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エッセイ

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#日記

ある充実した1日の記録

これは大学3年の秋の話。 就活が視野に入り始めた時期だったが、この日は"とある理由"で大学のことしか頭になかった。 ※時刻はうろ覚えなので、「その時間に授業は始まらないのでは?」などとツッコむのはやめてほしい。 朝8:00 朝食を食べてすぐ、テレビにDVDをセットする。タイトルは「イングロリアス・バスターズ」。タランティーノが手がけたサスペンス映画だ。評価が高かったのでレンタルしてみたものの、どうも見る気が起きずに放置していたところ、返却期限日が迫ってきたので慌てて観る

女優・芳根京子に(間接的に)命を救われた話

昨年10月の夜7時。 うつろな目をした僕は、つり革にぶら下がるようにしてJR東海道線に揺られていた。ガタガタと響く走行音がやけに遠くに聞こえる。 この日、僕は会社でやらかした。といっても仕事でミスをしたのではない。 「はぁ〜、もうこんなのありえな〜い。」 と声に出してしまったのだ。 思い描いていたのと違う会社でのキャリア、そんな会社を選んでしまった自分、見つからない今以上の転職先… 悩む日々に心を蝕まれていた。当時SNSで悪質な嫌がらせや誹謗中傷を受けていたことも手伝って

自転車の補助輪

家にいると、毎日何度も「ガリガリ」という音が聞こえる。スーツケースを引き摺るときの音だ。 正直なところ、不快だった。窓を開けることが多い今日この頃、たとえ室内にいても車輪とアスファルトのぶつかる音が腹まで響いてくる。それも、1日に何度もだ。 長きにわたる自粛生活の反動で旅行者が増えているのだろうか。みんな勇気あるなぁ。 ため息をつきながら、そう思っていた。 しかし昨日の昼、買い物へ出かけた僕は、音の正体を知った。 ガリガリ音を立てていたのは、自転車の補助輪だった。 燦

ハーランドからの2億円

(注) 想像力を働かせてお読みください 眠い。まだ昼なのに。昨夜遅くまでドルトムントvsシャルケを観ていたせいだ。 不快感を伴う眠気だ。このまま椅子に座っていてもイライラするだけだ。そう思い、僕は散歩をすることにした。 歩いていると、いつのまにか母校の近くまで来ていた。都内の大学にしては広く、緑豊かなキャンパスだ。 ノスタルジーに浸りたくなった僕は、学生時代によく友人と昼食を取ったエリアに向かった。 古びた横長の校舎の前に、長方形の空き地がある。その空き地を囲むよう

白く小さな女の子

本日、僕は祖父母の家に行った。 もうすぐマスクが尽きるというので、うちの在庫を10枚ほど届けに。 さほど遠くないので、西日ノ直撃ニモ負ケズ、坂道ニモ負ケズに歩く。 僕がウイルスを持っていると危険なので、到着したら粛々とマスクを渡し、会話は必要最小限に留める。 「マスク持ってきたよ」「ありがとうねえ」 そして帰路に着く。 …といきたいところだが、この家にはそれを阻む女の子がいる。白猫のユキちゃん(仮名)3歳。立派な大人に相当する年齢ではあるが、活動内容は幼児そのものなので、

早起きして触れた「異世界」

朝4時に目が覚めた。空は青くなりつつあるが、世界はまだ暗い。もう一眠りしようと思い布団に潜り込んだが、寝付けない。なんだか頭が痛い。昨夜アルコール3%だと思って飲んだチューハイが6%だったせいだ。酒の力で早くに眠りに落ち、その分早く目が覚めてしまったのだろう。そのような寝方をした次の朝は少し気持ち悪い。仕方なくスマホをいじっていたが、ますます気持ち悪くなった。現代社会の産物は二日酔いを冷ましてなどくれない。僕は慌てて立ち上がった。 立ち上がった弾みに閃いた。そうだ、散歩しよう

アヴリルを聴きながら

「観るのやーめよっと」 僕はテレビを消した。本日2度目だ。 この日僕は2本の映画を観て、どちらも途中でやめてしまった。それほどつまらないわけではなかったが、半分ほど観たところで「残り50分もこの映画に付き合うのは時間の無駄な気がする」とドライな気分になり、消してしまった。 真面目で完璧主義的な性格をしているためか、映画を途中で放棄することはまずない。後半30分の恐るべきクオリティの低さで有名な「映画クレヨンしんちゃん 踊れ!アミーゴ」ですら最後まで観た。しかし、この日は耐え