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エッセイ

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#思い出

現地に行って初めてわかる魅力もある

高校生の頃、友人に美術館に誘われた。なんでも魅力的なイベントが開かれているそうで、しかし高校生が一人で足を運ぶのは心細いので誰かと一緒に行きたいらしい。 僕は美術品といえばモネと東山魁夷が好きなくらいで、あとはほぼ無関心。「美術品なんてスマホで調べればいくらでも鑑賞できるし〜」などと考えている若造だったが、「丸の内のレストランで昼を奢るからさ」と言われてついて行くことにした。 迎えた当日、僕らは丸の内の地下でそこそこ高額な昼食をとり、美術館に向かった。友人は美術品を見てし

ある充実した1日の記録

これは大学3年の秋の話。 就活が視野に入り始めた時期だったが、この日は"とある理由"で大学のことしか頭になかった。 ※時刻はうろ覚えなので、「その時間に授業は始まらないのでは?」などとツッコむのはやめてほしい。 朝8:00 朝食を食べてすぐ、テレビにDVDをセットする。タイトルは「イングロリアス・バスターズ」。タランティーノが手がけたサスペンス映画だ。評価が高かったのでレンタルしてみたものの、どうも見る気が起きずに放置していたところ、返却期限日が迫ってきたので慌てて観る

ある夜の思い出

社会人1年目の春、僕たち新入社員は会社の研修に参加した。 研修先はド田舎だった。「サンドウィッチマンが秘境飯を求めて歩いているような所」と言えば想像しやすいだろう。 駅などない。バス停はあるが滅多にバスは来ない。人はすでに絶滅状態のようで、野生動物の鳴き声ばかりがよく聞こえる。 道端には、「野生動物に注意」と書かれた古めかしい看板が立っていた。 当然ながら、食事処もなかった。近辺には誇張抜きでコンビニしかない。スーパーは15キロ先で、車がなければ到底行けない。 僕た

6歳だった夏休み、祖母とトランスフォーマーとマジックアワー、千と千尋の神隠し

1、散歩6歳の夏休み。太陽が横から照りつける午後3時。 僕は、祖母とテクテク散歩していた。 両親が共働きの僕は、週に3日ほど、祖父母の家に預けられていた。 普段は一緒に本を読んだりテレビを観たりしていたのだが、この日は「後でいいものを見せてあげるから、その前に散歩しようね」と誘われ、近所を歩くことになったのだ。 散歩の最中は、僕の独壇場だった。 背の順で2人抜かした、学校で歌ったKiroroの「Best Friend」って歌が好き、こんな歌だよ、歌うから聞いて、夏休み明け