ガスの脱ロシア、EUの現実

1.EUへの批判と欧州委員会の計画

ーEUはガスで脱ロシアができるか?
ロシアのウクライナ侵攻をうけて、ロシアのガス供給への依存度の高いEUではガス輸入を制限もしくは停止すべきでは、との議論、世論が高まった。

とりわけドイツは輸入ガスの4割をロシアに依存。しかもドイツはロシアからのガス輸入は長年効率の高いパイプラインでの輸入に頼っていた。

これを停止することは、消費者に冬の暖房を停止、産業に基本エネルギーを遮断することになり、ダメージが大きすぎる。

欧州はロシアの石炭、石油にも依存。石炭や石油は停止しても他に代替が可能。ガスは困難。

しかし、3月末、キーウ包囲作戦から露軍が撤収したキーウ近郊で、数百人の民間人が惨殺された状況が米欧メディアで報道され、EUの世論が大きく変化。

戦争犯罪をしているプーチンロシアからガスを買って戦費の足しにさせることは慎むべきだとの世論が優勢になり、ロシアへの依存の深いドイツのショルツ首相も命綱のガスについてもできるだけ早期にロシア依存を削減する決断を表明した。

しかし、実際に、ロシアに輸入の4割も依存しているガスを削減することは代替のガスやエネルギーをどこからどう調達し、どう配分するのかなど、現実的には非常に困難で複雑な問題を解決する必要がある。

以下、EUが直面するそうした難問の具体像について、Financial Timesの特集記事(2022月4月20日)に依りながら整理して考えることにしたい。

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