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『Divee! ダイビィ!』の増産を決めました

『Divee! ダイビィ!』発売直後だというのに、しばらく更新を滞っていて申し訳ありません。理由を言うとなんだか気恥ずかしい気もしますが、鳥山明先生の訃報を目にして、それなりにショックを受けたというのが大きいところです。ちょっとまとまったテキストを書くメンタルになれませんでした。
 ハーベストバレー代表の刈谷は1972年生まれで、『Dr.SLUMP』の連載が始まったのが1980年ですので、超ストライクで影響を受けまくってきたので、自分でも引くくらいショックを受けてしまいまして。ここは鳥山明先生の思い出を語る場ではないので、どれだけ影響を受けたかといった話は割愛しますが。

 ともあれ、気付くと『Divee! ダイビィ!』が発売されて1週間が経ち、おかげさまで好評のようです。本当にありがたいことです。
 わたしの観測では、Amazonのボードゲーム部門で新着1位、全体で最高6位を記録していましたし、ホビーベース(イエローサブマリン)さんのボードゲーム週間販売数ランキングでは何と1位を獲得することができました。

 元ゲームマーケット事務局長だとか、以前アークライトでボドゲ開発していた実績があるとか、そんなマニアックな情報をお客さんが気にするはずがなくて。結果だけが評価されるシビアな世界ですので、正直全てが不安でしたし、言ってしまえばいまでも不安です。明日から売れなくなるんじゃないかとか、真面目に思います。そういうものです。
 なんの実績もない新興メーカーの最初のタイトルを、勇気を出して購入してくださったお客様には感謝しかありません。

 そんな感じで、想定していた中でもいい感じのスタートを切ることができたのですが、タイトル通り『Divee! ダイビィ!』を増産することを決定しました。

 この増産、景気のいい話に聞こえるかもしれませんが、メーカーにとっては本当に重い決断なのです。なぜなら初版が完売した場合、それで絶版にしてしまえば、少なくとも利益が確保されるからです。ですが、増産に踏み切ってそれが売れなかった場合、初版で得た利益が吹っ飛んでしまいます。これは相当こたえます。初版が売れなかったときよりも、精神的ダメージは大きいとすらいえます。

 そうした中で、どうやって増産の判断をしたのか。
 今回はそのあたりを、関係者の皆さんにご迷惑をおかけしないであろう範囲で実数を明かしながら説明したいと思います。どうしてそうしたリスクを払ってまで実数を明かすかというと、このnoteの基本的なスタンスである、「将来ボードゲームメーカーを目指す人が現れたときの、情報のひとつになりたい」という目的があるからです。
 幸い刈谷は多くの幸運に恵まれて、いまこうした立場に立てています。ですので、受けたご恩を少しでも業界に還元できたらという思いです。

 ズバッとさらしてしまいますが、『Divee! ダイビィ!』は初回に2,688個生産しました。「中途半端な数やな~」と思うでしょうがw、もちろん理由があります。
『Divee! ダイビィ!』は1カートン24個入りです。2,688個だと112カートン。今回『Divee! ダイビィ!』のサイズだと、この112カートンが、1パレットで輸送できる最大数だったというのがその理由です。
 パレットというのは、輸送する際に使用する、運搬用の土台と考えていただければいいと思います。輸送の料金は基本的にパレット単位になるので、2,000個でも3,000個でもなく、1パレットで運べる最大数を生産数にしたわけですね。
 もちろん数字を決めた理由はそれだけではありません。「新興メーカーの最初のタイトルが本当に売れるのか」とか、「1個当たりの原価」とかをさまざま検討して、2,688個であれば、それなりに完売する可能性があるし、よしんば売れなかったとしても、会社に与えるダメージはそこまで大きくないという判断です。

 そうして2,688個生産した『Divee! ダイビィ!』ですが、幸運なことに検品でも致命的なエラーはなく、普通に出荷することが可能となりました。
 問屋さんからの、初回の注文数は360個。
 これを多いと思うか、少ないと思うか。
 わたしの場合は、物流業界の友人(元アークライト社員w)から「初回の注文数は200個くらいじゃないか」と聞かされていたので、少ないとは思いませんでしたが、本音としては当然もっと注文があれば嬉しかったなとは思いました。

 そして迎えた3月7日の発売日。Amazonさんでは発売前から売り切れ状態という、なんともジリジリするスタートとなります。
 ただまあ、何度も書くようですが、新興メーカーの初回のタイトルなので、小売りさんの信用がないのは仕方がありません。わたしが小売りでも、初回は少なめで様子を見ます。なにせ売れなかった場合、最終的なケツ(店頭在庫)は小売りサイドが持つわけですから。

 ですが幸い発売日からそれなりに話題となりましたので、翌日の8日に問屋さんから早くも2回目の注文360個を受けます。
 検品のために中身を開けた商品や、知人・恩人にお配りした数を除くと、販売可能な商品数は約2,660個ですので、この時点で720個が出荷され、在庫は1,940個ほどです。

 ここでまず最初に増産すべきかを考えました。
 増産にかかる日数は、約50日。弊社は香港の会社であるPRIME LINEさんに印刷をお願いしているので、そこから日本に輸送し、税関を抜けて倉庫に入るまでに10日。そこからようやく小売店さんに出荷が可能となるので、このタイミングで増産した場合、増産分が販売可能になるのは5月10日前後。つまりゴールデンウィーク明けです。
 ゴールデンウィークまでにこの2,000個弱が売れるか。
 どんな商品も、初回はそれなりに売れるものです。それがピタッと止まるか、継続して売れ続けるか。そこを見極める必要がありますが、正直そんなものは最後は勘です。勘と言えば気楽に聞こえますが、ようは博打。ここで増産を判断して、例えば2,688個作ったとして、明日からピタッと売れなくなれば、5月には4,500個の在庫を抱えるわけです。これは本当の地獄です。
 ですので、慎重にならざるを得ない。

 それから1週間が経ちます。Amazonさんでのボードゲームジャンルの売れ数ランキングもそこそこ健闘していて、冒頭でも書きました通り、ありがたいことにホビーベースでさんのボードゲーム週間販売数ランキングでは1位を獲得することができました。
 そして昨日、3月15日に追加で360個の注文が届きました。これで合計1,080個の出荷。在庫は約1,580個。
 これからピタッと売れ行きが止まる可能性も依然ありますが、逆に1,600個が3月に全部売り切れる可能性もあります。そうなった場合、4~5月に商品がなくなるという、痛恨の事態を招いてしまうことになります。

 在庫を4,000個抱えるリスクと、5月に販売機会を逃すリスク。
 ここを天秤にかけて、最終的には「ここから売れ行きがピタッと止まる可能性はそこそこ低い」と判断し、2,688個を増産することを決断したわけです。
 印刷所さんに新しい見積もりをお願いしましたので、週明けに届くであろう見積もりを見て、納得できたら入金し、増産分の印刷が開始されるはずです。

 ……そんなわけで内情を長々語りましたが、内部のリアルを感じていただけましたでしょうか。
 もし『Divee! ダイビィ!』が今後も売れ続けて、3月とか4月の中旬とかに売り切れても、「メーカーは何をやっとるんだ」「初回生産の読み、甘いんじゃないの」などと言わず、生暖かく増産の到着をお待ちいただければと思います。
 逆に「増産=在庫」みたいな状況になった場合、誰かが助けてくれるわけでもないですからね。ここは本当にシビアで悩むところです。
 もしかしたら読んでいる方の中には、「ちょっと慎重すぎるんじゃないの」「2回目の360個の注文が来たところで増産の判断をしていれば、1週間早く増産が届いたのに」など思われる方もおられるかもしれません。正直、ゴールデンウィーク前に届くなら、わたしもそうしていたかもしれません。ただ、その段階でゴールデンウィークに届かないことが分かっていましたので、1週間待つことにしました。
 今後の売れ方次第では、もしかしたらご迷惑をおかけするかもしれませんし、それによって存在を忘れられてしまうリスクもありますが、ここの判断は難しいところです。
 さらにシミュレーションを進めれば、もし残り1,600個弱の在庫が3月中に完売してしまったら、2刷の到着前に3刷を発注するか? あなたならどうしますか?w

 将来奇特にもボードゲームメーカーを始めようなどと思う方が現れた際、このテキストが何かのお役に立てれば幸いです。

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