参院選後の岸田内閣改造

Ⅰ. 2022参議院選挙:結果とその意味

ー参議院選挙、無事実施
・今回、22.7.10.の参議院選挙は、直前の7.8.安倍晋三元首相が凶弾に斃れて死去するという想像も及ばない大事件が起き、混乱も懸念されたが、7.10.の投開票は、何事もなく整然と実施。
・7.8.の発泡暗殺事件の直後、岸田首相はじめ自民党幹部は急遽党本部に戻り、今後の対応を協議した模様。岸田首相は、”卑劣な暴力に屈しない民主主義を貫こう”と呼びかけ、それを証明するのは予定通り、投開票を実行すること、という合意を確認して7.10.の投開票が実施された。

ー安倍首相逝去の報道は海外の方がむしろ世界的損失と悼んだ
・安倍首相の暗殺は、国民に大きな衝撃を与え、メディアは安倍氏の偉大な政治的足跡を伝え、同時に、犯人についての報道に時間を割いた。
・海外諸国の政治指導者やメディアがこぞって、安倍氏の死去を悼み、それが世界にとっていかに大きな損失であったかを尊敬を込めて力説していたことが日本にくらべ印象的だった。

ー参議院選挙結果
・投票率は52.16%。有権者は1.0543億人 5499万人投票。
 期日前投票1961万人、有権者の18.6%。
・参議院議員定数 124。与党119+27=146

           新勢力  増減  当選者  改選   
   自民党        119     +7      63    55
   立憲民主     38   -7      16     23
         公明党             27    -1      13      14
   維新の会     21            +5           12      6
   共産党      11            -2             4       6
   国民民主     10            -3            5     7

 ・自民党大勝:改選55を8上回る63議席。改選総数125を単独で過半数。
 ・与党=自民党+公明党=146。改選124を22議席上回る。
 ・憲法改正発議議員数:119+27+21+10=177は議員定数248の71.3%。
   248議席の2/3=66%(149)を大きく上回る。

 ・維新の会伸長:改選6議席を倍増12議席。
 ・旧民主系野党減少:立憲民主はー7。国民民主は-3。

ー迎える”黄金の3年”2022~2025
・参議院選挙は次の半数改選が2025. その3年間は衆議院解散選挙でもなくば大型選挙なし。
・与党は、選挙を心配せずに国政に専念できる。”黄金の3年間”
・そのスタートで、自民単独過半数、与党+アルファで憲法改正発議必要数149を超える177確保
・岸田政権(自民党+公明党=与党)が、この貴重な期間に何をするかで日本の将来が決まる。

Ⅱ. 「黄金の3年間」に何を為すべきか

・「黄金の3年間」になにをすべきか、課題を提案したい。

ー物価高、コロナ対策
・岸田首相は目前の課題として物価高への対応、コロナ対策を重視。
・世界資源高、円安による輸入物価の上昇などもあり、物価高は国民の生活を直撃。
・物価高を抑制するため岸田内閣は、5兆円の予備費を補助金に使おうとしているようだが愚策。
・価格上昇を技術革新や経営戦略で克服するイノベーション立国をめざすべき。
・コロナ対策は意思決定と指揮命令系統を一本化するために「感染症危機管理庁」を内閣官房に設置し、専門家の能力を生かすためには「日本版CDC」を設立するという。早い実現を望む。

ー安全保障
・2021.4.16の菅ーバイデン会談以来、日本は台湾問題に米国中心の中国包囲戦略に深く参加
・2022.5.の岸田ーバイデン会談で、岸田首相は日本の防衛費の相当な増額を国際公約した。
・GDP比1%の防衛費を5年で倍増(2%)する計画だが、その中身はこれから詰める?
・防衛費は本来、防衛の中味が決まってから決まるもの。ミサイル攻撃への迎撃力や反撃力など題目が並ぶが、中味は?年末までに詰めるというが中味を描けるのか。
・戦略と中味のある「国家安全保障戦略」「防衛計画大綱」「中期防衛力整備計画」ができるか?

ーエネルギー政策
・21.10.閣議決定した「新エネ基本計画」は18%の再エネを30年に36~38%、6%しかない原発を20~22%へ、など矛盾だらけ。
・日本の電力供給体制は気温が数度上昇するだけで需要を満たせない危険な状況。サハリン2の権益喪失すると本当に危機。
・安全小型の原発利用、太陽光、風力、地熱、バイオマスなど再エネ立国への徹底構造改革を。

ー食糧政策
・ロシアの侵略でウクライナ穀物が輸出されず、穀物入手難諸国の調達努力はやがて日本の調達網とぶつかる。日本はこれまで海外調達を優先してきたので、国内供給体制が脆弱。農業者は高齢化、農地は細分化。食糧の基本的自給構造めざして土地制度改革、AI, Robot, Droneなど技術を活用した自由体制確立を

ー社会保障改革
・21年度の社会保障費130兆円、40年度には190兆円。他方、労働力人口は25年→40年で
 1000万人超減少。社会保障給付と受容の世代間格差縮小の大改革実行せよ。

ーDX戦略
 ・中央、地方、市区町村で仕様が異なり、一気通貫のDXを妨げている。官邸主導の強力な構造とシステム改革で民間大企業と同様のDX社会を構築する。

ー日中国交回復50年(22.9)に向け対米盲従でなく、日本独自の国際戦略構築を。

Ⅲ. 不人気だった内閣改造

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島田晴雄が世界情勢を語る「しまはる塾」でお伝えしている様々な事象を、さらに詳しくペーパーで解説します。次から次へと”玉手箱”を開いて参りま…

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