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【ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド 感想】その思い出が地図になる

いよいよ近づいて参りましたね!何が?って「ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD」の発売日ですよ!!!
実のところWiiゼルダはトワイライトプリンセスこそプレイしていたものの、スカイウォードの方は今一つ食指が動かないままやり損ねてしまったため、HD版の発表は驚きと同時に懐かしさと期待がめちゃめちゃ高まったんですよね。楽しみだぜ~~~~~~~!

それにしても懐かしいなぁ。そういえば最後にやったゼルダってなんだっけ…と記憶を掘り返した6月中旬。なんと「夢幻の砂時計(DS/2007年)」以降シリーズに触れてすらいなかったことに気付いてしまいました。

いやもう新作どころか3DSのリメイクすら全然やってないじゃねーか!時の神殿に封印されてたのか??(で、でも「リンクのボウガントレーニング」はちょっとやったし…)
さすがにここまでブランクがあるのに楽しみなんて言うのはちょっと…となりましたが、幸いにもまだ時間がある。せっかくだし評判がいい上に前から勧められていた「ブレスオブザワイルド」でswitchの虫干しをしつつ、たるみきったゼルダ筋のリハビリをしてAZL(Activities of ZELDA Living/ゼルダ生活動作)の向上が図れればいいなぁ、くらいの気持ちでやり始めたんですよね。オープンワールドゲーも最近やってなかったし。


見通しが甘かった…!気軽なノリで始めたのも束の間、気付けば平日休日を問わずswitchを起動してゼルダで遊び、その合間に食事と睡眠を挟むといった生活にのめり込んでしまいました。ここまでゲームにハマったのは数年ぶりくらいだし、まさかの2週間で100時間弱をハイラルへ捧げるまでになるとは…。

そりゃ任天堂が新ハードswitchに合わせたローンチタイトルな上、看板シリーズであるゼルダの伝説をオープンワールド化するなどと新しい試みの上で開発されたといえば力の入れようや面白さに疑うべくもないことは明らかですが、それにしたってあまりにも面白すぎた。

祠チャレンジやコログ集めなどやれることは残っているのですが、ひとまずエンディングまでたどり着いたということで感想をまとめるのでした。
余談ですが、私のゼルダシリーズプレイ歴は初代、神々のトライフォース、時のオカリナ、ムジュラの仮面、風のタクト、4つの剣(+)、トワイライトプリンセス、夢幻の砂時計(と、ボウガントレーニング)になります。お前GBゼルダ全然やってねーな!


深く掘り下げられたメインキャラ達

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どこから語ったもんかと考えましたが、まずはおなじみの主人公リンクとヒロインのゼルダについてでしょうか。というのも、過去作を遡ってもここまで二人がキャラクターの内面を掘り下げられたことってそう無いと思うんですよ。

リンク

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勇者。復活した「厄災ガノン」討伐に失敗し、瀕死の重傷を癒すために永い眠りについた彼がその間に記憶を失い、目覚めたらなんと100年が経っていたなんてところからゲームが始まります。これまでのシリーズ同様プレイヤーの分身であり、ゼルダを巡ってガノンと戦う勇者というお馴染みの役回り。そしていつも通り喋ったりはしない…んですが、会話の選択肢から妙にお茶目な人間性が垣間見える。
ハイラル王に対して執拗にアイテムを催促したり、他の冒険者からの依頼で山奥の大妖精に参拝した後で再度話しかけると「何か忘れてない?」とお礼を要求したり、ゲルドの里の店員との会話で突如「~ザラシ!」と謎の語尾を定着させようとしたり、不思議な愛嬌があるんですよね。

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これ本当になに?


あと何でも食べる。このゲームは集めた食材で料理を作れるんですが、キノコだろうとカエルだろうと美味しく召し上がるし、なんなら失敗した料理も割と美味そうに平らげる。かわいいね

100年前のリンクは「王家に仕える近衛の家に生まれ、武芸に秀でた騎士で若くして退魔の剣に選ばれた勇者」という絵に描いたような天賦の才に恵まれ、常に無口だったと一部のイベントで語られます。しかしゼルダとの会話で明かされるその内心は、他者の模範たれと自分を戒め周りの目を気にし続けた結果、素直な感情を出せなくなっただけ。彼もまた等身大な苦悩を抱えている青年だった•••のだと。

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このエピソードの妙はリンクを単なるプレイヤーの分身や「勇者」というアイコンとしてだけでなく、彼をハイラルに生きる一人の人物として昇華したことにあります。妙に図々しかったりお茶目な一面は、かつてのリンクが表出したくても出来なかった素の姿なのかもしれませんね。100年も経ってたら顔見知りは大体いなくなってるので•••••••••

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勇者の姿か?これは…

もちろんこれまでのシリーズ同様に内心を深く喋るわけではないので、その辺りは想像の余地が広がってるバランスもまたいいですね。


ゼルダ

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この曇らせが凄い!なんか妙にゼルダいじめがねっとりしてるオブザワイルド!!
100年前にガノンを封印してそのまま囚われてるヒロインであり、たまに天の声としてリンクを導くお姫様。割といつも通り、ガノンを倒してゼルダ姫を救うのがメインシナリオとなります。また、記憶を失ったリンクは残されていた写真を頼りに12か所のゼルダとの思い出の地を巡り、かつての記憶を取り戻していく…というのがサイドストーリーなんですが、それによって蘇る思い出がとにかく不憫オブ不憫。

そこで描かれるゼルダの姿は、まだ10代なのに世界の存亡を担うことになった重責や、幾度となく精霊の泉で修業に励むものの封印の力に目覚めない焦燥感に苛まれた一人の少女そのもの。
しかし神話にうたわれる厄災であるガノン復活を目前に、世界はそんなゼルダに容赦がない。力が無いなりに古代遺物の研究をして皆の役に立とうと試みるも、父である王に叱責される…などひたすらに葛藤や痛ましい姿を見せつけられるし、どの精霊の力も目覚めず最後に残った「知恵の泉」に希望を見出しつつ縋るような想いを抱く回がわざわざあるのもタチが悪い。

そりゃまぁゼルダ姫が出ないムジュラとか、ミドナの方が真ヒロインだなどと散々な言われようをするトワイライトプリンセスみたいな作品もありましたが、こういう方面でおいたわしいのは想定外なんだよなぁ…。挙句の果てに、王宮の者からは「出来損ないの姫」「責を果たせぬ無才の姫」などと陰口を叩かれる始末。人の心とかないんか?

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かわいそう

前述の通りリンクが理想的な勇者の造形をしているからこそ、ゼルダが彼に抱く劣等感や苦悩がさらに浮き彫りになる構図がそれらの感情の解像度をより高めます。同時に、なぜ二人が心を通わせるに至ったのか、そしてリンクとゼルダの身になにがあったのか…と100年前の背景へプレイヤーの興味を惹きつける構成になっているのも面白い。


ゼルダとの思い出の地を巡る一連のサブストーリーですが、実はこれクリアしなくても全く問題ないし、なんならコンプリートしたところで何かがもらえるわけではありません。ステータスが強化されるでも、奥義が習得できる展開なんてものもない。いわゆるゲーム上のメリットが存在しないんですよね。

だからこそ、このイベントはプレイヤーにとって価値がある。封印の巫女となったゼルダ姫の過去と素顔を知ったことで芽生える「救わなくては」という感情が、リンクの意思とシンクロするんです。その感覚は、今までのゼルダシリーズとは違った新鮮な驚きと同時に作品への確かな没入感をもたらすのでした。


「世界を駆ける」楽しさ

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「広大なフィールドを自由に駆け回れる」「目に映る全ての場所に行ける」、レビューをちらっと見ただけでも同様の評に触れます。プレイする前はまぁ自由度の高いオープンワールドなら大体のところに行けるんでしょ、程度の認識でしたがとんでもない。

せっかくだしこの自由を味わうぜ!なんて気負わなくても、チュートリアルのステージである「始まりの台地」を飛び出してからひたすらに街道や森を走り山を登る!崖を這いまわり高所から滑空する!目的地が追加されたらとりあえず周辺をとことん散策する!のように「寄り道」に走るのにそう時間はかかりませんでした。
何を言ってんだという感じですが、いやほんとに楽しいんですよ!!なんならこのゲーム、プレイ時間の7,8割は走ったり山をクライミングしてるようなもの(※個人差があります)なんですが、これが楽しさの肝と言い切ってもいい。

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徐々に減るがんばりゲージを横目に高くそびえ立つ山を少しずつよじ登り、やがて踏破したときの妙な清々しさと達成感や、周りを見渡して更に高い山があった時の「あそこも行けるじゃん!」と心が浮き立つ様は、まさに世界そのものが遊び場になったかのような高揚感があります。

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このゲームには試練の祠というミニダンジョンが数え切れないほどあるんですが、遠景からでも祠は視認できるので山を登る=次の目的地が見つかるという流れに繋がります。また、そういう高い山の頂上にはコログがいたりアイテムが置いてあったりするので徒労に終わることはほとんどないのがまたニクイ。行動の一つ一つが更に次の「遊び」に繋がっていくんです。

未知の領域を自分の力で歩き通し、どこまでも広がる世界を既知のものに塗り替えていく。そこにあるのは「冒険」のプリミティブな興奮であり、プレイヤーの好奇心そのものが旅になっていく果てしない感動でした。更に言えば寄り道の過程でゼルダとの思い出の地やハイラル・リンクゆかりのエピソードに遭遇することもあるため、話の本筋への導線すら自然に張り巡らされている隙のなさ。メインシナリオを追う過程で寄り道にハマり、寄り道の中でメインへの興味が惹起されるゲームデザインの秀逸さに思わず舌を巻いてしまう…。


また、ゼルダシリーズお馴染みの謎解きも健在。メインシナリオに関わる神獣内部や一癖も二癖もある祠チャレンジは頭を捻っても解くのに苦労するものもあり、ダンジョンで得たアイテムを活用して謎を解くこれまでのシステムとは大きく異なるもののやはりこれは「ゼルダ」作品の最先端なのだと思い知らされます。ついでに半ば恒例と化した「砂漠のダンジョンは難しい」ジンクスも色褪せることなく牙を剥く。やっぱりナボリスだけ難易度おかしくないか?

確かにこのゲームはオープンワールドというジャンルそのものを一段高めたという評も頷けるしとても楽しめたんですが、でもこれ文章で説明しても伝わりにくいというか、正直自分で書きながら「あの感覚を言語化できているのか…?」と首を捻りまくってます。ほんと面白いんですよ•••!!

ここすき 過去作への目配せ

任天堂のいわゆる看板タイトルがswitchで出した新作は、「ドンキーコング」をオマージュしたステージが話題となった​スーパーマリオ オデッセイや、シリーズのボス・仲間がとんでもない物量でプレイアブル化した星のカービィ スターアライズなど過去作ファンへのサービスが豊富にあったものでした。

その一方でゼルダは?というとこれがまた粋なんですよ…!マスターソードは当たり前のようにあるし、ゾーラ族、ゴロン族をはじめとした種族やインパ、テリーといったシリーズ常連のキャラクターたちが配置されてるのもそうですが、山や川といった土地が「過去作のキャラを連想させる地名になってる」のが上手い。
ブレワイはとにかく地を駆け空を滑空して様々な土地を巡るので、そうした時にふとマップを見て「あっ!」と気付くんです。いわゆる匂わせ的なさりげなさとゲーム性がマッチしており、なんだか聖地巡礼じみたむず痒さと共に感慨を覚えるものでした。

土地の名前もただつけてあるだけでなく、「ゾーラ族の里に『ダルブル』の名を冠した橋があり、さらにミカウとルルの名前が付けられた湖が隣り合ってる」

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「チンクル・アンクル・ナックル・ディビットJr.をもじった島が並びあってる(こころなしかチクルン島が地味にデカい)」

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「迷いの森の中心、デクの樹サマを挟んでサリアの湖とミドの沼がある」

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など、キャラ同士の関係性を意識したかのようになっているのも過去作ファンにはたまらない要素。特にサリアが湖・ミドが沼で異なるものな上にそれぞれ対角に位置してるのは、サリアが賢者になったことでもう二度と交わることのなくなった時オカの展開を思い出して切なくなってしまいました。いやミドにサリアの歌を聞かせた時の反応が好きなんですよ…。
でもさすがに広範囲が暗闇で覆われ一つのダンジョンと化した土地が「ブラインド」の名前のアナグラムになってるのは笑った。確かに神トラのボスでは妙に存在感あったし光が苦手だったけどそこからも取るの!?!??

BGMもまた良い。リト族の村では風タクでの「竜の島」BGMが、各地の馬宿や「馬神 マーロン(こいつに至っては名前がもうズルくない???)」との会話シーンではエポナの歌のメロディが流れるなど、一瞬聞き逃しそうな中にも過去作プレイヤーの心をくすぐる要素がずるいなぁ…。


更に、「勇者を助けるために古代シーカー族が開発した機動兵器・神獣」である「ヴァ・メドー」「ヴァ・ルーダニア」「ヴァ・ルッタ」「ヴァ・ナボリス」たち。これらの名前も、神話でガノンを封じた賢者の名前から付けたと作中で明かされるのがなにより良すぎる!そう、メドリ、ダルニア、ルト、ナボールなんですよ!!!かつての冒険が神話として語られている設定もさることながら、ここまで重ね合わせてくるとかN64とGC世代を殺すための展開か!?

ラスボスである厄災ガノン戦、解放した神獣が各種族の英傑たちの号令とともにビームを撃つシーンは映像的にも迫力があります。でもそれ以上に、遥かなる過去からリンクとともにガノンに立ち向かってきた賢者たちがまた力を貸してくれた。いくら作品や年月を隔てても彼らの魂は勇者とともにあった。そんな祈りのようなものを感じて、思わず目元が潤むのをこらえきれなかったなぁ……。

ファンサービスの極めつけはそこから雪崩れ込むように開始する厄災ガノン戦でしょう。そもそも「ガノンの根城と化したハイラル城がラストダンジョン」という展開は時のオカリナでもあったし、「頂上の本丸から地下の空間に落ちる」戦闘前の流れは神々のトライフォースを思わせます(まぁあれはピラミッドだったけど)。

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もはやガーディアンに寄生した怨念のような悲壮感すら感じる造形

そして、憎悪と怨念が暴走した「魔獣ガノン」との決戦は「ハイラル平原で馬に乗りながら、ゼルダと協力して光の矢を当てる」、トワイライトプリンセスをオマージュしたかのような展開!!ここは割とイベント戦な風味がありますが、広大なハイラル平原にあってなお威容を誇るガノンの姿や壮大かつ美しいBGMの威力で否応なしにテンション上がってしまうんだよな…。トワプリ最終決戦はシリーズでも随一に好きなのでここは本当に涙腺が駄目になるかと思った。

ここまで書きましたが、実は私が気に入ってるキャラクターってハイラル王なんですよね。ゼルダに父親として優しく接したいが王である以上は巫女の力に目覚めさせなければいけない…というままならない面が好きというのもありますが、それ以上に彼の役回りが理由に挙げられます。
序盤で登場し、始まりの台地で目覚めたリンクに100年前なにが起こったのかを教え、空中を滑空できる「パラセール」を渡して彼の亡霊は消えます。回想で登場こそするものの、ここで本作における彼の出番は終わりです。ここまでがチュートリアルで、このイベントを経て初めてリンクは外の世界に歩みだす。
ところでハイラル王といえば何が思い浮かびますか?私はそう、風のタクトに登場した「赤獅子の王」です。ハイラル王が姿を変えた船である赤獅子と帆、そしてタクトがあればどこまでも海を駆けて行けたし、数奇な運命に導かれ太古からの因縁を断ち切ったリンク達を最後には遥か彼方の世界に向けて背を押してくれた。
リンクとガノンに時を越えた因縁があるように、ハイラル王も運命に導かれるようにリンクに世界の命運を託して広いハイラルの地へ送り出す、再話の如き道を選ぶのです。奇しくも「帆(セイル)」の名を冠するアイテムと共に世界を巡る旅路は、あの日別れた赤獅子の王との航海の続きのようでした。



「出会いがあれば必ず別れは訪れるもの。ですが その別れは永遠ではないはず…。別れが永遠になるか 一時になるか…それはアナタしだい」そう言って去っていったのはムジュラに登場したお面屋でした。
ゼルダシリーズの特徴として、私は「相棒との別離」が挙げられると思っています。妖精ナビィ、チャットや赤獅子の王、ミドナにラインバック船長と、全ての作品をプレイしたわけではないですが多くの作品ではリンクと共に冒険をしてきた相棒やナビゲートキャラとの別れが最後に描かれます。
ブレスオブザワイルドには共に冒険する仲間はおらず、シーカーストーンに記録された思い出だけを携えてリンクは一人で戦ってきた。しかし、エンディングにてゼルダは語ります。

「私は……ずっと見守って来ました。貴方の運命も苦難も……戦いも」

傍らに姿は見えずともゼルダの意思は共にあった。そして彼女との記憶に導かれるように辿った旅路の果てに「再会」し、100年という長い一時は終わりを告げる。スタッフロールの後で描かれる失われたものへの哀悼とまだ見ぬ未来への希望は、過去作のオマージュをふんだんに用いたからこそより輝かしいと思うのでした。

おわりに

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そんなこんなで久しぶりのゼルダ、久しぶりのオープンワールドゲーでしたが自分でも驚くほど楽しんでしまいました。プレイする前は「シミュレーションでもないのに武器や盾を使用して壊れるのはちょっと…」とか敬遠していたのが嘘のようにのめり込んだし、実を言えば4人リの英ー傑がバめちゃルめちゃいいとか、戦闘の組み立てから自由度が高いとかトゥーン調のキャラクターと美しい自然のグラフィックとの調和が凄いとか語りたい部分はいくらでもあるのですが、キリがなくなるのでこの辺で。

改めて素晴らしい作品だったし、良いシリーズだよなぁ…。3DSを手放して久しいものの、時オカとかムジュラあたりをやり直したくなってきちゃいますね。







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天空に浮かぶ島「スカイロフト」を舞台にマスターソードの起源が語られる、Nintendo Switch用ソフト「ゼルダの伝説 スカイウォードソードHD」は2021年7月16日発売!7月16日発売です!!!!

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