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童話

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自作童話ですが、習作です。上手くなるためには書くしかなく、投稿生活を乗り切るための土台となる作品を集めました。未熟なものもありますが、ご一読いただければ嬉しいです。
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#きつねのこん太

童話習作『こん太と赤いバラ』後編

 森に戻ったこん太は、友達のクマ、くま太にバラのことを話しました。 「ぼくもバラの言ってることはひどいと思うよ。でもね……」とくま太は少し考えてから続けました。「野原の花はたくさんいるよね。バラはどう? 一人で咲いてるんだろう? もしかしたら寂しいのかもしれないね」 「でも、だからといって誰かを悪く言ってはいけないと思うんだ」 「もちろんそうさ。でも何か理由があるのかもしれない」 「うーん。そうなのかなぁ」  くま太にそう言われて、こん太はバラのことが分からなくなりました。

童話習作『こん太と赤いバラ』前編

 森に春が来ました。木々も草も緑です。晴れた空をゆるやかに風が通り抜けます。きつねのこん太は巣穴から出てきて、大きくのびをしました。 「ああ、春の匂いだなぁ」  鳥たちの歌が聞こえます。こん太は散歩することにしました。気持ちがいいので、巣穴でじっとなんかしていられません。  冬の間は遠くまで出かけることはなかったので、森に来てまだ日の浅いこん太は奥の方まで探検しようと思いました。 「へぇ、こんな素敵な場所があったんだ」  木々の間を抜けてパッと視界が広がり、まぶしい太陽の光が

童話習作『こん太のクリスマス』

 キツネのこん太は、巣穴から顏を出しました。 「うわぁ、たくさん降ったんだな。どうりで寒かったはずだよ」  森の木も、地面もまっ白な雪に覆われています。森に来て初めての冬です。  白い雪の上を、まっ黒な動物が歩いてきます。きょろきょろと何かを探しているようです。 「あっ、くま太くんだ。おーい」  こん太は巣穴から出て走っていきました。 「やぁ、こん太くん。どうかしたの?」 「雪がたくさん積もってるから、一緒に遊ぼうと思って」 「もうすぐ冬眠するから、たくさん食べておかないとい