日本百名湖

日本百名湖 八 震生湖

 東京に湖は、ない。  じゃあ東京都心にいるとき、どうしても湖を見たくなったら、どこへ向かえばいいか。  最寄りの湖は、神奈川県にある。  震生湖だ。  東名高速道路、秦野中井インターチェンジ近くの丘陵地。ちょっとした坂道をクルマで上りきったところに、駐車場がある。そこから歩いてささ…

日本百名湖  七 芦ノ湖

 日本地図を俯瞰で見れば、富士山を取り囲んである富士五湖の連なりのうちに、芦ノ湖もあるということになるか。  東京圏に住む人からすれば、近場のリゾートとして真っ先に思い浮かぶのは日光、軽井沢、箱根であって、芦ノ湖はその箱根観光における終着地のような位置付けとしてある。  だから湖畔…

日本百名湖 六 山中湖

 富士五湖のうち、ひとつだけ東に外れた位置にある山中湖は、五湖のうちいちばん観光開発が進んでいて、湖畔はどこも絵に描いたような避暑地の光景が広がっている。  かくいう自分も、学生時代には夏になるたび、サッカーの合宿と称して足を運んだのだった。  真夏なのに夜になると、上着が欲しいほ…

日本百名湖 五  河口湖

 陽が昇るにつれ、薄くかかった霧が晴れてきて、眼下に広がる水が銀色に光って見えた。  湖面から視線を上げていくと、すっと伸びる稜線が目に入る。天へ昇っていく方向へ辿っていけば、雪の白さが眩しい。  山梨県側、御坂峠の頂上近くから眺める富士山と河口湖の光景だ。  それにしても、姿を現…

日本百名湖 四 西湖

 もう暮れかかった時分に西湖へ向かった。  人里から続く一本道から細い分岐へ入り、湖の裏側へと廻り込む。  車を停めた湖畔には、下草と砂利が混じる浜が広がっていて、水際まで近づくことができた。   波がこちらの湖南側へわずかに寄せてくる。  しゃがみ込んで湖面を眺める。真っ平の水面が…

日本百名湖 三 精進湖

 富士五湖のうちで最も小さくひっそりとしているのが、精進湖になる。  その湖面は濃い緑色がかかっていて、粘り気が強い。有機物も、無機的な鉱物もたっぷりと溶け込んでいる気配がある。  透明度の低い水を湛えて重々しく広がる湖面から這い出た岸辺は、ゴツゴツした溶岩でできている。その先は鬱…

日本百名湖 二 本栖湖

 甲府方面から、富士山麓へと入った。  樹海の中は方位磁針も効かぬ不穏な異界だ……、といった話はよく聞くけれど、実際に富士の領域に身を置くと、明らかに外界とは違うものを感じる。軽く狂おしい気分が襲ってくるのだ。  ああヘンだ、何かがおかしい。  そうつぶやきながら昼なお暗い森をクル…

日本百名湖 四尾連湖 (4)

 汀にしゃがみ込んでいると、ふと凪いだ。数ミリの波も収まって、湖面はいま真っ平らになった。気づけばそこに巨大な鏡面が現れている。  深い森の中にできた湖面鏡は、そこに何を映すのか。空の青と、雲の白と、樹々の緑、ただそれだけ。きっと何百年も、何千年も飽かずこの鏡は、同じ光景を映し出…

日本百名湖 四尾連湖 (3)

 湖面はしっかりと青い。つまりは空の青がくっきり反映されているということなのだけど。  湖の周りは、ぐるりを緑が取り囲む。樹木は湖上に覆いかぶさるようにして生え、隙あらば湖の領域を侵食したくてたまらないが、容易に手を出せないといった様子。  村上春樹『世界の終わりとハードボイルドワ…

日本百名湖 四尾連湖 (2)

 カーナビはさっきから、目的地到着がまもなくだと告げているのに、そこからがやたらと長い。  あいもかわらず左右へハンドルを切り続けて、これは永遠のループに嵌まり込んだに違いないと思い始めたころ、唐突に視界が開けた。山地をむりやり切り拓いた空き地が、眼前に現れた。駐車場だ。  車を降…