Mr.Childrenの名盤 5選

 今年がデビュー30年の節目の年であるMr.Children。20枚のオリジナルアルバムの中から自分が5つの名盤を選んでみた。(参考文献 各アルバム&Wikipedia)

・深海 (5th アルバム 1996年6月24日発売)
 
 このアルバムは個人的にはMr.Childrenの最高傑作で、それのみならず邦楽史に残る名盤であると思う。Mr.Children初のコンセプトアルバムで、全曲曲間が短く、一部は音もつながっている。一時代を築きつつあるMr.Childrenではあったが、その中で桜井さんが精神的にも疲弊していたこともあり、ダークでかつ社会風刺的な曲も多い。当時アルバム未収録の人気シングルも収録されず、また当時のタイアップも1曲のみである。この世界観にどっぷりと浸かって欲しい。
 1曲目「Dive」から「シーラカンス」、そして「手紙」まで約9分にわたるトラックで幕を開け、前曲「手紙」とセットとなっている名曲「ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~」へつながる。オアシスとなる曲「Mirror」で穏やかな心になったところで、デモ音源がつながったインストゥルメンタル「Making Songs」、そして最強の名曲「名もなき詩」へ展開する。長渕風「So Let's Get Truth」で社会を皮肉し、サイレン音とともにインストゥルメンタル「臨時ニュース」、そして後にシングルカットされた「マシンガンをぶっ放せ」、つながりを持ったまま「ゆりかごのある丘から」、ヘリコプター音とともにコーラスの気持ち良い曲「虜」へ。「花 -Mémento-Mori-」で一筋の希望に目を向け、「深海」でクライマックスを迎える。
 このつながりのままで聴くことでより一層味の出るアルバムである。映像作品「regress or progress '96-'97 tour final IN TOKYO DOME」では、この順番のまま通しで演奏している姿が収録されている。田原さんが最高にかっこいい。活動休止前ということも相まってか、異様な雰囲気を醸し出しており、最高に深海に沈み、酔い痴れることができる。「深海」の最後の水の音、これが、浮上の音なのか、はたまたさらに沈み込むものなのか、その解釈もまた奥深い。

・Q (9th アルバム 2000年9月27日発売)
 
 オリコン週間ランキングで1位を逃すなど、Mr.Childrenにしてはあまり売れなかったアルバムでありながら、コアなファンや音楽関係者の中では最高傑作と呼ぶ声もあるアルバム。曲のテンポをダーツで決めるなど、自由なセッションで完成された。
 ライブ定番曲「CENTER OF UNIVERSE」で幕開け。不気味なアウトロから次曲「その向こうへ行こう」へ。歌えない名曲「NOT FOUND」、疾走感のある「スロースターター」、田原さんのコーラスで話題になった失恋ソング「Surrender」、隠れた名曲「つよがり」と1曲1曲が強い。僕が好きなのは、ここからの流れである。”はいはぁ~い”というフレーズ、ピアノ音が際立つ「十二月のセントラルパークブルース」、酔っぱらって収録した語りのある間奏が印象的な「友とコーヒーと嘘と胃袋」、歌詞が秀逸な人気曲「ロードムービー」、ワルツのようなサビを持つ「Everything is made from a dream」へとほとんどノンストップで展開する。名曲 of 名曲の「口笛」、本作のリード曲「Hallelujah」、桜井さん個人的な歌ともいわれるスローバラード「安らげる場所」で幕を下ろす。
 正直賛否両論あるアルバムではあるが、それぞれの曲がはっきりと立っており、その流れも楽しめ、これもまた、通しで聴くべきアルバムである。個人的には、「Everything is made from a dream」や「安らげる場所」が非常に好きである。

・I ♥ U (12th アルバム 2005年9月21日発売)

 「Worlds end」と「僕らの音」、「跳べ」が好きすぎるが故の個人的名盤。題名にあるようにやさしくもとても愛を感じられる曲が多いながらも、盛り上がる曲や毒っぽさも併せ持つ。扉を開ける、ノックする、飛行機という単語を連想させるつながりもある。このアルバムくらいから僕自身もMr.Childrenを認知し、リアルタイムで聴いてきた。
 ライブ定番曲でトップバッターにふさわしい疾走感あふれる「Worlds end」で始まり、こちらもライブ定番曲でライブ映えのする、少し毒々しい「Monster」、悲観的な歌詞が印象的な「未来」、鼻にかかる桜井さんの声がハマるラブソング「僕らの音」、連続ラブソングで「and I love you」、ファンからの人気が高い「靴ひも」、甘酸っぱさと秀逸な比喩表現を併せ持つ名曲「CANDY」、ランニング中に聴きたいアップテンポな「ランニングハイ」、オレンジデイズ主題歌「Sign」、異様な雰囲気を持つのどが潰れる曲「Door」、個人的応援歌「跳べ」、ゴムをバラードにした「隔たり」、深海チックな酒が飲みたくなる「潜水」が収録されている。とにかくライブ映えのする曲が多い印象である。

・SENSE (16th アルバム 2010年12月1日発売)
 
 CD初収録曲のみで構成された稀有なオリジナルアルバム。大衆に向けた音楽が少ないということもあり、先入観を持つことなく触れることができ、聴けば聴くほど味の出る一枚である。
 流れは、ダークなぐちゃぐちゃなコードの集まり、それでもってMr.Childrenらしさあふれるナンバー「I」で始まり、サビの転調が気持ちいいリード曲「擬態」、ピアノ音が印象的な明るい曲調の「HOWL」、片想いの気持ちがあふれる恋の始まりを歌った「I'm talking about Lovin'」、結婚式定番ソング「365日」と比較的明るめのポップソングが続いていく。しかし、6曲目「ロックンロールは生きている」でロックの1曲を挟み、重い失恋ソング「ロザリータ」、間奏・アウトロの口笛をついつい真似してしまう「蒼」と続き、唯一の配信シングル「fanfare」、花吹雪の春の日の朝に聴きたい「ハル」、過去のMr.Childrenの曲の歌詞や題名がちりばめられている「Prelude」、ファンからの人気の高い失恋ソング「Forever」で幕を下ろす。
 CDシングルが1枚もないのに、レベルが高すぎて、大名盤である。テレビ出演もしていない。曲同士つながり、順序も完璧である。

・SOUNDTRACKS (20th アルバム 2020年12月2日発売)

 現時点でMr.Children最新のアルバムである。全曲が海外で収録された。いい意味で音がシンプルでかつはっきりしており、それでもって広大な世界観を味わうことができる非常に聴きやすい名盤である。
 オープニングを飾る評価の高い「DANCING SHOES」、ダブルミーニング、言葉を大切に聴きたい「Brand new planet」、どこか懐かしさも感じる「turn over?」、アウトロまで飽きることなく展開を楽しめる「君と重ねたモノローグ」、Mr.Childrenらしいダークさあふれる「losstime」、このアルバムの軸となる紅白歌合戦でも披露された「Documentary film」、アップテンポでアクセントとなる「Birthday」、大人の恋愛を歌ったスローバラード「others」、新しい朝を連想させ、Cメロが元気を与えてくれる「The song of praise」、締めにふさわしいピアノとストリングス、桜井さんのボーカルのシンプルな「memories」で幕を下ろす。
 落ち着いた雰囲気の曲が多く、バンドとして音を歌をシンプルに聴かせていこうという意思が感じられる1枚である。円熟味を増す中でのこの挑戦とクオリティに感服するとともに、これからのMr.Childrenに大いに期待をさせてくれる大名盤である。

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