夜に狩られる

沈むように溶けていくように
一人だけのラスが近付く夜に

「親リー」だけだった
その一言で全てが分かった
ツモ切ってラグった生牌のそのドラは
親の手牌に重なっていた

「ロン」と言われてから
僕の12000(いちまんにせん)を奪った
どこか遠く放り投げた僕のスマホ
映し出す僕のラス

いつだってポン・チー・カン
鳴く世界で何度だってさ
親のリーチ子のドラポンうるさい声に
嗚咽が零れそうでも
ありきたりな1000点きっとこの手ならアガリ切れる

ツモれないリャンメンアガれないリーチ
ボタン出る限り鳴いたかわし手
アガれぬまま無スジ連打され
親の追っかけがほら

忘れてしまいたくてアンインストール
でも翌朝には再インストール
怖くないよその予約ボタンを
今日も押そう

点棒がもうない
30000点ある他家が嫌いだ
見下したかのような4巡目リーチ
そんなラス前が嫌いだ

オーラス来たけどハネツモ条件
思わせぶりなホンイツきっと
これからたぶんずっとツモ切り
そのたんび怒って泣いていくの
それでもきっといつかはきっとメンホン張って
ラス抜けできるさ信じてるよ

もう嫌だってリーチしたって
がむしゃらに押してきて僕のリー棒取る君
もう鳳南疲れたよなんて
本当は僕も言いたいんだ

ほらまたリーチリーチと
鳴る世界で何度だってさ
君の為に用意した安牌使い切らない
「一発ツモ」だなんてさ
画面に現れた時
僕はスマホを投げた

ラス目からリーチ笑えなくなっていた
僕の目に映る手に安牌無し
ワンチャンスに溢れたイーピン
君のチートイに刺さる

変わらない3着留まっていた僕を
君は優しく奈落へと誘う
沈むように溶けていくように
段位ポイントが減るよ

忘れてしまいたくてアンインストール
消えていく天鳳「二度とやるか」
別れ告げたはずの天鳳を今再インストール

IDは忘れていないよ
僕は今、夜に予約押すよ

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