見出し画像

#6…価値ある金メダルにする話

お世話になってます、すたかです。

東京2020オリンピックが開会しました。

私はスポーツが無いと生きていけないタイプの人間ですので、今回の五輪は是非とも開催してもらいたかったのです。普段はスポーツに興味が無くても五輪は見る人もいるだろうし、何より競技者としては最大の目標である訳です。このようなご時世で賛否両論あると思いますが、世界中の競技者が自らの人生をかけて東京という地にやって来たということを、スポーツには人々を勇気づける力があることを、より多くの人々に知ってもらえる期間になれば良いと思っています。

さて本題ですが、私はあるオリンピック種目での金メダルを期待しています。

競歩(男子)です。

恐らくですが、日本で競歩に対して熱を持って応援している人は稀有な存在でしょう。日本での競技者は2000人程度と言われるマイナー種目です。

しかしこれが日本の金メダル最有力候補となっているのです。20kmと50kmにそれぞれ3人ずつ(男子)が出場し、誰が金メダルを獲ってもおかしくないような選出。表彰台独占すらあり得てしまうのです。未だかつてありましたでしょうか。

ただし問題もあります。
その問題とは、ずばり競技を誰も知らないし見ていないのです。誰も見ていない種目で金メダルを獲ったとしても、日本の競歩界に未来は無いのです。金メダルに価値が無いのです。

そこで今回はこの記事を見ている多くて3名程の方々を、競歩が応援したくなるような体にします。最後まで読んでくださいお願いします。

いくぜっっっ!!!

【競歩の歴史】

そもそも競歩とは何なのか、Wikipediaさ〜ん!

陸上競技種目で唯一の判定種目である。ルールに沿った歩形(フォーム)を維持しながら歩かなければならず、順位やタイムだけでなくルール(失格)との戦いがある。
オリンピックでは1906年アテネ中間大会での男子トラック競技として始まり、1932年ロサンゼルス大会から道路競技となった(50km)。

現在、男子20km・男子50km・女子20kmがオリンピックの競技種目で実施されているが、男子50kmは2021年の東京大会が最後となる。男子50kmは陸上競技種目の中で最長種目である。

元々はヨーロッパで生まれた競技で、貴族の散歩が競技化されたとか軍事訓練から発展したとか言われています。なのでヨーロッパでは割と盛んに行われていて、日本と比べて若い世代の競技者が非常に多く、オリンピックや世界陸上でのメダル獲得数も多くなっています。

【競歩のルール】

競歩では2つのルールに従って競技を進めます。
このルールは選手が走らないようにするために存在しており、競歩が「歩きを競うスポーツ」であるためのルールなのです。

1つは「ベント・ニー」

前脚は接地の瞬間から地面と垂直になるまで膝を伸ばすこと。(画像参照)

画像のように、脚が地面に接地し体の真下に来る間に膝が曲がってしまうと「ベント・ニー」という反則を取られます。

2つ目は「ロス・オブ・コンタクト」

常にどちらかの足が地面に接していること

脚が地面についていないのは、跳ねているということです。「跳ねる動き」=「走っている」とみなされ、反則となります。

この2つのルールの下で競技を行い、反則については審判が目視で判断します。違反したフォームで歩いている選手がいた場合、注意の意を示すため審判はイエローパドルと呼ばれる黄色い札を出します。

「<」がベント・ニーでの反則時に出すもの、
「w」がロス・オブ・コンタクト時にです。

同じ審判の所で再度同じ反則が確認されると警告が付き、この警告が3つ付くとレッドパドルが出されて失格となります。

しかし、今回のオリンピックでは恐らく「ペナルティゾーン」が採用されてます。この場合、警告3つでは失格とならず、ペナルティゾーン内での一定時間の待機で復帰が許され、4つ目の警告が付くと本当に失格になります。

つまりは4度同じ過ちを繰り返すと失格ですね!

【日本競歩史】

日本は今でこそ世界に誇る競歩強豪国ですが、先人のとてつもない努力が土台になっています。

競歩はマラソンと同様に、日本人の性格に合うからと言われ続けてきました。しかしマラソンではメダルが獲れるものの競歩では全くの結果に。
日本の競歩界にはある重大な問題がありました。

それは歩形(フォーム)です。

当時の競歩後進国だった日本には正しい審判技術を持った審判がおらず、日本の大会では通っていた者が海外の大会では軒並み失格、という状態でした。競歩の審判はサッカー等と同様にランク付けされており、ランクによって捌ける大会が決まっています。その時の日本にはアジア大会の審判を出来る人すらいませんでした。

そこで日本陸連は海外から国際的な審判を呼び、長期間に渡る研修を開始しました。ここには審判だけでなく選手も参加し、日本全体で情報を共有していきました。ここから日本の競歩界は変わり始めます。

長い年月をかけ、50kmでは1991年に今村文男さんが世界陸上での競歩種目における日本人初入賞。そこから24年が経った2015年に谷井孝行さんが世界陸上北京で3位に入り日本人初メダル。
2016年のリオ五輪では荒井広宙さんが銅メダル。
五輪での競歩種目における初メダル、長野県出身男子初の夏季五輪メダリストとなりました。
そして2019年のドーハ世界陸上で鈴木雄介さんが優勝。日本競歩界に初の金メダルをもたらしました。
50kmよりも活躍が厳しかった20kmでも若い世代が奮闘し、2015年に鈴木雄介さんが世界記録を樹立。今もまだ破られておらず、陸上競技で世界記録を持っている唯一の日本人です。2016年のリオ五輪では東洋大学4年生(当時)の松永大介さんが7位となり20km競歩で日本人初入賞。
そしてこれまた2019年ドーハ世界陸上、山西利和さんが優勝。20kmで初メダルをもたらしました。

正直、レベルが非常に高くなっているので、20kmを除いては日本記録が毎年のように更新されています。なので細かい出来事は書ききれませんし、昔の記事が無さすぎて古い歴史は全くの無知です。申し訳ないです。

【今回の出場選手(20km)】

①山西利和さん(愛知製鋼)

高校時代にインターハイで優勝し、勉学も優れており京都大学工学部に進学。大学4回生時にはユニバーシアードで金メダル。愛知製鋼に入社後は実業団選手としては珍しく、朝から夕方まで勤務。2019年ドーハ世界陸上で金メダルを獲得した圧倒的な優勝候補。

(昨年の正月に一緒に練習させていただける機会がありまして、非常に良い経験をさせていただきました。サインや写真にも快く応じてくださり、人柄も素晴らしいお方でした。)

②池田向希さん(旭化成)

「みちょぱ」こと池田美優さんのはとことして知られる彼ですが、高校3年生時にインターハイで入賞。競歩の名門、東洋大学陸上部にマネージャー兼務で入部し、頭角を現していく。2回生時には世界競歩チーム選手権で日本人初の金メダル。ユニバーシアードでも金メダルを獲得し、一時期は世界ランキング1位にまで上り詰める。粘り強いレースが特徴で、高温多湿の中行われたドーハ世界陸上でも6位入賞を果たした。

③ 高橋英輝さん(富士通)

岩手県出身で地元の岩手大学に進学。そこで実力を積み、4回生時に日本選手権で当時の日本記録を叩き出し優勝。この日本選手権を2015年〜2019年まで5連覇する偉業も成し遂げた。国際大会での目立った戦績は無いものの、安定した歩きをしてくれる。涼しい気候を得意とするため、会場となる札幌の環境との適応が期待される。

【今回の出場選手(50km)】

① 川野将虎さん(旭化成)

高校時代からトップで活躍され、東洋大学に進学。大学生では異例の50kmをメインに取り組み、4回生時に日本選手権で日本記録を樹立し優勝。ユニバーシアードでは同期の池田選手に続き2位に入った。シニアの日本代表経験は浅いものの、最後は倒れ込むまで自らを追い込む強い精神力を持っており、世界ランキング1位の彼には優勝の期待がかかっている。

②丸尾知司さん(愛知製鋼)

長らく日本の50kmの前線を戦っている選手。いいタイムを出せるが優勝は出来ず、という選手だったが、オリンピックが近づくにつれ勝負強さを見せつけ、日本選手権を優勝し自らの力で代表を掴み取った。ロンドン世界陸上で5位に入賞した実力者でもあり、現在は世界ランキング2位のため、メダルの色が楽しみである。

③勝木隼人さん(自衛隊体育学校)

大学時に競歩を始め、全日本インカレを連覇するなど好成績を残すものの、卒業後はアルバイトをしながら競技を続けていた苦労人。2018年ジャカルタ世界陸上で金メダル、同年世界競歩チーム選手権では準優勝と国際大会の経験も豊富。直前で辞退された鈴木雄介さんの代打であるが、しっかりと準備をされているので期待大。

【まとめ】

長ったらしく競歩について書きましたが、最後まで読んでくれたあなたが大好きです。競歩は20kmで1時間20分程、50kmで4時間程かかる種目なので面倒くさく感じるかもしれません。
全部は見なくても良いんです。箱根駅伝だって最初から最後まで集中して見ないでしょう。ながら見で、あれだったらこの記事を思い出してもらって、「この人が1位だ」「この人失格したのかな」「この人の歩き方面白いな」とかで良いのです。あなたが見てくれるだけで日本競歩界におけるメダルの価値が変わるのです。

男子20km競歩は8/5(木)16:30-18:05に、
男子50km競歩は8/6(金)05:30-10:00に、
札幌市内で行われます。
応援していただけると幸いです。

出場される選手の人生を賭けた勝負、皆から祝福される素晴らしい内容でありますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?