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ノリゴンが泣きすぎた夜

私の名前は典子(のりこ)。幼い頃わがままでよく泣くのでノリゴンと呼ばれてい
た。

駄々をこねる子どもを表す方言「ゴンタ」と「ノリコ」を融合させた言葉が「ノリゴ
ン」だ。

その日の夜ノリゴンは兄や姉と喧嘩して泣いていた。居間の大きな柱に両手をあて
て、自分の顔を手にこすりつけながら大きな声で泣いていた。いくら泣いても誰も相
手にしてくれなかった。優しい母も夕飯の片付けで忙しそうにしていた。ノリゴンは
意地になってますます大きな泣き声を上げながら目をこすり続けた。そのうち母が何
か声をかけてくれたので母の方に顔を向けた。母が凄くビックリした顔をした。私は
自分の顔を近くにあった鏡に映した。私の白目の部分がブヨブヨになり目からはみ出していた。母は「早く寝なさい」と心配そうに布団に連れて行ってくれた。翌日の
朝、ノリゴンの白目は元に戻っていた(と思う)。

それ以来自分の白目のシワを見るたびにあの夜目をこすりすぎて白目がブヨブヨに
なった後遺症だと思っている。


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