年前と比べて10日ほど早くなっている。特にナシやモモなど顕著に早くなっており、その分終わるのも早い。晩成品種がたくさん登場してきていることや保存技術の向上で気づかれにくいが、個人的に確信している。
最近は緩やかに消費も回復してきており、先日のクリスマスには平時のようにケーキなどを求める客でデパートやショッピングモールは賑わっていた。去年(2020年)は百貨店や高級料理、ホテルなどが休業し、冠婚葬祭などの行事も自粛されていた為に通常ではお目にかからないような高級品が安く出回っていた。また、オレンジなどの輸入果実も航空便の減便による品薄、レモンやライムは居酒屋などアルコールを提供する飲食店の休業に伴いかなり安くなっていた。極め付けが「太陽のタマゴ」の初セリが10万円、「夕張メロン」も12万円と目を当てられないほどの値段を叩き出した。今年は「太陽のタマゴ」は20万、「夕張メロン」は270万と回復してきているが、コロナの経済低迷を強く表していた。
しかし、今年は経済が動き出し事による原油高騰による影響もあり年末のメロンやイチゴの値上がりも顕著であった。ビニールなどの農業資材や肥料の高騰も価格に変化をきざすかもしれない。また、印象的であったのが果物も減量がはじまったことだ。いちごも1パックが270gから250gへ、ミカンもどこの産地か忘れたが10キロ箱から8キロ箱になっていた。

これからの果物の予測

リンゴ これからは黄色系や赤肉系の品種が伸びてくるであろう。早生種はやはり日持ちや味の面で「シナノリップ」に勝るものはないと思っているがまだ長野限定の品種なのが残念だ。早生種であれば「恋空」や「みきライフ」も良いがボケやすく、「紅ロマン」は硬さは良いが多少酸味が気になる。「メルシー」なんかは硬さもあり、味は良いが小さいのと林檎らしくない見た目がちょっと気になるが「きおう」の前の黄色系品種の中で有望。つがるも根強いファンがおり急激な減産はないと思われるが、少しつづ減るであろう品種。中生種であればトキは味も良いのでこれからも増えるであろう、他はあまり変化はないと思われ。晩成種はフジは変化なく、王林は「きみと」や「シナノゴールド」に少しずつ置き換わると考える。「ぐんま名月」もうまいが日持ちの点では翌年2月までくらいの日持ちであろう。こみつのブランドで有名な「こうとく」の増殖は控えるべきであると考える。蜜の入りが売りであるのに蜜が抜けやすく、ボケやすい。可視化できる甘さのマーカーとしては優秀なのはわかるが、メディアに刷り込まれた「蜜入り=甘い」という認識はなんとかならないものか。蜜と香り以外はフジの方がはるかに優れる。また、赤肉系の品種もたくさん出回る様になったが、依然フジの様な完全生食用の品種はないと考える。最近では「美紅」が一番有望とされているが、個人的には肉質があまり良くない印象を受けた。個人的には個人育成品種の「なかのきらめき」と「ムーンルージュ」が一番おいしかった。これからもっと品質の優れた赤肉の品種が出てくると思われる。また、特殊品種として「はるか」はもっと増えても良いと考えるが無闇な増殖は望めない。私の一押しの「こうみつ」もとうとうテレビで紹介されてしまったので有名になるのも時間の問題かもしれない。
ただ黄色系の品種ほど若取りされる傾向にあるが、絶対にそれは避けるべきである。確かに早く出せた方が単価が高いのは分かるが、品種全体の評価を下げてしまう。

ブドウ 少なくともシャインはそう遠くないうちに価格崩壊を起こす危険性を孕んでいる。ほかの有名な品種もそんな感じであったから珍しいことではない。北は北海道、南は鹿児島まで栽培されているがどこでも急速にシャインへの切り替えが始まっており、木が実をつけ始める4年くらい後にはかなり値段が落ち落ち着くと思われる。ぶどうは民間の育種が盛んでシャイン系の志村さんの品種が流行っているが見た目は立派だが、植原さんの「マスカサーティーン」や「ヌーベルローズ」は素晴らしい品質であり、将来的にかなり増えてくると思う。確かにまだ知名度それほどないがシャインの子供品種はかなりのポテンシャルを秘めているものが多い。「ジュエルマスカット」は正直なところシャインの下位互換である。また長野県では新品種の「クインルージュ」は有望で、クインニーナに変わる赤系の品種でかなり有望である。

日本なし
暫くは変化がないと思うが今のところの個人的に好きな品種は「あきづき」である。二十世紀も捨て難い。これからやや晩生の「甘太」は増えても良いと思う。鳥取の独自品種の「新甘泉」は少し見る機会が増えてくるかも。

西洋なし
ラ・フランス、ル・レクチェの二大体制は簡単に崩れない。特にラ・フランスは日本における西洋なしの代名詞であり少なくともあと20年は安泰であろう。ただ早生の洋梨としてプレコースやバートレットに変わる品種として「ジェイドスイート」はもっと流行っても良いと思う。いずれにしてもル・レクチェは美味さは不朽のものである。

もも
正味なところ早生〜中生種は変わらないと思うが、晩成種はこれから有望な品種が多い。特に「CX」はかなり有望である。硬めで桃らしくない食感ではあるが癖になる美味しさだ。ほかの晩成だと「さくら」も美味いが作りにくい。「幸茜」も熟すと早生の桃ようにジューシーになる。後3〜4年で「冬ももがたり」をデパートでよく見かけるようになるかもしれない。栽培は難しく価格は高いがその値段の価値はある。

さくらんぼ
数年前まで海外輸出を意識した大玉高級品種が開発されており青森の「ジュノハート」など色々あるがまだ普及も進まず暫くは佐藤錦=紅秀峰ラインは崩れないであろう。紅秀峰は果肉が締まっており、硬めでパリパリしてて美味い。霜に弱いのが玉に瑕である。

すもも
私が興味無いだけかもだが暫くは変化ないと思うなぁ……最近は大石早生→貴陽→太陽→山形とかの晩成種のイメージ。プルーンももっと有望な品種が出てきて欲しい。

ネクタリン
桃とネクタリンの交配種なのでネクタリンと言っていいのか分からないが「ハネージュ」は美味かった。

かき
平核無柿と富有などの品種はこれから長期的に見てもさほどさほど変わらないと思う。これからは「秋王」や「太秋」のようなシャクと硬い品種も増えてくると思われ。

キウイ
緑はヘイワード、黄色はサンゴールドの時代が暫く続く。サンゴールドが普及して久しいが、あの先っちょが尖ったゼスプリゴールドが恋しい気もする。今年から登場した「ゼスプリレッド」は見た目の面白さもあり、少しつづ増えると思う。アレルギー物質が少ないのも魅力的だ。

柑橘類
私は専門外なので難しいが「紅まどんな」の人気は凄まじいものだ。確かにオレンジの甘い香りにゼリー質の果肉は確かに凄い。10年前からあるがその時はそんなに人気ではなかったがここ2年でメディアに紹介されてから人気が急騰した。「紅まどんな」が人気すぎて、「サンセレブ」など天草系のゼリー質の少し似たような柑橘あるにも関わらずマドンナが強すぎて目立てないでいる、これから有望な品種が出ても暫くは日の目を浴びないかもしれない。高級柑橘はデコポンの他に紅まどんな→せとか&甘平のイメージ。「デコポン」も人気が高いが、デコポンは農協の商標なので味はさほど変わらないが「大将季」など枝変わりやブランドなどで独自の名前を付けたものも増えてきた。個人的には「マコポン」や佐賀の「にじゅうまる」も気になる。国産のグレープフルーツは酸っぱいイメージがあったが「さがんルビー」は美味しかった。もっと増えてもいいと思う。皮が赤いみかんの「小原紅」も見る機会が増えてきた。神奈川の「湘南ゴールド」も種があるのが難点だが増えてきたなぁ……。最近は高糖度のキンカンの「こん太」など色々増えてきているが、苦味や酸味もなく甘くとても美味しい。

すいか
最近素晴らしい品種が沢山出てきている。特に「金色羅皇」はあの果肉食と独特の強い甘み、黄色果肉のスイカ=不味いというイメージを期待の払拭するニューホープだ。大玉傾向だがカットスイカにしても映えるのでこれははやるべきである。「羅皇ザスイート」も冬に食べてもシャリ感が良かった、糖度もある。ただ種ごとたべる「ピノガール」は薄いとはいえカスがかなり残り気になる。スイカは種を吐き出して食うものとまでは言わないが、種が無いスイカをもとめるなら「ブラックジャック」を食べた方が良い。これは普通の種ありと謙遜ない味で素晴らしい。

メロン
メロンも暫くは変わらないと思うが、The高級品のマスクメロンは消えこそはしないが需要の変化で少しづつ減少していくのでは?安価なアンデスやクインシーなどはそこまでの変化はないと思う。

いちご
詳しくないのでなんとも言えないが各地で色々な品種が誕生しているが、酸味が少ないものが殆どで甘みが強く、果汁が多いものが多い。個人的には「やよいひめ」が好きである。昔はいちご狩り専用の品種であったが、最近ではよく見かけるようになった。酸味は無いが香りと果汁と香りの面で優れている。他は甘酸適和のとちおとめやバランス型のあまおうも捨て難い。個人的に「とちあいか」は棚持ちや形は良いが、やや固めで果汁が少ないのが少し残念に思う。また、夏秋イチゴの進化もすごいもので「すずあかね」や「なつみずき」などアメリカ産とは比べ物にならないほど美味しくなった。本当に夏季のショートケーキに含まれる爆弾(アメリカ産イチゴ)は勘弁願いたいものだ。

パインアップル
個人的には「ゴールドバレル」は高いが本当に美味いと思う品種である。パイナップルはアレルギーがあるのだが、アレルギーが出てもいいから食べたいと思うくらいだ。また輸入パイナップルも3年ほど前から見るようになった「ハニーグロー」のような品種は変わらないが完熟に近い状態で収穫した酸味の少ないものが増えてきている。酸っぱいパイナップルは消えるのも時間の問題かもしれない。

バナナ
国産化が進んでいるが、これ以上普及するようには思えない。あまりここにはかけない事情もあるので割愛。

トロピカルフルーツ類
最近、再び海外からトロピカルフルーツが入るようになってきた。一昨年から海外産のランブータンやチェリモヤ、ホワイトサポテなどを見かけるようになった。もっと増えて欲しいところである。
これから国内産のアボカドは増えていくだろう「フェルテ」がいちばんよく見る品種だがほかは余りみない。マンゴーは沖縄の「金蜜」が増えるかもしれない、他はさほど変わらないとおもわれ。これから国産の見込みがあるのはパッションフルーツくらいだろうか?ライチも増えてきてはいるがマンゴーのような立場にはなり得ないと考える。

その他輸入果実
今年からアメリカからのプラム生果実が輸入解禁されたが、値段も味は悪くないが案の定殆どがおつとめ品になっていた。国産の方が強いので大きな懸念にはならないと考える。これからニュージーランドのリンゴは更に輸入が増えるであろう。私も5月頃になったら貯蔵のリンゴより輸入りんごの方がフレッシュで美味いと思う。オーストラリア産の巨峰とかももっと増えてきてくれると嬉しい。グレープフルーツは年々需要が無くなっているが、その代わりにメロゴールドがじわじわと人気が出てきた。嗜好の変化なのかもしれない。

その他雑果類
ポポーやホワイトサポテのブームは焉したのか?イチジクやブルーベリー、ラズベリーなんかはもっと品種が増えてきて賑やかなものになってくると思われる。ビワとかも緩やかに減少するのかな










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