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サカサナマズの姿勢制御

Title picture is licensed by creative commons CC BY-SA 3.0 https://en.wikipedia.org/wiki/Synodontis_nigriventris

 サカサナマズは、ヒトが見て「さかさま」に泳ぐことで知られていますが、魚自身はどう感じているのでしょうか。考察したことを NOTE に記しておきます。

 サカサナマズについてネット上で簡単に調べてみたところ、光の方向や重力の方向に関係なく、さかさまに、正確を期して表現すると、腹を地球の中心とは反対方向に向けて泳ぐという観察が得られているようです。ある論文では、微小重力中でも同じ姿勢を保っていると言うことです。解りやすく他の魚を同様の微小重力中に置いた場合を示すと、金魚はルーピングやローリングといった回転運動をすると言うことです。光に関しても、メダカは光の方向に背を向ける事が観察されているようです。それらがサカサナマズには観察されないということは、上下方向の認識に光や重力の影響を受けないということです。人工衛星や惑星探査機では、姿勢制御が重要なことはよく知られていますが、サカサナマズは姿勢制御能力が高いことが見て取れます。

 ご存知の通り、重力は加速度センサーによって重力加速度 9.8[m/s^2] を検出しています。また、光は太陽の方向を示していますから、魚はそれらによって、上と下を判断しているわけです。サカサナマズも「さかさま」という姿勢を取るわけですから、上下を検出していないとできないはずですが、水中では浮力という力も働いています。地球上では、浮力は重力とは反対の方向に働いているはずです。浮力に関しては、今回調べた範囲で触れられている資料はありませんでした。また、水中を泳いでいる魚には、二つの境界面があります。水面と水底です。どちらも二つの物質の境界ですが、それは気体と個体です。魚にとっては水の中が世界です。水中では、水面を上にして移動しなければいけないというわけではありません。私達も海に潜る時は、水面を見ながら潜るのではなく、多くの場合、水底を見ながら潜ります。主に水の中に用事があるのですから、水面近くを泳ぐ時は、水底を見ながら泳ぐほうが周囲を認識しやすいと言えます。サカサナマズにとっても、水底を上にしたほうが周囲を認識しやすいかも知れません。そう考えると、サカサナマズにとっては、水底が天井となり、言うまでもなく、水面は底になります。それでも、水の中を生きている魚にとっては、不便はないように考えられます。

 ところで、姿勢制御に用いられるセンサーはジャイロですが、ご存知の通り、ジャイロは回転する物体が慣性によって自分の姿勢を保とうとする性質を利用したものです。人工衛星や惑星探査機はこれによって自分の姿勢を維持しています。また、宇宙空間では動かない物体、恒星の位置を基準に姿勢を安定に保っています。地上よりも水中は、境界はあるものの生物にとって重力の影響の強くない空間です。そして、三次元方向に移動することが可能です。その点、無重力空間に似ているかも知れません。そうなってくると、重要なのは上か下ではなく、目標物と姿勢制御という事になってきます。もちろん、宇宙空間においても、地球の方向を下、それとは逆ベクトルの方向を上としても構いませんが、あまり大きな意味はないような気もします。

何れにしても、サカサナマズ、興味深い魚です。

以上





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