書き殴りC

 俺だったら、カツを濡らそうとは決して思わないけどね。

 カツってあのカツ?

 キャベツなどを差し込む、あのカツですよ。

 濡らすっていうのは、何かな?

 カツ丼を思い浮かべてもらっていい?

 うん。

 浮かべた?

 うん。

 思い浮かべたね?

 うん。

 じゃあ、その思い浮かべたカツ丼を口に含んでもらっていい?

 いいんですか?

 はい。

 では、いただきます。

 変なところで律儀ですね。

 うん…これは美味いよ…。

 ここでちょっと確認してほしいんですけど。

 何でしょうか。

 そのカツ、濡れてますよね。

 まだカツを口に含んでないのですが。

 そういうことは先に言ってくださいよ。じゃあ美味いよって言ってたあれはなんですか?

 味噌汁です。

 なんで御膳なんですか。

 なめこが入ってました。

 知らないですよ。

 箸の先端が艶めきましたよ。

 とりあえず、早くカツを食べてくださいよ。

 あ、はい。

 食べましたか?

 …

 なんで黙るんですか?

 噛んでいたので。

 再現性重視しないでくださいよ。

 はい。すみません。

 それで、カツ。濡れてたでしょ?

 濡れてたっていうか、まあ、はい。濡れてましたけど。

 カツの醍醐味って、やっぱりあのサクッとした衣だと思うんですよね。

 はい。

 だからこそ、カツを意図的に濡らすことによって、その醍醐味を潰そうとする輩を許せないんですね。

 濡らすってなんなんですか。

 濡らすは濡らすですよ。そんなこともわからないんですか?

 あっ、それロン。