「新エネルギー基本計画の難点」

*このエッセイの内容は、私のnote「耳で聴くしまはる塾」と重なる部分がありますが、聴くだけでは数字や事実をフォローしきれない部分もあるかと思いますので、あらためて眼で読めるように書きました。「耳で聴くしまはる塾」とあわせてご活用戴ければと思います。

1. はじめに 

このほど、新しいエネルギー基本計画が策定されました。これは日本のこれからすくなくとも3年間のエネルギー政策の基本となるもので、日本政府や産業界にとっても極めて重要な指針となると同時に、今年10月末にイギリスのグラスゴーで開催されるCOP26 (国連気候変動枠組み条約締結国会議)での国際協議と協力にとっても重要な意味をもつので、その内容について紹介し、問題点を指摘したいと思います。

このエネルギー基本計画は、日本が世界の多くの国々と協力して進める温暖化対策の計画の基礎ともなるので、非常に重要な計画ですが、今回の計画は、菅首相が今年の4月22日にバイデン大統領の呼びかけで、Web開催された世界気候変動会議に合わせて決断した、2013年比で、2030年には温暖化ガスを46%削減するという宣言を、所与として計画全体を組み直すという、いわば政治主導の辻褄合わせの性格があります。

その結果、かなり無理な前提で計画が作成されている面もあり、政府内の調整もかならずしも十分ではなく、グラスゴーのCOP26では、世界の専門家から見ると、実現性に疑問が持たれる可能性もあり、世界を挙げた国際協力で日本の信用が問われる面もありうるのではないかいささか危惧もあるので、そうした問題や可能性を、読者の皆様と一緒に考えたいと思います。

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