コンビニ


引っ越しをして、とは言ってもx座標がちょっとマイナスに行っただけの小さな移動なんだけど、よく行くコンビニが変わった。駅の近くのセブンイレブンから、家の近くのローソンになった。
以前よく行ってたセブンには、ほんとうにしっかりとよく行っていて、ごはん作るのがめんどくさくなるとすぐラーメンとかパスタとかを買っていたし、バイト帰りにヤケでお菓子を大量に買ったりもした。店員さんに顔を覚えられていたと思うし、わたしもしっかり店員さんの顔を覚えている。いろいろあって最近のわたしのテーマは「恩返し」になっているので、お世話になりましたの気持ちを込めて今日、家に帰る途中でそのセブンに寄ることにした。

結構吟味して、晩ごはんのねぎ塩焼きそばとおやつのスコーンを持って店奥のほうのレジに並ぶ。床に「ここに並んでくださいね」のマークがあるのが奥側だからそうするのだけど、そのマークがあるのがちょっとわかりにくいので、お客さんの目線が届きやすいレジ横にも「奥側のレジからお並びください」とていねいに書いてある。

奥のレジは会計がまだかかりそうで、手前のレジが先に空いた。と思ったら、すかさず手前のレジに商品を置いた人がいた。海外からの観光客の家族連れ。ここに並んでね、のマークも注意書きもたぶん読めなかったのだろう。結果としてはわたしの前に横入りしたことになった。手前レジの女の子は見たことないバイトさんで、わたしが先に並んでいるのを気にしてあたふたしていたので、ぜんぜん気にしてないですよ、という顔をしておく。女の子はなんとか並び直してもらおうとしていたけれど、英語で「先に並んでいる人がいますので並びなおしてください」を伝えることをあきらめたようで、まだ少しこちらを気にしながらも、お会計を始めようとしていた。

そこで、その観光客がレジの女の子の目線に気づいた。こちらを見て、列ができているのを把握した観光客は、あっ、しまった、といった様子で申し訳なさそうに小さく何度か礼をしながら、商品を持って列の後ろに向かった。先頭にいるわたしのわきを通る時に「ソーリー」と言ってくれもしたので、なんて優しい人、と思ってほっこりした気持ちになりわたしも「センキュー」と返した。ソーリーにセンキューと返すのが正しいかわかんないけど。レジの女の子はとってもにこやかに、その人にお礼を言って、わたしに対してもとってもにこやかに、「お待たせしました、お預かりします」と目を見て言ってくれた。ほんの些細なことだけど、先に並んでいたからとわたしのことを気にかけてくれていた女の子の気持ちが本当に嬉しくて、わたしも心から「ありがとうございます」と言った。お会計が終わったときも、お互いに心から「ありがとうございます」と言い合って、わたしはお店をあとにしたのだった。

いつだって人に優しくありたいなあと思う出来事だった。こんな小さなことだけど、こんなことで人間を少し好きになる。わたしが言った「センキュー」が、あの観光客の人のなかにしばらく残っていたらいいなと思う。レジの女の子のなかにも、列に並び直したすてきなお客さんがいたことと、そのすてきさに触れて嬉しくなったわたしと「お待たせしました」「ありがとうございます」のやり取りをしたことが、ちょっといいこととして残ってくれていたらいいなと思う。また近いうちにあのセブンに行くことにした。

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