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蛸八のたこ焼きが我生涯ナンバーワン!

次男が生まれた2000年に我が家の近所でオープンした〝蛸八〟。店の名前通りたこ焼きが売りの店だった。他にもお好み焼き、焼きそばのメニューがあった。退職後夫婦で開業したと言っていた。おっちゃんがたこ焼きを、おばちゃんがお好み焼きと焼きそばを焼いていた。

7歳の長男、5歳の長女、ベビーカーに乗った生まれたばかりの次男を連れ、蛸八に歩いて行った。次男は珍しくおっちゃんに懐いていた。次男は大きくなると椅子によじ登ってカウンター越しにたこ焼きを焼くおっちゃんを眺めるのが大好きだった。私が「おっちゃんの邪魔になるから、こっちへ来なさい!」と次男に言うと、おっちゃんはいつも笑顔で「いいよ、いいよ」と言った。優しいおっちゃんだった。おっちゃんが丁寧に心を込めて焼くたこ焼きは夢のように美味しかった。今もおっちゃんのたこ焼きは私の生涯ナンバーワンだ。次男が小学生になった頃、おっちゃんはたこ焼きを焼くのをやめた。出前の配達が増え、時間をかけて丁寧にたこ焼きを焼くことが出来なくなったことがやめた理由だった。おばちゃんのお好み焼きにたこメニューが追加された。

たこ焼きを焼かなくなったおっちゃんは少し寂しそうに見えた。次男を見るたびに「大きくなったなあ」と笑顔で優しく話しかけてくれるが、いつも忙しそうにお好み焼きや焼きそばを配達に出かけた。次男も少し寂しそうだった。

ある日いつものように家族で歩いて蛸八へ行った。閉まっていた。その後何回か行ったが、ずっと閉まっていた。しばらくして知り合いからおっちゃんかおばちゃんのどちらかが具合が悪くなり救急車で運ばれたと聞いた。復帰を待ちわびたが、蛸八の看板はいつの間にか無くなってしまった。

今もおっちゃんのたこ焼きを時々思い出す。ふっくら丸く美しい焼き目のたこ焼き。おっちゃんの美しい人柄を見事に表した最高に美味しいたこ焼きだった。

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