愛すべき2人と私

Creepy Nutsが好きなので彼らについて書きます。私が彼らのことを知り始めた時のことと、それから今のことを、とてもざっくりと。ラフに。

言わずもがなですがCreepy Nutsは1MC1DJのHIPHOPユニットです。ラッパーR-指定とDJ 松永の二人組。その称号は日本一と世界一、日本人へのHIPHOPの間口を大いに広げたふたりです。
Creepy Nuts、1年以上前から好きで、Twitterの(ほぼ)専用アカウントも持ってるんだけど、好きになった経緯を詳しく話したことはなかったかもしれません。きっかけは実は、とあるお笑い芸人さんのラジオ。とある、って隠す必要もないか。四千頭身です。
四千頭身のラジオ「四千ミルク」には、当時(最近聞いてないので今もあるのかはわかんない)曲クイズというコーナーがありました。3人が一曲ずつ選曲してかけるんだけど、誰が選んだのかは明かされなくて、生放送中にメールで「この曲はつづちゃんでこれはごたで、これがバシくん!」とか誰がどれを選んだのかを送って、放送の最後に正解発表。その正答率で確かノベルティが送られたりするんだったかな?とにかくそんなコーナーがあったのです。
私は漫才のとき右側にいる石橋くん(=バシくん)が特にお気に入りで、あんなにお顔が整っているのに童貞!奥手!あらまあかわいい!とか好ましく思っておりました。バシくんはどんな曲をかけるのだろうワクワク、と毎週聴いていたのですが、2020年1月のとある回で、誰かがCreepy Nutsの「たりないふたり」をかけたんですよ。その歌詞がまあ、今まで聞いたことない感じで。「女の子が怖い、てか普通に目見れない ようしゃべらん どもって情緒不安定 誠に申し訳ない」とか言ってるんです。何それ!女の子が怖いってバシくんじゃん!と思いました。まあ選曲したのはほんとにバシくんだったんですけど。
大好きなバシくんが選んだ曲というのもあって、私はその「たりないふたり」という曲に惹かれてしまいました。「こちら、たりないふたり」とか言っているくせにめちゃくちゃカッコいいんです。たりない、と自嘲しつつ、俺たちはちゃんとここにいるとも言っているような気がして、惚れ惚れしました。こんな音楽ってあるんだと思いました。Creepy Nutsという名前を聞いたことなかったわけじゃなかったけど、そのことがあって初めて真面目に曲を聴きました。まずはYouTubeの公式チャンネルであがっているMVから。そこでおふたりの風貌を知って、次第に松永さんにご執心といった感じになっていきます。

それまで HIPHOPという文化にひとつも触れてこなかった私、YouTubeで曲を聴きながら、全くわかんない言葉がたくさん出てくることに気がついてきました。バース?サッカーMC?スピット?言葉がわからないと歌詞の意味も碌にわかりません。クラシックかかっても頭振らないのはクラシックだからではないの…?とか。そこで、これはきっとHIPHOP用語なんだ!とワードを検索しながら歌詞を見ていきました。そうしたら歌詞の技巧がとんでもないことになってることを知ったんです。入り組んだダブルミーニングに始まり、Rさんお得意の数をカウントするバース、多方面からのサンプリング、などなど。日本語ラップ、おもしれえ!と感動した瞬間です。

DJなんてのもそれまで全く見たことがなかったので、凄さを知るまでにかなり時間がかかりました。何やってるかわかんないけどすげえ、とだけ思っていました。かなり後になってからだけど、関ジャムでスクラッチの細かい技のことを解説する松永さんを見て、そんなに複雑なことをああも簡単そうにしかも見栄え良く、しかもミスなくこなしてるのかこの男は!と思いました。レコードを手前奥にズクズク動かしてるだけだと思っていたんです、スクラッチ。でも全然そんなことありませんでした。今までこの人の凄さを知った気になっていただけだったのかと恥ずかしくなったのを覚えています。

それからなんといってもラジオ。オールナイトニッポン0です。この人たちこんなにおもしろいのか……と衝撃を受けました。私が初めて聞いたのは確か、ラッパーは2年体の関係を持たなかったら免許更新しないといけない云々の回でしたね。ヒドかったけど、でも新しくて楽しい世界でした。

それまでそんなふうに楽曲もラジオもしつこく追いかける対象を見つけられていなかった私にとって、彼らの存在はすぐ虜になるに足るものでした。ラジオをやっているから毎週新しい姿を見て(オールナイトニッポン0には映像の同時生配信があるのです)、新しい声を聞ける、というのも大きかった。ちょうど私が好きになったタイミングでテレビにもよく出るようになって、「射程圏内っちゃ圏内 圏外っちゃ圏外」と言ってたMステに2回も出て、素晴らしい楽曲をいっぱい生んで、そうやってどんどん大きくなっていく彼らの歴史の立ち会い人でいられることは、今の私の大きな喜びです。

HIPHOPはラッパーの人生の投影だ、というようなことを、Rさんはよく言います。自身の人生で起こったことをそのまま歌詞に乗せて、そのときに思っていたことを歌に残せる。だからこそ聞き手にはより響くし、作り手も後になって昔の曲を聞き返したとき「あの時俺こんなこと思ってたんやな」と思い出すことができると。歌詞にはRさんのその時の思いが詰め込まれています。心の弱い部分や暗い部分が、そのまま。そして松永さんは、ラジオやエッセイで、ご本人の人間性を嘘みたいに生々しく語ってくれます。見てられない、恥ずかしいとこちらが思うくらい。悔しくて恥ずかしくて何もなくてどうしようもなくて、でもHIPHOPがあって救われたと、彼は世界一のくせにそんなことを私たちに教えてくれる。そんな2人の人間臭さが私は好きです。人間臭いところをこちらに見せてくれる、その誠実さが好きです。

かつて「たりないふたり」だった彼らが、今や「俺の天賦の才がバレる!」と歌い上げて堂々としている。人間って変わっていくんだなあ、と当たり前のことを、しみじみと感じさせてくれるのもまた彼らです。

皆さんぜひ、Creepy Nutsの音楽を聴いてくださいね。確かな才能と確かな努力に裏付けられた力を持った曲たちです。

Rさんの犬みたいなかわいさと松永さんの進化し続けるビジュアルについても触れたいのはやまやまなのですが、本人たちがあまり喜ばないだろうし、もう随分書いたし、このへんにしておきましょうかね。ラフに書くつもりだったのに熱く語ってしまいました、お恥ずかしい。


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