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人のことを気になりすぎて集中できない選手のケース

選手のコーチングをしていて、「うまく集中できません…」というような悩みを打ち明けてくれる選手は少なくありません。そんな時に「私はどうして集中できないんでしょう?」ということについて、じっくり話を聞くことにしています。というのも、集中できない理由には人それぞれあり、それによって用いる方法や対処すべきことが変わってくるからです。

例えば、以前コーチングを行なった時は「人間関係」によって集中できない環境になってしまっている選手がいらっしゃいました。


人のことが気になって集中できないという選手

その方は高校3年生の野球の選手。最後のシーズンを前にして怪我をしてしまい、自分のポジションを後輩に譲ってしまい、復帰してからも調子が上がらずに困ってしまっていました。彼が言うには「後輩が上手くなっていっていることに焦る」とのことで、どうにも後輩が活躍することが気になり仕方がない様子でした。

このような状態が良くない。後輩のことを気にしていても仕方がないし、それで上手くなるわけじゃない。それには本人も気がついていました。ここで問題なのは、どうしてそういう思考が出てきてしまうかです。

「どうして後輩が気にすることをやめられないんだと思います?」

私がそのように尋ねると、選手はうーんと考え込んでしまいました。こんなときは選手のペースでゆっくりと一緒に考えていくことが大切です。

そして、悩みながらも一緒に考えていった結果、とある一つの出来事が思い浮かんだそうです。

それは彼が中学生の頃の話です。彼が所属するチームの監督さんは大変厳しい方だったそうです。そんな中で彼は二番手の選手でした。試合に出る機会に恵まれずなかなかレギュラーを取ることができなかったらしいのですが、あるとき自分のポジションのレギュラーを張っていた先輩の調子が悪かったのか、ミスを連発してしまったようでした。試合が終わった後、その先輩は監督に怒鳴りつけられ、次の日からレギュラーとして自分が出場することになります。実は彼はそこから出場機会を手に入れ、ぐんぐんと力を伸ばしていったのです。ある意味先輩のミスが自分の成功体験とつながってしまったのです。

「今は立場が逆になってるから後輩が気になるのかもしれない。心のどこかでミスをしろと思っている自分もいるかも…」

彼はそんなことに気がついたようでした。

私は彼に「もしレギュラーに戻っても人のミスを願い続けたらどんな選手になってしまうでしょう?」と尋ねてみました。

「うーん…もしかしたらずっと人のことを気にし続けてしまうかもしれないです」
彼は嫌そうな顔をしながらも答えてくれました。

自分の持っている思いや無意識の思考パターンに気がつくことができれば、少しずつでも変化させることは可能です。そしてそのためには今持っている思いが「役に立たない」ことだと知ることも重要になります。

その後、彼は一段と「自分自身のことに集中することが大切」だと理解したようで、そのための方法を自分なりに考え出して実践してくれました。


集中力がない…と悩みすぎるよりも

集中できる、できないという問題を考えるときに、「集中力がない」といってしまえばそれまでになってしまうことがあります。人は常に環境や文脈と影響しあっているため、「個人の中にある力」という見方をしてしまうことで見過ごしてしまうことがたくさんあるのです。だからこそ集中状態って何?ということを様々な側面から考える必要があります。逆にいうと集中力の問題だと思っていても、個人だけの問題ではないことも多いのです。

もし、そのように悩んでいる方がいらっしゃったら、今いる環境やこれまでの自分の歴史を振り返ってみてはいかがでしょうか。競技に集中するヒントが得られるかもしれませんよ。

ご参考までに。


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