新しい景色、の先へ

100m以上離れた先に見える川崎側のゴール前に立ち尽くす進藤を見て、何が起こったのか数秒間理解できなかった。

気がついたら、水色に染まった観客席からの歓声とうねり、川崎ゴールキーパー新井がボールを抱えながら、本当に嬉しいそうにピッチに走る姿をようやく認識する事が出来た。

初の決勝進出を決め、初のタイトルを夢見た僕の愛するクラブチーム、北海道コンサドーレ札幌が、川崎フロンターレに敗れ、準優勝となった瞬間は、起こった出来事を咀嚼して理解するには少し長い時間のように思えた。

画像2

このとき自分でも驚くくらい何も考えれなかった。ほんの数分前までPK戦の行方を固唾を飲みながら見守り、5人目の直樹がゴールを決めて、僕らが喜ぶものだと信じていた。

けど現実はそうはならなかった。遠くに陣取っていた水色のフロンターレサポーターの喜びの声とうねりを聞きながら、ただ立ち尽くしていただけだった。

準優勝の表彰を受け、120分以上の激闘を終えたコンサドーレの選手達が銀メダルを首にかけてやってきた。

僕の見間違いでなければ、明るい表情の選手は誰一人いなかった。ジェイなんて、明らかに「これは俺の首にかける色のメダルじゃない」という顔で憮然としていた。負けた時の選手の顔はこれまでも何度も見てきたけど、今回のゴール裏整列で見せた選手達の表情から伝わる悔しさが、より一層試合後の虚無感を引き立たせていた。

画像1

ふと周りを見てみた。
あの表彰台でカップ掲げる姿を見て、一緒喜ぶはずの、応援していた皆んなもパラパラと拍手したり、立ち尽くしていたり、のどちらかだったと思う。

とにかく、遠路はるばる埼スタまで来て、絶対優勝するのだ、と意気込み、予想以上の激闘だった試合が、尚更、虚無感を引き起こしたのではないかと思っている。

その日、僕らは確かに、新しい景色を見た。
ただし決して望んだ景色ではなかったけど。

一緒に応援していた人達と挨拶をほどほどに、北口ゲートの案内所に向かった。

普段仲良くさせて貰っているジゴロウさんと、今日だけ札幌の応援をしてくれたFC東京サポーターのみよさんと合流。顔馴染みと会って会話すると、少し気持ちが落ち着く。ありがたい。

画像3

埼スタから浦和美園駅までの、あの結構長い道を、多数の札幌サポと川崎サポに混ざりながら3人で歩いていた。

あの道は特に敗戦で歩くと、かなり堪える。距離が長い分、尚更だ。余計なことを色々考えてしまい、負けた時はホントに歩きたくない。そういや2年前の2017年に埼スタに来て、やはり札幌も浦和と試合して2-3で負けた時に悔しい思いをしながら帰ったことを思い出していた。勝って歩いたら気持ちいいんだろうな。それはどこ歩いても同じかとは思うけど。

少し時間を戻して話すと、僕は試合2日前に東京入りした。丁度ラッキーなことに試合前日に都内で仕事があり、それに行くことになったので、翌日のルヴァン杯決勝にも行けることになったのだ。2日前に入れたので天気は特に問題無かった。だから翌日金曜日の関東の大雨の影響はかろうじて避けれたが、金曜日出発の札幌サポに試練を与えていた。

飛行機遅延、まさかの出発空港戻り…。Twitterでこれらの情報を見るたびに、いかに自分達が文字通り遠征を強いられているのか、を実感させられる。翌日試合当日は飛行機の朝イチの便に欠航が発生するなど、どれだけ試練を与えるんだ…と思わずにいられなかった。

だからそんな状況でもめげずに埼スタ目指している札幌サポのツイートを見るたび、こちらも勇気づけられたし、こんな人らと一緒に応援する以上、絶対優勝したい、という気持ちが強くなった。

他のチームもそうだとは思うが、コンサドーレにも、長い間、それこそチーム設立から、ずっとチームを見てきた人達が沢山いる。そんな人達は、それこそ、チームがどれだけの試練や辛い事に遭遇してきたかを、沢山見てこられたはずだ。だから、このルヴァン杯決勝は、それこそ、よくぞあの辛い時期を乗り越えて、と万感の思いを持って、埼スタに来られたサポーターも多かったと思う。

だからこそ勝ちたかった。
試合終了後に、ゴール裏でみんなでハイタッチして、抱き合って、すすきのへ行こうを歌いたかった。
僕達のカッコいい札幌の選手が金メダルを首にかけて、怪我で出れなかった宮澤を呼んで、トロフィーを掲げさせるシーンを見たかった。
チャナあたりが「サイコー!」といいながら、いつものポーズを決めて、荒野や進藤とジャレ合うところを見たかった。

けど、それは叶わなかった。

川崎の選手が喜び、意気揚々とトロフィーを掲げる姿と、周りを舞う金色の紙吹雪を見たとき、僕は嘘偽りなく、ハッキリと「悔しい」と思った。
準優勝は2位を讃える賞ではなく、あと一歩で栄冠を掴めなかった一番悔しい思いをしたものが受け取る賞だと思った。

僕達が応援する北海道コンサドーレ札幌は、文字通り紙一重の差で準優勝となった。
けどその薄い紙の厚さがハッキリと明暗を分ける事も理解した。

次にまた決勝で戦う時は、本当に最後の最後まで、それこそ試合終了のホイッスルがなるまで応援しよう。

そして、これにへこたれず、コンサドーレを応援している自分達に自信を持とう。

身近な人たちを巻き込んで、ルヴァン杯決勝まで進むようになったコンサドーレを応援することがカッコいいというムーブメントを起こしたい。

そんなことを願いながら、2019年残りシーズンをしっかり戦って締めれれば良いと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?