オレがダニエル先輩と出会ったのは、三年前だ。 魔法学校の中庭で偶然出会ったのが始まりだったんだ。 どうして声をかけられたのか分からない。 だけど何回か見かけた事があるし、一個年上の先輩だからと無視するわけにも行かず返事をした。 それがオレと先輩の全ての始まりだった。
「クロウ、聞いてくれ。女装するのが慣れてしまって、このままずっとしてしまおうとか考えたりしている…」 「それは…何というかゴメンね」 「いや謝る事じゃないんだ。だってクロウは『違う』し…」 「では早速巫女服でも着ましょうか!」 「急に変化するな!誰が着るか!」
「テオ、聞きましたか?今はワンピースが流行ってるそうですよ?」 「女の子の流行ですよね。聞きたくないんですが、それで?」 「貴方にワンピースを作ったんですよ。勿論着ますよね?」 「着ません」 「そう返すと思って貴方の家に専用の呪いを仕掛けたので安心してお帰りくださいね?」
「今日はハロウィンですね??」 「いや先輩、1日過ぎましたけど…?」 「俺が今日はハロウィンと言えばハロウィンが始まるのです!そんな訳でこちらを用意しました。 その名も"スーパーメイド服"です!」 「まさかの黒系メイド服!?」 (ダニエルとテオ)
「テオはベルと俺が結婚したら式には来てくれるんですか?」 「もちろん来ますよ。弟子と幼馴染として、ですね」 「どちらかにしません?紹介しづらいですよ」 「どっちも本当なのでこればかりは…」 「では女装魔導士テオドシオとして紹介しましょう!決まりですね!」 「勝手に決めるな!」
「近頃テオは他の世界に行きませんね」 「だって喫茶店が外部からの注文を受けるようになってから忙しくなったじゃないですか。だから余裕がなくて...」 「それはそうですが…まあいつでも臨時休業にできますからその時は休んでくださいね♪」 「店主だからっていつでも臨時休業にするな!」
「へそ出しルックも良いと思うんですよね」 そんな先輩の呟きが聞こえた。服を作っているのだが、ただの衣服じゃない。オレに着せるための服だ。しかも女装だ。 また作って…と思いきや先輩に呼ばれた。オレの先入観が間違っていたようで、私服を作ってくれていたらしい。でもへそ出しは止めてくれ。
ジューンブライドという人間の要らない風習があります。何故こんなことを考えたのか…今の時期の何が良いんでしょうか? こちらは結婚式のために、俺の身長と同じくらいのケーキを作らねばならないというのに。 テオがいてくれなかったら、とっくに諦めてましたよ。そんな彼は今寝ていますけどね。
ダニエル先輩は優しいのか、変態なのか分からない。多分どちらもそうなんだろう。 でも街行く人が困っても助けたりすることがない。見極めているのだろうか。稀に助けたりするけど、それは先にオレが行動を起こしてるから。先輩なら最善の方法で助けられそうなのに…曲がった性格だからなんだろうな。
すごくいい天気だ。――この服を除かなければ。 や、なんでオレが修道女の服を着てるんだ? 猫の修道女を見かけたからってそれを作るのもおかしいだろ! ダニエル先輩!これで戦えとか言ったら光魔法で倒していいですか!!!!拒否権はないっ!!!
「俺にはベルがいる…そうです!テオと結婚し、ベルとも結婚!これでいいのです!」 あまりにも唐突な発言…きっかけは数時間前のオレのセリフだったけど。 そもそも男とは婚約できないはず――。いやまさかベルの村で式挙げるとか言わないよな?結婚は止めてくれよ!?したくないからな!?