【ノンフィクション】電車でめっちゃ肩を貸した話をしたい。
終電間際の電車。
運良く座ることができて、さっそく、うとうとしていた。
しばらくすると、右肩に気配が。
右隣りの女性が、寝落ちしかけているようだ。
女性の頭が自律を欠いて私の右肩に触れかけている。
・・・
基本的に私は、こういうシチュエーションになった場合、全面的に肩を提供するスタンスを取っている。
というのも、大抵の人は他人の肩に頭が触れた時点でハッと起きて直立状態に戻るし、自分もたまにやってしまうから日頃の罪滅ぼしとしても肩を貸している。
そんな文脈で、今日も肩を貸した。
が。
女性の頭が、
確実に私の肩に着地してもなお、
女性は起きなかった。
ひたすらに右肩が重い。
どうやら完全に寝入ったようで、100%私の肩にもたれている。
歴代の彼女、家族にすらここまで肩を貸したことはない。
肩との相性がばつぐんなのか、
それとも、
最高に辛い仕事が終わった帰りなのか。
悶々と考える。
・・・まあ、いい。
徹底的に肩を貸してやろう。
そう思い、
できる限り肩を柔らかく、
なるべく骨が出ないように、
最高の肩作りに励んだ。
電車の加減速の慣性力で起きないよう、
振動で起きないよう、
己の脊柱起立筋を最大に活用し、
すべてのブレを吸収するよう励んだ。
その甲斐あってか、実に12駅。
乗り換え駅までの12駅、
彼女の快眠を守ることができた。
乗り換え駅が近付いてくると、
なんだか切なくなってきて、
いっそ、彼女が起きるまでずっと電車に乗っていようとも思った。
が、過ぎた優しさは暴力。
心を鬼にして、乗り換え駅で降りた。
鬼になりきれず、
電車が減速する際に発生する慣性力で、彼女の頭が肩を離れるのをギリギリまで待ち、最高のタイミングで肩を外したことはここだけの話だ。
電車を出て、
向かいに止まる各駅停車に乗り換える。
お、こっちも座れる!
ガラガラの車内に嬉々としながら座る。
となりに誰かが座る。
彼女だった。
12駅を共にした彼女だった。
今度は左隣に彼女は座った。
先ほどよく眠れたのだろう。
めっちゃ起きてた。
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