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輝くデュエルの果て無き夢を/遊戯王デュエルモンスターズGX 感想

ここしばらくはマスターデュエルやってるんですが、これがまた面白いですね。


「アニメこそ見てたけどOCGからは離れて久しいからなぁ…」と一歩引いた位置でリリースから一カ月ほど静観してたんですが、TLが決闘者デュエリストだらけになるバトルシティじみた光景に居ても立っても居られずインストール。ランクマではゴールド帯の下の方をウロウロしており、最近はファフμβ'を見るたび額に青筋が浮かびミチオンと当たっては「なんで俺に気持ちよくデュエルさせねぇんだ!」と顔を歪めてますが、それはそれとして楽しく遊んでます。

パックがテーマで分かれてるため狙ったカードがある程度揃えやすく、デッキ作りの敷居が低いのもアニメ勢としては嬉しいですね。私は初めて見た時に衝撃的だった「トゥーン」や、派手な戦闘シーンが目覚ましかった「RR」を主に使っています。トゥーンだから平気デース!したり反逆の翼翻して笑顔になるんや。

それはそうと、遊んでるうちに新しいデッキを作りたくなるのもカードゲーマーのサガというもの。最近のカード事情に明るくないため、とりあえずアニメのデッキを参考にしようと視聴歴を振り返ってみたところ

ひ、ひどすぎる…!よくよく考えたらVRAINS以降は見てすらいないじゃねーか!!
そんなわけでフォロワーさんからの勧めもあり、「とりあえずGX見ようかな…。十代が好きだった記憶があるし」と見始めた3月上旬。なんせ180話もある長大な作品だし、ソシャゲの周回のお供になればいいかな、くらいの軽い気持ちでした。

余暇の時間をほぼ全てGXの視聴に充てること一カ月、ついに数年越しに再び迎えた最終回。リアルタイムにして三年分の期間で構築された物語は、鮮やかなキャラクター達や目まぐるしく変転するテーマで彩られ、それが収束していくラストなど著しく高い完成度。ギアが上がっていくにつれて目が離せなくなるストーリーや、これまで没頭した記憶が一気に蘇り、思わず感極まってしまい「楽しいデュエルだったぜ…!」と心からの賛辞が口を衝いて出てしまった。

Twitterの方では書ききれなかったのもあり、この記事では一年ごとに分かれた各期の、印象的なエピソードを通して感想を振り返っていこうと思います。デュエル・スタンバイ!!

1期

1~28話

OPが切り替わるのは34話からですが、セブンスターズの侵攻が始まる29話とそれ以前の話で分けようと思います。なんといってもまず語りたいのは第1話!

カードゲームジャンルの作品として、今でもジャンプ、漫画史に残る金字塔である「遊戯王」。そしてそのアニメ化作品「遊戯王デュエルモンスターズ(以下DM)」の続編として見た時、この第1話「遊戯を継ぐ者」はまさしく完璧と称しても過言ではないでしょう。

新たな主人公「遊城十代」が、伝説のデュエリスト「武藤遊戯」からクリボーの派生・ハネクリボーが託されるのがバトンタッチとしてもうこれ以上ないし、十代の破天荒かつ明るい人柄やデュエルに対する誰よりも熱い愛が伺える描写の数々が心地いい。更には攻撃力の低いモンスターを駆使して、クロノスが操る攻撃力3000のアンティーク・ギア・ゴーレムを撃破する、文字通りジャイアントキリングの爽快さ!十代が用いるデッキがヒーローをモチーフとしたE・HEROで統一されてるのも、真っすぐな精神性や正義感の高さをこの時点で視聴者に匂わせて見事です。
お調子者で嫌味も効かないがデッキを馬鹿にされると怒りを露わにする王道熱血主人公の風味に加え、「じゃあ先生に教えてやるぜ!ヒーローにはヒーローに相応しい、戦う舞台ってもんがあるんだ!」の台詞と共に発動する摩天楼•スカイスクレイパーとその頂上に佇むフレイムウィングマンの直球にカッコいい絵面、そして決め台詞の「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!!」など、この主人公はきっと面白いことをやってくれる!と期待感が跳ね上がります。主題歌の「快晴・上昇・ハレルーヤ」の爽快なメロディもワクワク感を高めてくれて本当にいいんですよ…。
翔や三沢、万丈目といったライバルたちも、デュエルを観戦する中のリアクションでそれぞれの立ち位置や人となり、十代へ向ける感情がわかりやすく描かれてまた良い。なんなら明日香とか最初の1クールくらいはずっと「十代、おもしれーやつ…」してますからね。

また、ここでは魔法カード死者蘇生にも注目したい。死者蘇生といえば前作にて多くの勝負で用いられたほか、ラストデュエルでは遊戯からアテムへ送られた最期のメッセージとして作品の幕引きを飾るキーカードでした。
十代が遊戯とぶつかるシーンでこのカードを落とす(つまり拾う)のは一度終わった物語の再始動を、肝心のクロノス戦で破壊されてしまうのは単に前作のリスペクトや再話に留まらないぞ!と言わんばかりの克己心を思わせます。というか遊戯にどこかアテムの雰囲気が備わりつつも千年パズルがないことで「武藤遊戯」のその先なのだと見せるのマジで素晴らしいですね…。

その反面、GX序盤は前作ファンサービスの手つきにやや肩の力が入りすぎてるようにも見えます。2話で十代と一緒の部屋になった翔が「縁があるんだね!僕たち古代エジプトのファラオと神官セトの生まれ変わりかも!」と言い出したり5話で闇のゲームの話をしてる最中に十代が「千年アイテムねぇ…」と零すあたりの、お前ら遊戯王のオタクか??と言いたくなるようなのはいっそ愛嬌を感じますが。タッグデュエルで迷宮兄弟が出てきたり、遊戯のデッキを取りまわすキャラが現れるあたりの、クロスオーバーの妙なもどかしさがあるんですよね。


GX1期前半は、クロノスの送り込む怪人、もといデュエリストやアカデミア生と戦う一話完結なフォーマットが主になります。単発キャラであっても個性が色濃く反映された、バラエティ豊かなデッキと対戦するので飽きさせませんね。サルとかサイコショッカーとか。
そしてレギュラーキャラも個性や強さでは一切負けていないません。それぞれの戦術やコンボで毎回目を見張るし、デュエルを通して少しずつ関係が変わっていく青春模様も学園ドラマの華!

万丈目はバトルシティ編で海馬が使っていたXYZドラゴンキャノンの進化系であるVWXYYZを入れてるし、亮のサイバーエンドは「3体融合の三つ首竜」と青眼の究極竜を思わせて、それぞれに遊戯の宿敵である海馬の意匠がデッキに組み込まれているようにも見えます。話は変わるものの今見てもパワー・ボンドによる攻撃力8000のインパクトは凄まじいし、サイバードラゴンデッキに入れたくなる衝動を抑えられませんね。いいだろロマンを求めてもよ!

個人的に序盤のハイライト、なんならベストバウトと言ってもいい!と思ってるのが21・22話のvs三沢です。
単発回多めなGX序盤は、「行方不明となった明日香の兄」以外は物語の縦軸こそ薄目ですがその分レギュラーキャラと積み重ねた交流が柱となっており、そこから繋がるデュエルを間近で見続けた三沢が十代メタで融合封じを図る展開!リトマスの死の剣士やH2Oの化学式を用いたウォータードラゴンに代表される、化学や数式を愛する三沢のキャラ性が濃く反映されたデッキ!更には「墓地のカーボネドンに十枚のカードが重なることで圧縮されダイヤモンドドラゴンに進化」する、能力バトルとカードゲームの要素が止揚した原作の趣きを覗かせるのが溜まらない!
息もつかせぬデュエルが新ヒーローのワイルドマンで決着がつくのも興奮するし、
十代「ガッチャ!」
三沢「楽しいデュエルだったぜ!」
と決め台詞を二人で言い、固い握手を交わす爽やかな終わりも最高です。三沢はこんだけいいキャラなんだからきっと終盤まで素敵なライバル関係なんやろなぁ…。
また、ジャーナリストの国崎が二人の戦いを見たことでデュエルを楽しんでいた頃の輝きを思い出す眩しさ、そして行方不明の生徒たちに繋がり物語の進行を予感させる「溜め」も素晴らしい。国崎の対戦相手がどうみても海馬なあたりで格を上げるファンサもこなれてきた感があります。そうだよファンサービスって本来こういうものなんだよ…。

お待たせしました万丈目。愛すべきサンダー伝説のはじまりです。この24~26話はサブタイトルのアイキャッチ画像が普段と異なり「ノース校の地に突き立つデュエルディスク」となっており、万丈目の物語として強く意識されています。
思えば序盤の万丈目は倒されるべくして倒されるような「悪役」でした。OPでヘルポリマーを発動しながらの良い表情に始まり、その在り方は嫌味で無礼で卑怯で傲慢の概念が服を着て歩いているかのよう。三沢のデッキを海に捨てる辺りはもう羽蛾の再来じゃねーか!と笑ってしまった。
そんな彼がついに学園を追放、もとい出奔し、新天地ノース校に流れ着いて激闘を繰り広げる…万丈目にクローズアップした展開がとにかく良い。コミュニティの中で地位や名誉に執着していた万丈目が、そこから離れ過酷な環境に身を置き己を見つめ直して牙を研ぎ澄ませる。いわば強者の雌伏や再臨・覚醒とも言えるシチュエーションを、多くを語らず「デュエリストの魂であるデッキを一から作り直す」過程になぞらえてるのが何とも言えないほど格調高いんですよ…!

オベリスクブルーの制服から漆黒のコートに身を包み、十代に絡もうとするノース校の取り巻きを「放っておけ」と凄む迫力、そしてデュエルの前の「地獄の底から不死鳥のごとく復活してきた、俺の名は!一!十!百!千!万丈目、サンダー!!」のマイクパフォーマンスでノース校の荒くれが一つになる流れはオオッとなるし、頂点に立ったことでひとかどの漢に成長した興奮で沸き立つ!!
また、ターン毎にレベルアップして加速度的に強化されるアームド・ドラゴンが、万丈目の勝利を求める力強い歩みと呼応するようになってるのも見逃せない。
しかし、十代も熾烈な攻撃をかいくぐりながらアームドドラゴンを攻略する様、その中でもデッキを信じてデュエルを心の底から楽しむ姿が眩しいし、決着がつかなかった2話で本来なら召喚されるはずだったフレイムウィングマンでとどめを刺す流れも鮮やかですね。
万丈目が兄弟や他者から常に勝利を望まれていたプレッシャーを隠れて吐露する―そんな年相応の弱さが垣間見える点も良くて、それを盗み見てしまった十代がデュエルが終わり兄たちに詰め寄られる万丈目を助けようと声を上げる、熱い青春ドラマが直球で尚のこと良いんだよな…。

序盤から他者の上に立つことを重視していた彼が、ノース校トップの座をあっさり捨ててライバルの待つアカデミアに戻るのは「万丈目準」の一つの成長物語としてかなり纏まり、真っすぐな面白さを誇ります。
GXの序盤は奔放に腕白な作風が目立ちますが、この辺りからデュエルの内容とキャラ性やストーリーがそれぞれの要素を補完しあう、いわばシナジーが発生してて非常に面白くて、脂がのってきているのを実感しましたね。
どうでもいいけどOPで乳袋や腋、ミニスカの太ももをアピールする明日香はあまりにも刺激が強過ぎないか??明日香といいアキといい、平日夕方にしてはこう、大らかな時代を感じます。

29~52話


1期中盤からは三幻魔を復活させるため暗躍する、セブンスターズとの戦いが本格化します。前半たっぷり2クール分かけてその強さを描いてきたレギュラーキャラ達が共通の敵を倒すために集結する展開がたまらねぇ〜!
また、LPのダメージが肉体に反映される命懸けの「闇のデュエル」に伴い十代が首に闇のアイテムを提げる辺り、遊戯のオマージュって雰囲気が増しますね。
OPも「99%」に変わり、過酷な戦いを前に十代をはじめ各キャラの引き締まった表情に頼もしさを感じさせますよ。リアタイ当時はこの辺りから割かし真面目に見だしたため、このOPが一番しっくりくるところがあります。
余談ですが、いかにもオベリスクといった風に地を割って顕現するラビエルを尻目に「えっ、三幻神?いや僕たちそういうのじゃないんで•••」みたいなノリで出てくるウリアとハモンに笑みを隠せません。百歩譲って溶岩の中から飛び出す神炎皇ウリアはともかく氷柱割ってくる「降雷」皇ハモンはなんなんだよ!ラビエル君これは幻魔皇と呼ばれるのも納得の真面目さだし、1人だけ♰天界蹂躙拳♰で強化を貰ってるのも納得ですわ。

vsカミューラはクロノス、亮、十代と三人に渡ってデュエルを繰り広げる、作中でも類を見ない扱いがなされています。そしてこの回はなんといってもクロノス先生の覚醒回!これまで話を回す都合もあり嫌味な教師として十代達を目の敵にしていましたが、物語の軸が「セブンスターズとの戦い」に移行したこともあってかその枷から解き放たれ、生徒を守るために身を挺して戦う格好いい姿が見られます。
デュエルの内容も、アンティークギアデッキで怒涛の展開をするも手の内を既に読まれており、さらに禁断のトラップで敗北する…など格を損なわせないし、敗北の直前であっても「たとえ闇のデュエルで敗れたとしても、闇は光を凌駕できない。そう信じて決して心を折らぬこと、私と約束してくだサーイ」と最後まで生徒を想う壮絶な姿で熱いものが胸にこみ上げる…!クロノス先生あんた最高だよ…!
そんなクロノス先生の言葉を受けてか、33話では「シャイニング・フレア・ウィングマン」の輝きをもって闇を打ち破る、まさに王道の決着がなされます。この曲線重視で他とは趣が異なるデザインもあって、E・HEROの中では一番好きなモンスターなんですよね。


GXの狂気!過酷な戦いでナーバスになった主人公を一喝する前作ライバルっぽい不審精霊!!
当時死ぬほどMAD素材としてしゃぶりつくされた正義の味方・カイバーマン回です。リアタイ時は死ぬほど笑ったし今でも変わらず笑顔になるよこれ!精霊カイバーマンがカードデザインと微妙に異なり、より海馬社長っぽくなってるのも笑いどころです。もうただのコスプレだろそれは!美しく艶めくロングヘアはキサラのモチーフだったりするのか?
しかしその強烈な絵面と暴走するダンプみたいな勢いの導入に反して描かれるストーリーは至極真っ当なもの。命のやり取りで心に澱が溜まり、純粋にデュエルを楽しめなくなった十代の前に立ちはだかるブルーアイズ。敗北と隣り合わせの緊張感で研ぎ澄まされる高揚感の中、十代の中に闘志が漲っていく流れなんて今思えば最終回にも繋がります。
スカイスクレイパーの街並みに屹立するブルーアイズ・アルティメット・ドラゴンの怪獣映画さながらのスケール感、しのぎ切ったと思えた攻撃が「融合解除」によって更に繰り出される怒涛の展開、そして「負けを恐れれば立ち止まるしかない。負けて勝て!遊城十代!」の力強い言葉は己の戦いのロードを驀進する海馬の息吹を感じさせる、どこを取っても良いレジェンド回でした。ファンとしては海馬はある意味で神格化されてる風があるので、本人がデュエルするのは…みたいなところもあるし、カイバーマンは落としどころとしては良かったんじゃないでしょうか。
…いやでも「強靭!無敵!最強!」「粉砕!玉砕!大喝采!ワハハハハハハハ!!!!」が短時間に詰め込まれてるの密度がおかしいって!!!


サンダーとして覚醒した万丈目の主役回その一。兄を越える因縁の対決とともに、「攻撃力500以上のモンスターを使えない」ハンディキャップを背負った珍しい趣向のデュエルです。
カイバーマンが大暴れした回の次で海馬本人がオーナーとしてアカデミアに好き勝手する構成なに!??

金に物を言わせて集めた高火力ドラゴンを使う長作に対し、万丈目のデッキにあるのは井戸に捨てられた雑魚モンスターなどという、以前までのパワーデッキ使いの万丈目であれば見向きもしない底の底。だからこそ、おジャマといった一見デッキの肥やしにもならないようなバニラモンスターさえも自在に操るタクティクスが光るぜ!

そしてなんといっても一度底辺に落ちた万丈目のキャラ性ですよ!
「俺はこいつらに教えられた!下には下がいるということを!!こいつらに比べたら俺は全然マシだ!!」
「いけ!ザコ共ォ!!」
そう、この男プライドの高さが一切損なわれてないんです。普通挫折を味わったこういうタイプのキャラって少なからず謙虚さや含蓄が生まれるもんでないの!?しかしおジャマ達や雑魚モンスターの精霊と漫才じみたやり取りを繰り広げる可笑しな愛嬌や、言葉に反して真っ当なデュエルへの姿勢は序盤と比べて嫌味さが消失しており「あの万丈目の延長で愛されるキャラになった」質感を自然に抱かせます。GX、こういうキャラの好感度調整が本当に上手いんです。

そして極めつけはデュエルに勝利した後、観戦していた生徒たちと共に放つ「サンダー!!」のコール!万丈目回はほぼ毎回と言っていいほど最後のサンダーコールで最後にもう一盛り上げする、さながらアイドルのライブのような高揚感がとても良い!なにが良いってこれ、「仲間ではあるけど困ったやつだよな…」みたいな眼差しがある三沢や明日香も笑顔でコールしてるんですよね。万丈目を中心に、皆が同じ熱量で夢中になる光景がほんっとうに痛快なんだよなー…。

さて、肝心の1期後半ですが、実のところ前後編での激戦となったvsダークネスや3話に渡ったvsカミューラ以外、割とライトな雰囲気のデュエルが続いたりします。セブンスターズ自体もカジュアルな回が半数くらいですしね。やや緊張感に欠けるところはありますが、この作風なら終盤もお気楽な展開が続くんだろうな~~~~~~。


vsアムナエル、大徳寺先生との決戦です。個人的には大ボスとなる影丸と同じか、それ以上に盛り上がったデュエル。糸目で眼鏡をかけた優男が敵の一味だったとか大分盛ったことしてんな…。
窯に素材を入れてモンスターを生み出す工程が錬金術を体現するとともに、賢者の石の生成過程になぞらえた「白の過程-アルベド」で黄金のホムンクルスを召喚するなど、モチーフをこれでもかと突っ込んだデッキテーマで思わず唸る。錬金術の源流が古代エジプトで興り、さらに「千年アイテムは秘伝の錬金術で生成された」設定を思い返すと、要素のひとつひとつで前作を踏襲する手つきもまた痺れますね…。
融合を駆使してバニラモンスターを強力なヒーローに変化させてきた十代を「錬金術師」と定義するのも目を見張るし、そこから「1年かけて繋いだ仲間の絆から、皆との未来を作り出す」と十代らしい結論が導き出される46話の真っすぐさ!

話は変わりますが、賢者の石の生成過程において「理想的な水銀と理想的な硫黄」を抽出するものがあります。蒸留によって不純物を取り除いていく過程ですね。この二つを適切な配合で混ぜることで次のステップに続きます。
十代はデュエルの申し子と言っても差し支えのない少年でした。そして1年にも渡る数々の戦いの中で十代は加速度的に強くなり、そしてデュエルを楽しむ心の「純度」も類稀なものとなった。錬金術と相似の技能である、多種多様な属性モンスターの融合を得意とする十代がこのデュエルの最後に召喚したのは地・水・炎・風の、万物を構成すると言われる四属性(元素)のヒーローが融合したE・HEROエリクシーラー。賢者の石と同一視ともされるエリクサーの名を冠したヒーローの光が、賢者の石を求めて永き放浪を続けたアムナエルに引導を渡す―錬金術師として十代が彼を越えたのと同時に、大徳寺アムナエルのデッキと十代がこの1年で紡いだ物語が同じ「賢者の石」の景色に繋がる、大きな流れが収束した様相がダイナミックなんですよ…。
そして「賢者の石サバティエル」が大ボスたる三幻魔との戦いで3回のみ使える最強のカードとして十代の望む通りの姿に変幻し、最終的に消え去ったのもラスボス専用イベントとしてアツい展開とともに、十代のデュエルタクティクスの成長を感じさせました。

一年を通したGX1期が三幻魔との戦いではなく、アカデミア生の卒業や進級のエピソードで締めるの良いよね。十代たちの本質は戦士ではなく学生なのだと再認識させるようで…。

1期最終のカイザー戦ももちろん好きですが、ここではあえて50話を推したい!神絵師・隼人が、ペガサスのI2社への就職を賭けてクロノスとデュエルする回ですね。
ここで好きなのは、これまで隼人が仲間たちの中でもデュエルをする側ではなかった点です。父親とのデュエルなど印象的なエピソードこそあれど基本的に非戦闘用員だった隼人が、セブンスターズ編を経て格も実力も確かなものと裏打ちされたクロノスと戦う、まさしく彼の集大成!
今まで十代がピンチを迎える度に「気張れ!十代!」と応援していた隼人が窮地において皆から「気張れ!隼人!」と応援される構図が素晴らしい…。そして脳裏に蘇る激闘の数々や大はしゃぎした思い出の数々から、2話であれほど倦んでいた隼人がデュエルを心から楽しむようになった姿で胸が一杯になる~~~。
自身がデザインしたエアーズロック・サンライズが、たとえ落第してもそれでもデュエルが大好きなのだと、心に突き刺さった光を体現したかのような風景そのものな輝きであぁ~~~~もう駄目です!!!!俺はこういう、胸の内に灯った熱が消えないよう掌でそっと包み込むようなキャラに弱いんだ…。

ここではクロノスも素晴らしい。決して諦めない隼人がつかみ取った逆転の一手を「splendid!」と称えながらも、「進級テストに私情をさしはさむことは、出来ないノーネ…!」と噛みしめるようにリミッター解除を発動して制する、クロノス自身も本気で隼人と向き合ったのだと分かる高潔さ。レッド寮生をあれほどドロップアウトボーイと目の敵にしていた彼が「シニョール前田。あなたは私の誇りなノーネ」と固く握手を交わす光景もまた、彼の1年間の集大成なのでしょう。

二人に惜しみないエールを送る十代たちをバックに主題歌のしっとりとしたインストアレンジが流れる演出が、前田隼人が十代と出会ってこれまでの一年間を締めくくる爽やかな寂しさで、俺も校長先生みたいにボロボロになってしまったな………。


2期

53~84話


十代たちが無事進級するとともに、新入生が入学することで風雲急を告げる2期の開幕です。2期は個人的に、GXという作品のエンタメ性という意味ではここが一番高いのでは?と思っています。既存キャラと新キャラそれぞれが満遍なく物語に組み込まれるほか、ナポレオン教頭がレッド寮取りつぶしのため暗躍するのに対してレギュラーキャラ達で力を合わせたり、斎王率いる「光の結社」が通年の敵として対立する縦軸強めの構成がグッと緊張感を高めますね。

まず既存キャラの点では、54・56話は進級を単なるイベントだけではすませず、万丈目や翔といったレギュラーキャラが積み重ねた物語の昇華を成しているのが凄く良い。

万丈目が五階堂の見目麗しい強大な相手をおジャマたちの連携でいなして「どうだ!俺の1年間は無駄ではなかった!」「貴様にレッドやクズカードを見下す資格などない!」と叱り飛ばす光景は、万丈目が過去の自分を越えたのと同時に、後進を正しく導かんとする先輩の申し分ない風格を称えます。

翔が亮や十代の後ろを追っているだけだったことを認め、その上で「でも決めたんだ!僕はもう追いかけない!強くなって、一緒に歩いていくんだ!!」と勇ましい声色で叫ぶ姿に、パワー・ボンドの力に頼り切っていた気弱な少年の面影はありません。
この二人の積み重ねが「進級」を境に描かれ、翔はラーイエローに昇格する辺りの成長の文脈が好ましいんですよね。でもなんか唐突に三沢を地味いじりするのは本当に唐突じゃないか!?そういうところ良くないと思うぞ翔!

次に新キャラ!剣山、エド、斎王の三人ですが、人数が少なめな分それぞれが濃密に作用しあっていた印象です。

改めてですがティラノ剣山、ほんとすげぇキャラですね。「創作におけるそんな口癖のキャラ現実にいないだろ選手権」したら五年くらいトップを独走して殿堂入りしそうな「だドン」「ザウルス」は聞き慣れた今でこそスルーしますが初見ではなに…?ってなったし、なんなら「発動はつドン!」「ターンエンドン!」は今でも一瞬脳がフリーズします。
骨折した足の骨の治療に恐竜の化石を使い(?)、それがきっかけで恐竜のDNAに覚醒し(??)、敵の精神攻撃をレジストする(!??)。文言のどこを取ってもそうはならんやろすぎる。なってるザウルス!
しかし奇抜な属性とは裏腹に、その人間性は意外にも真っ当に質実剛健。当初こそ十代を巡って翔とキャットファイトみたいなデュエルをしてましたが、レッド寮の存続に向けて奮起する流れでは彼がいるだけで「決して敵にならない」安心感がありました。
でも翔と打ち解けた76話では、二人のエースモンスターを融合させるレックスユニオンの格好いいんだけどどうみてもアウトだこれー!?みたいなのが出てくるので笑ってしまう。

そして2期随一のキーキャラクターと言っても過言ではないエド・フェニックス。この男を差し置いてGX2期を語るのは不可能です。
2期がその幕を開ける53話で「パックを剥いただけのデッキで十代に挑む」底知れないパフォーマンスを見せ、続く57話ではあのカイザーを相手に真の力たるまさかのHEROデッキを引っ提げて参戦。十代と同じテーマでも戦術や切り札が全く異なる、これまでとは違うライバル性を鮮烈に打ち出します。

59話で本格的なお披露目となるDデステニー・HERO。禍々しく、ヒーローというには「陰」の雰囲気が強い外見やモチーフの数々に加えて、運命を司ると豪語するのにも納得のターンを跨ぐ未来操作の効果。リアタイしてた時の「こんなんどうやって倒すんだよ…」の絶望感は今なお色褪せません。これまで負けることはあってもデュエルをエンジョイしていた十代が、(斎王の策略があったとはいえ)精神を完膚なきまでに打ちのめされ、デュエルを楽しめなくなる展開も一味違うストーリーなのだと印象付けます。

「かつて、僕も信じていたさ。お前のように正義の力を」
「ムカつくんだよ!お前のように、憧れだけでヒーローを使うヤツが!」

エドは十代とのストーリー運びから成るキャラ造形が非常に好きです。「ドローの運命を信じる十代」「タクティクスを尊ぶエド」のアマとプロの対立軸を描き、ヒーローへの憧れという同じ共通項を胸に抱かせながら、決定的に覚悟の違いを見せつける。初回登場時ではカードに頓着しないドライさを見せつけながら、本命のHEROデッキには幼き日から続く絶望や戻れない日々への憧憬といったウェットな感情を如何なく込める。そのギャップから成る描写の熱量たるや、僅か4話分の出番でもエドの多面的な人間性が響きます。

「確かに、お前はいい腕をしたデュエリストだ。だがお前は絶対に、僕には勝てない!なぜなら、僕にはあるものがお前には無いからだ!」
ヒーローを、渇望する理由さ!
そして2期序盤で翔達の成長が描かれたように。エドの過去から連なる現在の灼熱とも言える熱量が流れ込み、十代の成長につながる覚醒・強化回の心躍る高揚感!

十代、ワクワクを思い出すんだ!
ここで海馬コーポレーションと十代の過去が交差し、失意の十代がヒーローを愛する気持ちのオリジンに立ち返る王道の強化回!「子供の頃に思い描いた夢」を思い出して復活し新たな力を得る、数話分溜めに溜めたカタルシスが熱いんだよなぁ…!
E・HEROのアメコミモチーフとは異なり、十代が少年時代に描いたダンディライオンなどのカードがタンポポなど生物由来が多いのは「子どもの頃って動物とかの図鑑を見るの好きだったりするもんなぁ…」の感慨を抱かせるし、新たなE・HERO、ネオスに光の巨人の面影があるのも、まさしくテレビ番組から十代少年に焼き付いたヒーロー像だったのでしょうね。

「夢見てたんだ、ガキの頃からの夢。宇宙を救うヒーローになる!それがデュエルを始める切っ掛けだった。夢は思い出させてくれたんだ。俺がワクワクしてた頃を!」

ここの「弾むような声色」の概念そのものみたいな雰囲気でいや~~~~~~~~~~~~~もう泣いてしまうな………。

それはそうと、DMで海馬は「は?俺はオカルトとか信じないが?遊戯にカードを託すのも運命なんてないと証明するためだが??」みたいにオカルト断固拒否論者だったのに、子供たちのイマジネーションを乗せたカードを宇宙へ打ち上げるド派手なスピリチュアルに目覚めてるの笑ってしまう。完全に記憶編とアテムに脳を破壊されてるじゃねーか!
そしてMAD素材として当時しゃぶりつくされたアクアドルフィン喋るたびに笑うしなんなら台詞を八割くらい覚えてるの、最悪のインターネットなのでもう駄目です。あーあ。

そこから連なる67・68話のエド再戦もアツい!十代とエド、同じくヒーローを愛する者だからこそ「新しいヒーローに出会うとワクワクする」の言葉がエドの心を氷解させ、運命を操るD・HEROに自分の運命を押し付けていたと気づかせる説得が良い。

「そうだ。僕もかつて、ヒーローの出現に胸躍らせていた…。これがお前のヒーローか、十代…!」

フレアネオスの光を見て幼き日のワクワクを思い出すエドですよ…!このシーンは本当に、心の底から嬉しそうな声色をしているのがこっちまで伝わってきて素敵なんだよな…。
62話では復讐のためにヒーローデッキを取り断罪するエドに対して、純粋なワクワクした憧れでヒーローになろうとした子供の頃の夢を思い出す十代の対比が描かれましたが、ここでは逆に十代によってエドがヒーローへ憧れたオリジンを思い出す互いへの影響を成しているのが堪らない。
この回から本格稼働するネオスデッキによって更に十代は変幻自在の様相を増し、そのタクティクスは72話「デッキ破壊を破壊せよ」を代表する名デュエルの数々を彩るのでした。それにしても十代がコンタクト融合の「ターンが終わるとエクストラデッキに戻る」仕様に振り回される一幕とかは改めて今までと異なる力なのだと感じさせるし、カラータイマーが鳴ると宇宙に帰るモチーフの再現が完璧です。ネオスペーシアンは光の国の住人だった•••!?

2期ラスボスの斎王に対し、十代は光の結社に洗脳された仲間を、エドは父を殺した犯人と奪われたBlooDを追う中と、それぞれ別のルートで至るのが印象的です。目的を等しくしながらも常に一緒ではなく時に道が交差する感覚は、仲間やライバルとはまた違って「ダブル主人公」の趣きを感じさせます。
遊戯王ではブラックマジシャンの遊戯とブルーアイズの海馬、ジャンク・ウォリアーの遊星とレッドデーモンズのジャックの様に「人型エースモンスターの主人公とドラゴン族エースのライバル」の構図がみられますが、それを参照すると同じ人型のヒーローを使う十代とエドのW主人公の様相がまた見えてくる気がします。
え?遊星の切り札はどう見てもスターダスト??5Ds最終回を飾ったのはジャンク・ウォリアーのスクラップフィストだったが!?!??

斎王は2期大ボスながら、序盤から顔見せするだけでなく積極的にデュエルをすることでデッキの異様さや強大さを確固たるものとしてきました。
その中で最も大きいのが「洗脳された人々が光の結社入りしてしまう」展開です。
その初デュエルは61話とかなり早い段階なだけでなく、相手がまさかの万丈目なのも絶大なインパクトを与えます。この回は単に負かす以上に精神攻撃も凄いんですよね。「強くなっていく十代への劣等感」「勝利を目指しながらも馴れ合いの中で徐々に心が萎える鬱屈」といった、万丈目自身すらも気付いてなかった心の闇を容赦なく暴く様は、まさしく全てを照らす光の暴力そのもの。
そしてトレードマークの黒コートが漂白されホワイトサンダーを名乗る衝撃といったら…!
ここの恐ろしい所は、洗脳万丈目って初めの頃は割とギャグ的に流されてるんですよね。レッド寮を白く塗ろうとしたり冷奴に醤油をかけないくらいのもので、仲間も「あ~また万丈目が変になってるよ」的な温度感というか。

そんな弛緩した空気が一気に冷えるのが70話。万丈目がアカデミア生にデュエルを挑みまくったことで多くの生徒が洗脳されてしまった…と、ついに結社の尖兵として牙を剥いた恐ろしさですよ!色とりどりの個性が制服に現れていた各寮生たちが漂白され、万丈目の、デュエリストの魂たるデッキに今まで見たことのない「白のヴェール」といったカード群が混入しているのが、精神汚染の表現としてこれ以上ない。万丈目を応援するオーディエンスがまた薄ら寒さを高めます。あれだけデュエルで場を沸かせていたアイドル性が、信者を束ねる宗教の幹部に変質したかのような属性の反転が周到で、思わずワアッ…と慄いてしまう。
あれだけ思いを寄せていた明日香を容赦なく打ち負かしただけでなく、明日香も洗脳されてしまう絶望感ったらないですね…。特に2期序盤はレッド寮を守るために明日香や剣山たちが垣根を越えて協力するのが話の軸だっただけに、その明日香がレッド寮を潰すため怪人を送り込んでくる転換に眩暈がします。これ絶対そっち方面洗脳悪堕ちに性癖歪んだキッズいたでしょ。僕は当時歪みに歪みました…。

また、その裏でカイザーが闇堕ちしてるのも凄い。主人公含め多くのキャラが超常パワーによる洗脳とかでダークサイドに堕ちてるGXにおいて、特にそういうのではなくハジけたのがマジで!??となってしまう。
相手をリスペクトするデュエルを心掛け、圧倒的なデュエルタクティクスでサイバードラゴンを操ってきた養成所のエースたるカイザーが、プロ入りし負けこむことで表舞台から消えるの、本当に嫌~~なリアリティがあるんだよな…。
転落して初めて知った勝利への渇望。肉体を傷つける見世物と化したデュエルへの絶望。それらに対して迸る激情が「嫌だ…!俺は、負けたくないィィィィィ!!!」の絶叫に乗る悲壮感を、しかし誰が笑えましょうか。私だってファンデッキで遊んで満足していたと思ったら下手にランクが上がって勝てなくなり、一線をふっきれたことで誘発やメタカードをガンガン積むようになっていったのです。こだわりを捨て、あらゆる手段を講じて勝利を求めるのもカードゲームにおいて決して捨てられない要素でしょう
光属性のサイバードラゴンから闇属性のキメラテック・オーバー・ドラゴンが召喚されるのが闇堕ちの表現としてもストレートでいいし、それまで純朴・朴訥な雰囲気のあった声から魅入られたように妖艶な響きが混ざる演技も痺れます。レッド寮を味があるとか言ってくれたあの頃に戻ってくれ…。


また、修学旅行で童実野町に行くのが、久方ぶりのファンサービスが手厚い!となる。バトルシティの名場面の数々の舞台となった場所に行くのが、俺達がリアタイで感じた高揚が歴史になってる~~!とテンション上がります。人形戦のオシリス河川敷が名所になってるのはさすがに笑ったが。
双六じいちゃんが十代の後ろ姿に遊戯の面影を見るの、こういう演出好き好きなので最高の気分になっちゃったぜ。

十代とエドのタッグデュエルは息の合わなかった二人が戦いの中で戦術と間合いを合わせていき、エドの戦略を十代が理解して活かし、十代の運命を信じる心がエドを凌駕する構図が、デュエルの展開と共に関係性を二転三転させていいですよね。でもこの回、ヒーロー使いのシンパシーからなのか十代がやけに「エド~~♡」と子犬みたいに懐いてるの何???ってなるし、エドもエドで「十代…おもしれーやつ」みたいな満更でもない顔するんじゃない!
修学旅行編はキャンプさせられてるレッド寮虐が見物ですが、何気にエドはホテルに泊まるとかでなく近くでキャンピングカーに泊ってるのが、あ、あるんだかないんだかわからない協調性~~~~~!お前も一緒にハンバーガーを食べるんだよ。


三沢闇堕ち回です。これも凄いのが、三沢が他人からの承認に飢えて自ら敗北を選んでしまうこと。孤高な勝者ではなく凡夫の群れを望む点です。
エドにはデュエリストにあるまじきと切り捨てられるし、実際情けない姿ではあるんですが、これもあながち笑えないものがあるんですよね。
三沢は鳴り物入りでアカデミア入りし、「一位になるまではブルー寮に行かない」と豪語するなど高いエリート性がありました。しかし1期後半のセブンスターズ編からは思ったような活躍がなく、十代の後塵を拝するポジションに甘んじる始末。2期からの唐突な地味いじりは置いとくにしても、この回までにちょくちょく「なんで俺は結社に目を付けられないんだ…!?」の葛藤は描かれていました。
高校生くらいのメンタルが不安定な年代で、他者からの承認がアイデンティティを立脚するというのはあながちおかしな話ではないでしょう。確かに決闘者デュエリストとして三流と断じるのは簡単ですが、一人の人間心理の動きとしてはそれほどおかしなことではなかったのかな、と今になって思います。それでいて、結社の力を得た万丈目に実質勝利までこぎつけていたのを考えると、ちょっと驚くべき強さではないのか…!?
なんか三沢をめちゃめちゃ好きな人みたいですが、いやだって21・22話が良かったから少しくらい贔屓目で見てもいいだろ!という。でもやっぱ地味いじりは普通に雑だったと思うので承認欲求をもっとクローズアップしてもよかったんじゃないか!?あと闇堕ちしても碌に活躍の場がなかったどころか普通に解説キャラしてたり全裸になってエウレーカ!したのはさすがに持て余しすぎじゃないのか!??


85~104話

校長が復帰しGX(ジェネックス)大会が開幕するの、結社が何も片付いてないのに割と思い切った構成ですよね…。というか校長、あなたはサイバー流についてもうちょっと詳しく教えてくれ…(あの仏画風サイバーエンドなに!?)

2期でペガサスが出る回に外れ無し!と豪語してやまない私ですが、85話は1期で退場した隼人が再登場・あのラーの翼神竜が登場などスペシャル回じみた豪華さがあって随一で好きです。

出てくるのはラーのコピーカードなものの、かつて遊戯達を苦しめたあの強さに一切の翳りがないのがもう過去作ファンとしてお腹いっぱいです。俺はラーが好きでねぇ…!
神縛りの塚によって拘束されるラーの屈辱的な絵面が凄いし、「ライフを攻撃力に変換!俺と融合!融合解除!死者蘇生!」みたいな出たり入ったりするわちゃわちゃ感が完璧オブ完璧で、慣れ親しんだ老舗の味を思わせます。ラーが味方としてゴッドブレイズキャノン!!するのが頼もしいよね…。
そして、隼人が作った新カードが摩天楼スカイスクレイパー2・ヒーローシティなのは、隼人なりに「自身と道が分かれた後であっても活躍する十代」を思い描いたのかな、と「2」に込められた思いを想起させます。

修学旅行編でもそうでしたが、双六やペガサスといった過去作のキャラが十代の背中に遊戯の面影を垣間見るのシンプルにいいですよね。また、デュエル後に十代が「もしラーが本物だったら、隼人のカードがなかったら俺は勝てただろうか?」と想いを巡らせる一幕があり、神に勝った十代だけでなく遊戯たちの格も上げるのが粋な演出です。この辺はスタッフもかなり気を遣ったのだなぁというか。


神回。この回をそれ以上の言葉で表現するのはもはや野暮なのかもしれません。たとえ回し辛くても、ロマンが強すぎても、それでも出したいコンボがある。その一点のために思考を重ね、収斂を重ね、研鑽を重ねる。最後まで信じたその想いに、デッキは必ず応えてくれる―そんな、カードゲーマーへの賛歌とも言うべきエピソード。
この前後に「勝利をリスペクトする」ヘルカイザーのエピソードがある辺りも、勝ち負けにこだわるのもデッキの構成にこだわるのもデュエリストとしては同じく尊い地平なのだと感じます。どちらの方を向くにしても、デッキへの愛を胸に秘めてドローしていきたいなと、ただただ思うのでした。


洗脳された仲間たちを取り戻すデュエルでは、十代がそれぞれの心に訴えかける鍵となるカードを戦術に組み込むテクニカルな動きが楽しいんだよなぁ。そして万丈目と明日香とでその趣が違うのがまた良い。
vs万丈目は文字通りおジャマを起点として、素手で殴り合いながら説得するようなアツさがあります。最後はおジャマ達の力を借りてホワイトナイツ・ロードを自らの手で葬り、その効果で敗北するのも男らしいケジメの付け方でグッとくる。そして万丈目の何が凄いって、あんだけ結社の尖兵として大暴れしてたのに何一つ覚えてないんですね!??自分の犯した罪に向き合って落ち込む展開とかあるんかな~とか思ってたけどお前もう無敵だよ…。
この回は、十代がエドに敗北した時に感じたショックを受けて、万丈目に「お前が負けて苦しんでたのに気づいてやれなかった」と呼びかけるのが良いよね…。

vs明日香は更に強化されたホワイトナイツデッキと、より深い洗脳を受けて虚ろな目になった明日香がちょっとこれ癖が歪…脅威を演出します。
決して闇の訪れない世界を「白夜」で表現するモチーフが秀逸で美しいですよね。洗脳で心を閉ざす・エースが白夜の女王・デッキに氷を思わせるモンスターが多いあたり、雪の女王の童話もモチーフの一つでしょうか。
明けぬ夜とて夜は夜。いつか日は昇り、明日香の心もまた目覚める。十代と仲間たちの熱い想いが、太陽の化身たるフレアスカラベから融合したフレアネオスを通じて届き、そして十代が明日香の目を覚まさせる。完璧。あまりにも文脈が完璧です。それ以上言うことないわ。明日香が元に戻ったと確信した十代がちょっと感極まってるの好き…。

GX2期は十代が折に触れて「ドローの運命」を口にし、エドがD・HEROを使い、斎王はもうそのままタロットカードと、「運命」が作中テーマとして描かれており、それ故にクライマックスでこの3人が集結するのも必然だったのでしょう。
アルカナフォースのインチキ効果具合が全編に渡って描かれてきた構成は、そのものズバリ運命の強固さにも繋がりました。並大抵の努力では覆すことができないのだと。
だからこそ、それを凌駕する想いでデッキを信じ、そしてドローに魂を込めれば運命は変えられるとする直球な眼差しが、これぞ遊城十代!!と感慨深い!こっぱずかしくなるくらいの奇をてらわなさが十代だよ…。

そしてかの有名な「情報量の多い画像」が出てくるので腹抱えて笑ってしまった。いや絵面は真面目だし実際の場面はかなりカタルシスあるんですよ!?身を挺して電脳化した大ボスの妹とともに、十代が信じたヒーローとスペースザウルスに覚醒した剣山がレーザー衛星を破壊しているだけで。スペースザウルスって何!??


十代と斎王が激戦を繰り広げる裏で、ジェネックスを制するべく万丈目が活躍しているのがめちゃめちゃ良い。これ、一度は結社に堕ちて斎王を神と崇めた万丈目が神輿に担がれてることで「俺こそが神だ!」と言わんばかりのメッセージを放ってるのがサンダ~~~~~!!ってなってしまう。どっからだしたんだそのノボリは。やっぱり万丈目はそのアイドル性で皆をまとめてこそですよ…。
正直言えば、万丈目が洗脳された際の十代に向けたコンプレックスなどの要素が活かされないのはどうよ、とも思いました。馴れ合いの中で戦意が萎えていく葛藤なんてどう料理してもアツい要素なだけに、そこに触れないのは勿体なかったなぁと。まぁそういうとこを深く掘り下げないのも彼らしいっちゃらしいのですが。

そして十代が見た運命の景色が一面に広がる砂漠と、遠くに佇むアカデミア……。
ここから。ここからが本番なのでした。


3期

3期に触れる前に言いたいのは、ここは自分にとって鬼門も鬼門でした。リアタイ時、毎週かかさず真面目に見ていたわけではないとはいえ「数週飛ばしたら話もキャラの情緒も明後日の方向にカッ飛ぶ」「十代が見るたびに苦しそうにしている」光景が目に焼き付いて、気付いたら見るのをやめていた…。そんな記憶だけが残っていました。
改めてここまでのエピソードを消化して臨んだGX3期。ヨシ!見るぞ!と込めた気合がOP「ティアドロップ」で打ち砕かれる!静かに落涙する十代、どこかダウナーな…憂いを帯びた表情は、この2年分では見なかったものでした。その達観すら感じる風格や、アカデミアの思い出を振り返るような背中にどこか遠いものを感じてしまう…。
3期を一言で表せば、それは過酷と壮絶の概念の結晶。しかし同時に、遊城十代にとって避けては通れない道でした。

105~131話


3期は留学生や新入生で多くのキャラが投入されますが、ここは主にヨハン・アンデルセンに触れましょう。

「伝説って?」「ああ!それってハネクリボー?」
ヨハンは快活で天衣無縫、デュエルを心の底から楽しみ、そして精霊と会話までできるなど、十代と同一と言ってもいいほどの共通点を見せます。OPでやけに十代と近く描かれ(なんなら2期時のエドよりもクローズアップされてる)、その後のエピソードでも相棒ポジションに急接近してるので誰よその男!!!となりましたが、このバックボーンを鑑みると納得です。
3期開幕の105話は総集編ですが、ここでは光との戦いを経た十代が精霊たちと距離が近くなり、翔や剣山たちから奇異の目でみられるのがサラっと描かれます(剣山からそんな目で見られるのはおかしくない…?)。ゆえにこそ、ヨハンが相棒としての立ち位置を確立するのも頷ける。
2期のエドが短い出番でもキャラが立ったのと同様に、ヨハンも十代との多い共通点から人となりが導かれるのが上手いですよね。

アモン、ジム、オブライエン達も序盤こそ立ち位置がはっきりしなかったものの、それぞれの思惑が見えてくるとともに物語が動き出す構成が好みです。ジムの化石デッキは剣山と被る概念なとこがありますが、オブライエンは傭兵のバックボーンと銃型のデュエルディスク、ミサイルや炎をモチーフにしたヴォルカニックのバーン戦術との噛み合いが強く、無骨なキャラクター像も実のところかなり好感度が高かったり。アモンが貧しかったころに見ていた空の原風景がデッキに反映されてるのもいいよね…。

それにしてもなんだろうなこのサムネ…。


GX3期で大きなテーゼとなるのは「十代の成長」です。それはこれまで描かれてきた学生やデュエリストとしてのステップを越えて、大人への成長です。
これは序盤から、鮫島校長が十代に向けて「少年から青年にならなければならない」と想いを向けているなど、かなり自覚的に描かれています。そしてそれには痛みが伴うことも。

113・114話はその中でもかなり大きな意味を成します。十代は決して真面目な学生ではありませんでした。サボりや居眠りなど授業態度が不真面目なのは1期からの光景だったし、それでも不良と言い切れるものではなく、主人公の属性における愛嬌くらいの範疇でした。
しかし、三幻魔を打ち倒しカイザーやエドから一目置かれるほどの実力者となった今ではそうも言っていられない。十代を尊敬する者が増えるにつれ、その態度が悪影響として広まって、他の生徒たちまでサボりを繰り返すようになる―明らかな悪性、悪徳として糾弾されました。
ここはアカデミアが閉じた学生のコミュニティなこと、2年間培った物語と主人公の立ち位置の変化に対して非常に真摯です。英雄となったものは、本人がどう望もうとも他者の影響を無視できない…そんな重みすら感じるほどに。
この回から、OP映像の十代からアンニュイな表情が消えて決意に満ちた眼差しになったり、不敵な笑みをヨハンと交わすのが、新たなフェーズに突入したのを実感させます。

自分の望みのために多くの者の命を危険にさらすコブラや、デュエルをする毎に体力が失われる罠の存在もあり、徐々に十代から「デュエルを楽しむ心」が削られていくのが目に見えるのがまた辛い。その証拠にGX3期、たとえ三幻魔や斎王相手でもワクワクを隠し切れなかったあの十代が「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」って全然言わないんですよね。

Q,新キャラと既存キャラ交えてどう物語に生かしますか?
A,全員まとめて異世界に飛ばします

思い切りが良すぎるだろ!!!!まさかの異世界転移。漂流教室もとい漂流アカデミア編です。空に太陽が3つ浮かぶ光景で、1期序盤で訪れたデュエルモンスターズの世界だと一目で理解できるのが凄い。というかよく覚えてたなその設定…。
異世界編はモンスターの襲来から命を削りながら戦ったかと思えば、混乱の中でアカデミア生が暴徒化しかける閉鎖空間もののお約束があり、さらにゾンビ化した生徒が徘徊して徐々に追い詰められていく、パニックホラーの詰め合わせセットみたいなお辛い展開が目白押し。だいたい漂流教室で見たやつなのですげぇなこれ…。デュエルの描写がかなり淡白なのも輪をかけて先の見えない展開への閉塞感を高めます。
ついでに言えば、ジムやオブライエンが仲間として加入し活躍するのは痛快ですが、既存キャラがやや割を食ってる感が否めないのが何とも。万丈目と翔の活躍を足して100倍したものよりオブライエンのワイヤーの方が遥かに役に立ってたからね。


124,125話は3期からの新キャラ達のデュエルですが、暴走しかけた生徒が野次を飛ばす光景がとにかくお辛い。十代はマルタンに「デュエルで勝ったら発電所と食料を総取りしようぜ!」なんて軽い口調で言ってますが、内心で敵の望む施設を渡すわけにはいかないが、これ以上食料が不足して生徒を抑えることが出来ない•••と現状に葛藤しており、責任を負う者としての重みが伺える。お前の笑顔を最後に見たの、いつだったか忘れちゃったよ…。

というか三沢お前いたの…いやアカデミアにいなかったのぉ!?フェードアウトしてたのをツバインシュタイン博士のところに行ってたとするの剛腕すぎないか!?
しかしこの三沢、異世界編になってから八面六臂の活躍をみせます。伊達に計算へ費やした時間は無駄ではなかったと、デュエルこそしないものの通信を復活させたりと異世界からの帰還に向けてかなりのキーパーソンです。やっぱり三沢は斎王が恐れた男だったんや!!

そして三幻魔がここで再登場し、改めて脅威として立ちふさがるのがオォッと盛り上がる!「賢者の石」がない代わりに「宝玉獣」のヨハンが十代と共に戦うのが文脈の変奏を思わせて見事だし、ここで外部との協力を得てついに究極宝玉神・レインボードラゴンが降臨するのが、3期序盤からの物語がひとつ成就した趣きがあって…ヨハン?ヨハーン!!!!


異世界に戻った十代にかけられる追い打ち。それは今回の事象がかつて自分の相棒だったユベルが自分を標的に仕掛けたことと、自分たちが助かるためにヨハンを犠牲にしてしまったこと。いや本当にえげつないな…。
「ユベルをあんなにしてしまったのは偶然じゃない、俺なんだ…!」と一人で抱え込む十代が本当に苦しくなってしまう。
そしてヨハンを助けんがために再び異世界へ足を踏み入れようとする十代に仲間が駆けつける、これまでも見られた十代が先頭に立つ光景を指して「ヨハンへの責任があるから十代は行こうとするんじゃないのか?」と言うエドに対しカイザーが「もし十代が異次元に戻ることを知ったら、仲間が放っておくと思うか?」と返すのが、二人の視座の違いと十代が自分の影響力を自覚しない「子ども」なのだと、非情な現実を浮き彫りにします。

この辺りからシリアスで重苦しい展開は更に加速していきました。ファフナーじゃなくても総司がデスポエムを毎回読みそうなくらいに。それはそうと、異世界から生徒たちが帰還して「いやーデザイナーとしてはデュエルモンスターズの世界をみたかったデスねー!」とか言い出すペガサスが鮫島校長に「未帰還者もいるんだから滅多なこと言わないでくださいね」と静かにキレられてるのでジワジワきてしまう。ラーのヒエラティックテキストを丸写しした頃となんも変わっとらんなコイツ…。

132~156話

OP映像が変化し、より毒々しい色となった空や箒星などが印象的です。十代がアカデミアの思い出を回想していたシーンがヨハンとの日々に変わっているのでもうこれヒロインなのでは…?となってしまう。

私が3期後半で知ってるネットミームは「ユベルがヤバい」「十代が覇王になる」「超融合!俺とユベルの魂を一つに!!」で、途中で視聴を切ってしまった手前調べるのもな…と放置していたのですが、それが遂に明かされる期待感も少なからずありましたね。

ただでさえ過酷だった異世界編が、今度は「デュエルによって敗者は命を奪われる」、よりスーパーハードコアな世界観に様変わりしてるの恐ろしすぎるでしょ…。
ここの展開の上手さは、十代と仲間との情報開示のタイミングにズラしがある点ですね。132話で先に十代がこの世界でのデュエルが如何に重い意味を伴うのか知ったからこそ、133話で仲間にそれを知らせまい、危険な目に合わせないとより重圧を強め、それにより生まれる仲間との温度差がデュエルが終わった後に走る絶望的な緊張感を起爆させてゾクゾクさせる。

一度ヨハンを犠牲にして自分たちだけ助かったようにフリードを犠牲にしてしまったことで、十代が目の前で失われようとする命に対してどこまでも救おうと手を伸ばしてしまうのが、正義感によって己の首を絞めつけていくような悪循環で胸が苦しい…。そして、この期に及んでも「どんな犠牲を払っても俺が絶対に助け出す!」と口にしてしまうこと。十代はもう仲間の命を背負っているのに、時にそこから目を背けて自分の命さえ賭ければいいと…未だ子どものままでいることは「罪」なのだと容赦なく突きつける。

更に、翔たち仲間との関係性に少しずつ亀裂が入り始めているのがさり気なく描かれてるのが、丁寧でまたえげつない。フリードの仲間たちを助けようと各地を転戦する十代に、明日香たちが「十代は心の重荷を忘れるために突っ走っている」「こっちのことは考えもしない」と不平を感じるのは、「邪心教典」による敵の策略こそあれど本質的には間違ったものではありません。

とはいえ十代の暴走とも言える行動もまた、彼の中では間違ったものではない。冒頭で述べたようにヨハンは十代にとってシンパシーを感じるのに十分な表裏一体・背中合わせの存在で、もはや出会ってしばらくの友の枠すら超えています。更には罪悪感によって「救わなければならない」と盲目的になってしまうのも、致し方ないものです。十代と仲間たちにとってヨハンの存在が持つ意味に温度差が生まれているのが、この亀裂を確固たるものとなすのが辛すぎる。ヨハンが無邪気にデュエルを楽しんでた頃の十代と相似の存在であるからこそ、それを失ったことで十代がかつてのようにいられなくなると明示するの上手すぎんか?
なんかヨハンの話してるとラブコメ新ヒロインの感想を書いてるみたいな気分になってくるな…。


仲間たちが十代に怨嗟の声を上げながら消滅していくトラウマ映像。悲痛なうめき声を上げながらもデュエルを続ける光景に、思わず「十代が何をしたって言うんですか??」となってしまう。いや十代が全部やったことなんですけど、いやそういうことではなく…。

「みんなの魂を犠牲にして生まれた魔物など、生かしておくかぁぁっ•••!」 「暗黒界の魔神レインは、何度倒しても俺の怒りは収まらない!ぶっ倒しても!ぶっ倒しても!ぶっ倒しても!!…俺の仲間たちはもう、蘇ってこないんだ……」
いやもう辛すぎる。主人公が闇に堕ちる展開が、ここまで丁寧に舗装された導線で展開されるのなんなんだ…。
そして完全に思い出すのでした。リアタイしていた当時、この回から受けた衝撃があまりにも強すぎて脱落してしまったことを…。
「数週見逃しただけでキャラの情緒が〜」なんて述べましたがとんでもない。誰の目から見ても明らかになるように、各キャラの感情が揺れ動く様はそこに描かれていたのです。

そして覇王十代。本当に急に出てくるから死ぬほど驚いた。HEROデッキの中身がEイービル・HEROになっている、属性の反転とともにこれは間違いなく十代なのだと叩き込まれるのがもうえぐい…。
超融合が仲間や無辜の人々の血を吸った呪われし力なのだと、その尋常ならざる強大さをデュエルの演出で魅せる手法が凄まじすぎました。超融合は十代の切り札とうっすら聞いてたからマスターデュエルでちょいちょい使ってたものの、まさかこんな悪堕ちパワーだとは思わないじゃん…。
「各属性の融合を自在に使う」至高の錬金術師たる才能が、相手のモンスターをも巻き込む超融合により最悪の方向に活かされてしまうのも一期から連なる文脈を最大限に利用して、こちらの心を折りにくる。
139~143話は、生き残った仲間のジムとオブライエンが十代を救うために命を投げ打つ一連の壮絶な展開がストーリーのボルテージを最高潮にします。
この二人が本っっっ当に良い!!右眼に宿したオリハルコンの義眼に導かれるように、友のために死闘を繰り広げるジム。一度は無様に逃げ延びたものの、己の心の赴くまま覇王の前にたつ勇者オブライエン。最後まで壮絶な生き様が痛いくらいに胸を打つ…。彼らは出会ってまだ半年の新キャラなどではなく、もう大切な仲間の一人一人になっていたと改めて気付き•••俺は泣いた。
そして流れるようにバンダイの遊戯王グッズ商品化アンケートに「D-Arts 覇王十代」と入力するのだった•••。

ここからは翔が傍観者として、まるで隠者や語り部のごとく十代の旅路を見守るのが新鮮でした。こうまで物語が極まると、視聴者に出来るのはその行く末を見守ることだけ…そんな感慨を翔に傾けていたようにも思います。
エドやカイザー、クロノスに三沢も物語に復帰するのがまた安心感を高めるとともに「戻ってこないでくれーッ!今きたらお前らまで死んじまうーっ!!」と頭を抱えてしまった。カイザーはもう異世界サイバー流道場で安静に過ごしていてくれ…。


覇王の呪縛から解けた十代が各地を放浪する中で、自分が行った殺戮の痕跡をまざまざと見せつけられ、己の象徴とも言える融合が使えなくなるカルマ値の高いイベントが容赦なさ過ぎて眩暈がしてしまう。
力に怯え覇王の力を否定する十代に、「特別な力を与えられたものは、期待してくれる皆のために戦わなくてはならないんじゃないのか!?」と檄を飛ばすのがかつて他者の承認を求めた三沢なの、これ計算してたなら凄いと思うんですけど…。

148話はカイザーの物語としてのクライマックスが非常に完成度の高いものでした。1期ではアカデミア最強のデュエリストとして君臨しながらも2期から勝利を求めて修羅となり、暴走じみたデュエルを繰り返した。そのあまりにも強すぎる落差についていけなくなったところが少なからずあったものの、勝利を求める姿勢の純粋さは確かに本物のそれ。
3期後半でエドと登場した際は、カイザーとして年長者からの広い視野をも見せて驚きました。何気に2期の吹雪戦で、正気を失ってるわけじゃないと明言されてたんですよね。
そんなカイザーがラストデュエルの相手にヨハンを選び、己の命が瞬間煌めく様を永遠にしたいと思っていたと吠えるヘルカイザーとしての側面。そして命の灯火が消えることを利用してヨハンを救い出そうとしていたカイザーとしての側面。そのふたつがここにきて「同じ人間の別側面同士」交わり、奇しくも十代と覇王の力を融合させる展開を後押しする、この昇華!

「俺に介錯はいらん…!速攻魔法!サイバネテック・ゾーン発動!!」
日の光を受けたサイバーエンドが穢れなき輝きを放つこのシーンが、BGMも相まってボロボロに泣いてしまう…。力と勝利を渇望して地獄を彷徨ったカイザーが、力を恐れる十代に見せるかのように最期に命を全力で燃やして見せたのが壮絶だし、2期から溜めに溜めたカイザー自身の物語を全て使って十代に託す結末が最高にカイザーらしく、ただただ誇らしかった…。
3期に入ってからずっと作中に蔓延っていた暗闇を剥がすように、どこまでも堂々と輝くサイバーエンドに目を焼かれます。

「十代、お前はもう子どもじゃない•••」
1期から十代に関わってきた年長者の亮からこの言葉を贈られて、ついに十代の覚悟が決まるのが、もう心を揺さぶられた。

続く151、152話も上記の回を受けた「融合」の扱いが素晴らしい。多くの命を奪い血塗られた力となってしまった融合のカード。仲間たちの最期の光景に心折れそうになりながらも足を踏みしめて、
「逃げない、迷わない。みんなが味わった苦しみ、悲しみ憎しみ、その全てを受け止めて、俺は戦う!」
「失ってしまった尊いもの達のためにも、今度はこの邪悪な力、覇王の力を支配してでも―俺は、俺の正義を貫く。もう誰も傷つけない!大切なものを守り抜く!」

十代~~~~~~~~~~~~!!!もう好感度が上限に達してたとはいえ更に好きになってしまった。1期の頃あれだけ生きているだけで楽しそうだった少年が、もう生きているだけでこんなに辛そうになっていても、それでも戦おうとする姿の鮮烈さが心に突き刺さる。特に超融合のシーンは、発動前に翔たち「守るべき愛する人々」の存在に祈るような眼差しを向けるのが堪らなくなってしまう。
度重なる耐久試験を受けて練磨された魂から、より強固に鋭くなった輝きを放つのが壮絶すぎてもう言葉が出てこなくなる。十代、良すぎないか?

しかしユベル、本当に凄いですね。いつから毎ターン愛を紡ぐフェーズが追加されたのかな?と錯覚してしまうほどに十代へ語り掛ける構図でちょっと笑ってしまう。あとヨハンにさせてたその謎のファッションは何?
「相手と傷つけあうことが愛」とするユベルの美学が、戦闘ダメージ反射の効果に反映されてる手つきはさすがGXといった感じです。どれもこれも本気で言い張ってるので、いや怖…となる。本当に平日夕方にこれやったんですか?

そんな風にやや茶化してみてたら155話ですよ!!ユベルが前世で十代を守るために肉体改造を試みて美しい姿が台無しになっても、転生しても十代を守らんとその力を行使し続けた。こんなん運命で、愛の物語じゃん…。インターネットはいつも大事なことを教えてくれない。遊戯王GXはユベルがメインヒロインです(※諸説あり)。

「俺は、そう、子供から大人になるために、今から旅にでる。…ガッチャ」
高校3年生とは子供と大人の境界がひどく曖昧で、そしていつかは必ずその境目を越えていかなければならないもの。その際にはきっと、自分の中の子供の部分のいくらかを燃料にしなければならないのでしょう。世界を二度も救った十代がそれに見合った次のステージに行くためには、世界を変革させるほどの熱量が必要だった。
喪失は苛烈で、信念は壮絶。だからこそ十代の成長を描く3期の終幕はどこまでも透き通るように尊いものだったと、3期を越えた今なら胸を張って言えます。
これを飲み込めるようになった今、改めてGXを見返すことができて本当に良かった…。

4期

4期にあたって、まず「これ以上なにやんの!?」の想いを抱いたのは事実です。3期が既に遊城十代の成長物語として完結しており、舞台の壮大さやボスであるユベルが十代と強固な因縁と絆をなすドラマ性も強い。それと比較すると、話数の短さもあって4期の157話~180話を蛇足とする意見も理解できないわけではありません。
ただそれでも、十代をはじめメインキャラクターの幕を引くのにやはり4期は必要でした。だって十代達の本質は世の平和を守る戦士ではなく、ここから大いに広がる未来へ羽ばたいていく若者たちなのだから!

まず4期になり、十代の制服のデザインが一部変更されてるのが目を惹きます。見てくださいよこの翻る上着の裾!!これまでも3期OPのサビパートや覇王十代のマントなどから「スタッフの中に十代の服の裾を翻したい闇の勢力がおるな…」と薄々感じてたものの、いざこの重力に逆らう鋭角をみるとうおぉぉぉぉぉ!!とテンションが上がります。劇場版の「超融合!時空を超えた絆」で他の主人公と並ぶと後ろ姿がバシッとキマっていいんですよ…。
外見の変化はそのくらいですが、異世界での大冒険と光の波動との戦いを経て明らかにスレてるのが一番大きいものです。日常に帰ったとしても、十代の身に起きた変化は子どもから大人への成長と同時に「前世を垣間見てモンスターの魂と融合した」、この世界の誰とも異なる存在への進化とも言えます。日常に帰ったら前の様に戻る、なんて単純な構造ではない辺りの真摯さに唸ります。
普段の声色にも底知れない響きが大いに含まれていて(それでもあの十代の延長だと飲み込める変化なのが声優さんすげぇ…となる)、前までの十代とは別の存在と意識させられるし、なにより開幕のデュエルがもう気圧される。
終始相手を圧倒する鮮やかな手腕はもとより、異世界であれだけトラウマを生み出した「暗黒界の魔神レイン」を前にしても一切動じずに淡々とネオスでコンボを決め、あまつさえコンタクト融合すらしないのは実力の高さを伺わせる描写として満点でしょう。こっちがレインを見てウワッッ!!と身構えるのをよそに勝利を難なくおさめる姿は、手のかかる子供と思っていた存在が遠くに行ってしまったような寂しさと感慨を抱かせる。
また、ユベルを取り込んで精神攻撃に耐性ができたのも、発動時にオッドアイ化するビジュアルがロマンをくすぐります。前世からの因果によって超常の力を使う十代の裏で、精神攻撃をレジストする剣山の足の化石が前世で自分が食い殺した恐竜のものと判明するのは何か衝突事故を起こしている気がしてなりませんが、まぁいいでしょう。

「俺たちは同じ穴の狢だから、俺に全部尻拭いしろってのか?」
「•••よく言うぜ」
台詞や声の端々がもう擦り切れすぎて精神がティーンエイジャーをとっくに卒業してる十代を、誰が呼んだか「二十代」なんてのもあながち間違いでは…ない…。

周囲の変化も最終盤を飾るのにふさわしいものとなりました。レッド寮にたむろしていた翔や剣山は自分の寮に戻り、万丈目もブルー寮に返り咲いた。
そこそこいたレッド寮生もいなくなり、慎ましくも賑やかな趣があった寮がしんと静まり返ってるのは、RPGの終盤でラスダンしか行けなくなった状態のような寂寥感があります。みんな昇格したんでしょうか?でも異世界を経てデュエル自体やめた生徒もいそうだしなぁ。
こういう空気は部活や生徒会を引退して本来のクラスメイトとの関係性が主となる学校生活を思い出します。

そんな4期は、レギュラーキャラ達が卒業するまでの幕間が語られるのが、なんとも素敵な気分になりましたね。明日香、翔、亮、万丈目たちが夢を見つけて進路を決定する過程が、それぞれ2話ずつかけているのはドラマ性とデュエルの両面を万遍なく描こうという意気込みを感じます。


説明不要の神回2。生徒たちが別れを惜しんだり時に迷走する、進路に思い悩む回に続いてこれが挟まれるのは、クロノスもアカデミアにおける立派な主役の1人なのだと感じられて良い。
実のところクロノスが生徒と共に成長してきたのはvsナポレオンやvsペガサスでも触れられており、それらの総決算が「いやむしろ、この逆境をどうやって乗り越ーエ、この私を倒すノーカ、私自身が見たがってるノーネ•••」の台詞に表れているのが良い•••!

「•••あの時と一緒だな」
いやもうここからがズルい!!1話から十代と関わってきたクロノスだからこそ、ここであの頃の光景が重なりつつも絶妙に差異のある演出が上手すぎる•••。当時KENNさんのアフレコがまだ現在より拙かったのも、3年間の成長を否応なく感じさせます。
この3年間で多くの苦難を経験し、大人びた十代が至った舞台を速攻魔法「終焉の地」で仄めかし、GXのはじまりを飾ったデュエルのキーカード「摩天楼•スカイスクレーパー」を呼び出すのが、もう文脈が激烈にキマってて最高ですよ•••。
この回は十代をはじめ生徒みんなで「ガッチャ!」するのもそうですが、オチで「ちゃんと授業受けとくんだった〜!」と実に1年以上ぶりにコミカルな表情をしてるのも、十代の学生としての側面を飾ってる雰囲気が何とも言えない気持ちで胸がジーンとくるな•••。

そんな4期ですが、当初の印象は今一つ乗り切れない感が強いものでした。敵のミスターTこと異常中年男性トゥルーマンのぱっとしないビジュアルで猛烈な不安に襲われるし、十代のバイクアクションや爆発炎上する海馬コーポレーションの派手な絵面はスペシャル感があるものの、話のスケールに対して脅威が地味に広がる感覚ももどかしい。あと今更ダークネスなんて吹雪先輩しか覚えてないでしょみたいな…。
とはいえ4期の構成上仕方ないよなとも思います。僅か20数話で進路を描きつつ悪役を筋立ててストーリーを動かすとなると積み重ね不足が生じるのは自明だし、いっそスケールや画の豪華さで物語を牽引するというのも割り切り方としてはアリだよなとも。

キーキャラクターとなる藤原も、いやらしい精神攻撃とか言動の端々から絶妙な格の低さを匂わせる上にわざわざヨハンを煽って十代と同士討ちさせようとか邪悪なカプ厨みたいだしこれ大丈夫か?と首を傾げてもいました。
…が、これが藤原の、ひいては4期がアカデミアからの巣立ちに向けた面々を描いてきたバックボーンが繋がることで物語は「跳ねた」。


卒業に伴う別離。それぞれの道を歩むことでいずれ忘却される絆。大人になる未知の不安を幻覚に変えて、その起こりうる暗黒の未来に立ちすくむ万丈目たちにスポットライトが当たる。それにより、全世界に影響を与える広大なスケール感に対して本質が極めてミクロかつ学園ものとして王道なテーマだと明示されるのが非常に鮮やかです。
アカデミアに守られた安寧から目的地も分からぬ荒野への旅立ちは、成長に伴い味わわなくてはならない孤独への恐れ。それは学園ドラマとしてのGXが至る終点に相応しいテーマでした。ネオス・ワイズマンが破壊された際の効果でユベルを除外してネオスを復活させる流れも、たとえ十代であったも人生は究極的に孤独な旅路と明示される。そして、カードを愛し、デッキを信じ、ドローの運命を心から楽しんできた十代だからこそ「デュエルを通して紡いだ絆」の頼もしさを語る言葉が輝かしい…。

十代の声を聞いた仲間たちが、それぞれの思い出の詰まったカードを手に取り自らが歩んだ歴史と共に再起し、人々が現世に還る流れがとても良い…。
「ありがとう、俺のデッキ。お前たちこそが、俺が築き上げてきた絆の全て」
十代たちアカデミア生の卒業をテーマにした物語の結実に、これ以上の言葉は不要でしょう。そのじんわり染み入る余韻が素晴らしかった…。

卒業デュエル成績トップが十代ではなく万丈目、明日香、翔の三人というのもある意味で納得です。十代、意外にも公式記録に残ることってそうそうしてないんですよね。諸々の描写から三幻魔や光の結社事件は公的に伏せられてるっぽいし、ジェネックスの優勝者は万丈目。テレビ中継でこそ何度かデュエルしたものの、前作の遊戯と比べると表舞台で表彰されるような状況は見返すとほぼありません。
しかし記録に残らずとも、きっとあの時代アカデミアにいた人間で彼を記憶しない人間はいなかったでしょう。誰かの心の中心や、それともどこか片隅に、十代の笑顔とその生き様は刻み込まれていたに違いありません。入学の経緯が破天荒なら、去る時は風に巻かれるような爽やかさで…そんな質感こそが遊城十代のいいところなんだよ…(後方腕組みユベル顔)


遊戯から継いだ物語が遊戯との決戦で締められる、この物語の結実!!!!これを盛り上がらない決闘者デュエリストがいようか、いや、ない!!
仲間たちの進路でそれぞれ2話使った流れから、十代の真の卒業デュエルにも2話使ってくれるのがもう溢れんばかりの感謝しかない…。

多くの苦難に直面し、それを乗り越えたことで一足先に大人になってしまった十代が、「大人になってもなくしてはならないもの」を取り戻す。それが大いなる憧れの遊戯なの最高すぎないか!?もっと言えば、成長した遊戯がアテムと居たころの自分を「最強のデュエリスト」と称するのがもう堪らないよ…。

このデュエルの見所は全部です。マイ・フェイバリットモンスターことフレイムウィングマンや、シャイニングフレアウィングマンが出るのがとにかくアツいですね。特に後者は初登場のカミューラ戦において「最近暗いから明るいカードを入れたかった」の台詞が印象的で、世界や命をかけない純粋に血沸き肉躍るこのラストデュエルに降り立つのは感慨深さがあります。
そして遊戯!一部アップデートされてるものの、概ねデッキが再現されてるのがもうアツい…。ミラーフォースや魔法の筒、シフトチェンジといった当時のカードによって十代を圧倒するのが王の風格として満足感高すぎるんですよねこれ。ブラックマジシャンをはじめ、バスターブレイダー、マグネットバルキリオン、カオスソルジャーといったエースモンスター(手札にチラっとクリボーやマジカルシルクハットまである!!)が目白押しなのも、最後のレジェンド回に相応しい豪華さだよ…。

デュエルキングとの激闘の中で十代の心にワクワクが芽生えてこの時間が永遠に続くよう望むように、見てるこっちもいつしか感じます。いつまでもこのデュエルを見ていたい―

「それはどうかな?」

BGM:「熱き決闘者たち」と懐かしのSEを纏って降り立つ名もなきファラオ!!!そして本物のオシリスの天空竜が降臨する様にもはや感無量です。あの日の俺が幾度となく興奮したその威容、その高揚、それら全てが敵として立ち塞がる様に胸を走る熱が、きっと十代の胸にも灯っている確信で眩暈までするよう。

このデュエルに勝敗の結末は不要。オシリスに挑みかかるワクワクの象徴―ネオスの姿と、心の底から嬉しそうな十代で締めるラストデュエル。もうこれで十代は大丈夫だと…安堵にも似た満足感が全身に満ちたのを感じました。

ラストデュエルが終わった後、あてもなき旅に出る十代。2期で斎王が十代を「愚者」のアルカナになぞらえる場面がありますが、精霊の声を聞き最低限の荷物だけ提げて無計画な旅をする…奔放な若者の姿が記された該当のアルカナの、その寓画に込められた背景はこのシーンの十代と非常に一致しますね。

デュエルアカデミアに向けて駆けゆく十代で始まったGXが、あてもない旅に向けて走り出す十代で終わるのは、物語の軌跡が環を描きつつも新たな方向に突き進む到達と新たなはじまりを予感させます。劇場版超融合の冒頭でも十代が走るシーンで始まったし、やっぱり十代は疾走が似合います。
この底抜けに明るい終わり方こそが、最後までこの作品を見続けて良かったと確信させたなぁ…。


リアタイから脱落してから早数年。ちょっとしたきっかけから見直しましたが、ここまでハマり直すとはこの千年眼をもってしても読めませんでしたね。十代の成長や仲間と結んだ絆の昇華、学園ドラマとして長尺だからこその終盤と、どこをとっても美味しい最高の作品でした。
一番好きになったのはもちろん十代です。なんならこの記事の8割は十代が好きだという思いで構成されてます。そうかな?とはいえ他のキャラも粒ぞろいのきらめきが溢れていて、記事を書いてなお語り切れませんでした。

次は何を見ようかなぁ…。ZEXALはボスがあのヌメロンと聞いてるので、もしかしたら見てるうちにランクマで絶賛苦汁を舐めさせられてる中で芽生えたこの溜飲が下がる期待があります。ARC-Vは友人とこの間通話してて「最後までみてないけど、ユーゴとリンが好きだったんだよね~」と言ったら「じゃあ最後まで見ない方がいいですね…」と重々しく返されたのもあって、いずれ向き合う必要があるのかもしれません。VRAINSはミラーフォースとそのサポートが出ると聞いて(ミラフォの補助ってなに!??)俄然興味があります。あと主人公のキャラデザが好みだったり。まぁ春アニメも見たいのが多いしいつになるか分かりませんが。

なにはともあれ、GXを見終わった今、この記事を締めくくるために言うべき言葉はこれにおいて他にないでしょう。


「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!!」



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