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童話

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自作童話ですが、習作です。上手くなるためには書くしかなく、投稿生活を乗り切るための土台となる作品を集めました。未熟なものもありますが、ご一読いただければ嬉しいです。
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2023年1月の記事一覧

童話習作『ひとつぶの雪』

 外は雨が降っています。窓を少しだけ開けてみると、北風のびゅーびゅーという音も聞こえました。  たかし君は窓を閉めると、玄関に走っていって、表に飛び出していきました。ママはびっくり。あわててジャンパーを持って、あとを追いかけます。  ママが外に出てみると、たかし君は手の平をおわんの形にして、あちら、こちらと走りながら、雨を受けとめていました。 「カゼひくでしょ」と、ママはたかし君にジャンパーをはおると、家の中につれて入りました。  ぬれた頭をタオルでふいてもらいながら、たかし

童話習作『こん太と赤いバラ』後編

 森に戻ったこん太は、友達のクマ、くま太にバラのことを話しました。 「ぼくもバラの言ってることはひどいと思うよ。でもね……」とくま太は少し考えてから続けました。「野原の花はたくさんいるよね。バラはどう? 一人で咲いてるんだろう? もしかしたら寂しいのかもしれないね」 「でも、だからといって誰かを悪く言ってはいけないと思うんだ」 「もちろんそうさ。でも何か理由があるのかもしれない」 「うーん。そうなのかなぁ」  くま太にそう言われて、こん太はバラのことが分からなくなりました。

童話習作『こん太と赤いバラ』前編

 森に春が来ました。木々も草も緑です。晴れた空をゆるやかに風が通り抜けます。きつねのこん太は巣穴から出てきて、大きくのびをしました。 「ああ、春の匂いだなぁ」  鳥たちの歌が聞こえます。こん太は散歩することにしました。気持ちがいいので、巣穴でじっとなんかしていられません。  冬の間は遠くまで出かけることはなかったので、森に来てまだ日の浅いこん太は奥の方まで探検しようと思いました。 「へぇ、こんな素敵な場所があったんだ」  木々の間を抜けてパッと視界が広がり、まぶしい太陽の光が