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【ボイスドラマ感想】幕末新選組ボイスドラマ「満天-青天を歩け2-」/エルエル


小説や映画に限らず、マンガやゲームなどの娯楽文化に触れていて、一度も「新選組」をテーマに用いた作品に出会うことなく生きてくることは不可能ではないか(※要出典)と思えるほどに新選組はメジャーな題材ではありますが、実のところ私はほぼ受動喫煙レベルの知識しかなかったりします。

いや悲運の天才剣士・沖田総司や鬼の副長・土方歳三といった要素とか、池田屋事件や五稜郭の戦いなどの有名どころなエピソードを知ってはいるのですが、これを以て「知ってる」などというのはファンの方からしたら浅瀬でちゃぷちゃぷどころか「海に入らずに海の家で妙にわかめが入ったラーメン食べて帰るのを海水浴と呼ぶ」級の蛮行もいいところですからね…!(恥ずかしながら五稜郭の戦いの顛末なんてF○Oとかアニメ刀○乱舞で初めて知ったレベルだし……)

そんな自分でも、前作に引き続いて「満天-青天を歩け2-」はかなり面白かった~~!!と感じたし、視聴後にどこか爽やかな後味を残す感覚も前作に引けを取らないものがありました。

(販売ページはこちら→ https://booth.pm/ja/items/361232

新選組の前身となる「浪士組」として江戸を旅立つことになった試衛館食客たち。
将軍を警護するために京へ向かう…
誰もがこれから始まる日々に期待するなか、出発を三日後に控えた夜、近藤はある決断をする。
これは、彼らが旅立つ前の三日間のお話である。(販売ページから引用)

前作「青天を歩け」もそうでしたが、題材にする時期が渋いなぁと感じました。前作は池田屋事件の頃に過去を回想する形式だったのに対して今作ではラストで最後の戦争に臨む土方が描かれますが、両作ともに新選組の前身どころか「原点」に位置する試衛館時代がメインなんですよね。

確かに新選組のパブリックイメージは「浅黄色の羽織で京の町を~」のようなところがありますが、幕末という激動の時代において誠の旗を掲げその手を血で染めていく彼らにとって、先の見えない未来を前にして迷い惑いつつも自らの意志で進む道を征く青春じみた時代はここだったのだろうなと思わせる質感が心地よかったです。

「晴天を歩け」のブックレットにて「新選組を作った礎は、この身分に阻まれて鬱積した試衛館時代の気持ちなのではないかと思っています。」と記載されていたように、ままならぬことに対して挫折し藻掻きながら明日を夢見て歩もうとする姿が大変趣深くて良いものでしたね……。


さて本編の感想ですが、とにかくメインとなる沖田総司役・杉原明さんと土方歳三役・成海修司さんの演技が前作に引き続きめちゃめちゃ良かった…!

どこか儚げで凛としつつ、幼さや葛藤が滲み出る若々しさはまさしく沖田といった雰囲気にぴったりとハマっていましたし、終盤において迷いを断ち切った清々しさが素晴らしい。
土方は土方で、落ち着き払った声色でぶっきらぼうに非情な言葉を吐きながらも誰もいないところで迷いを零すところの微妙な緩急だったり、こちらも終盤で過去を回想しているところの渋さがとても好きな演じ方でした。

口減らしで試衛館に身を預けられた過去を持つからこそ皆と共に京へ行くことを強烈に望む沖田と、沖田の未来を思うからこそ突き放そうとする土方のすれ違いによる葛藤は王道の展開にも思えますが、二人の演技がそれをよりエモーショナルに彩っていたからこそ胸に迫るものがあります。

試衛館の食客たちも時に騒ぎ、未来を夢見て心躍ったりと確かに試衛館に息づいていたような感覚を肌で感じたし、掛け合いから志を共にする者たちの連帯感や繋がりを感じていいんですよね(キャストコメントで小狼さんが山南は前作は参謀ポジションだったけど今作ではわくわくしてる旨を言ってて笑った)

また、今作で初登場となる「斉藤一」もいしさんの演技がとても格好良かった!クールで底知れない雰囲気の中でも熱い魂を秘めているのがセリフだけでなく息づかいからも伝わってくるようだったし、沖田との絡みが多かったのもあって準主役といった感じでしたね。

それとおりんちゃんも好き。健気オブ健気。こういうキャラが年々好きになってるんだよな…


好きなシーンはいくつもありますが、一番は本作のラスト、函館戦争の只中にいる土方の孤独な述懐でしょうか。胸を張って生きると青空の下で誓った試衛館時代の仲間はもう傍らにおらず、満天の星空が広がる雪国で今は一人。「土方さんが選んだ道が正しいか」と沖田が占った大吉のおみくじを持ち続けていたのは、沖田から背を押された勇気かはたまた呪いなのか。いずれにしても、土方が昔と変わらず己の在り方を貫いた果ての物悲しさと一種の美しさが凝縮されていて、思わず感じ入るものがありましたね…。

あとジャケットもいいんですよね。キャラクターたちの生き生きとした表情もさることながら、タイトルにもなっている晴天をバックにして下部に白いダンダラ模様があるのが、彼らが後に浅黄色の羽織を纏った新選組になる運命と重なっててデザインセンス~~~~~!!と無限に頷いてしまった。



最終作はまだソフト化されていないようだけど、サイトで視聴できるようなのでこれを機に聴いていきたいなぁ。そしていつかちゃんと新選組を履修しよう……!と思い直すのでした。(実際、どういう作品から入るのがいいんですかね??)

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