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「音」のはなし

音が鳴るような、絵を描きたいと思う。
音が聴こえるような、色を創りたい。

最初にそう感じたのは『星屑パレット』を描いた22歳の日。
水に浮かぶ月の形をした水蓮の花のような彼らから、音が鳴ったらいいなと思った。

人の話を聞いているとき、
ーーーそれも本当に心から「聴く」ことができているとき(少なくとも自分の雑念を捨てて、自分なりの120%でその方の気持ちに集中できているとき)ーーーは、
お相手の言葉一つ一つが、例えば湖におちるひと雫のように響くことがある。
あるいは、木漏れ日の間を通り抜けるような風のように聴こえることがある。

”本音”。

「本当」の「音」を、「本音」と呼ぶのは、実に見事だ。

その方が心から感じていることを、それでも普段はなかなか口にする機会もないであろう本音を言葉にしてくださったとき、
雫のおちる音がする。
風が通る響きがある。

そういう音を私はできるかぎり拾い集めて、色にして形にして、できるかぎり描きたい。
「本音」の中に、その人の優しさや、悔しさや、積み重ねてきた汗と涙の跡があると思うから。

2024/05/04