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アジカンがOasisに憧れたように

長蛇の列ができていた。寒空の下、パブの地下に設けられたライブハウスに向かって多くの人が列を成している。

遥々とロンドンまで東京からやってきたASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアン・カンフー・ジェネレーション)をみるために、色んな国からやってきた顔が並ぶ。

私の前にはフランス語を話すカップル、後ろに続くのはスペイン語を話すグループ。先の見えないこの長い列はきっとバンドメンバーの目には写っていない。

アジカンと略されるそのバンドを私が真剣に聴き始めたのは、恐らく2012年。ベスト盤が発表されて、ふむふむこういう人達なのか、と思いながら聴いていた。

初めてライブに行ったのは、2015年。名古屋公演のチケットが売り切れてしまったので、岐阜に行った。きっと最初で最後の生で見れるアジカンだろう、とそのときはなんとなく思っていた。写真がInstagramに残っている。どの曲かは忘れてしまったが、数曲だけ撮影が許可されていた。

2019年11月24日。まさかこんな日が訪れるとは思っていなかった。ロンドンでアジカンを観ることになる。

当日になって、彼らについて何も知らないことに気づきWikipediaを開いた。日本語版だけでなく英語版ページが存在している。

このページの背景には彼らを何年も追いかけているファンがいるのだろうか。Wikipediaの信憑性には疑問符がつくが、私は自分の好きなバンドのファンを信じている。そこにロジックはもちろん無い。

 Wikipediaによると、アジカンが結成されたのは1996年。メンバーは結成当時、UKロックのファンであった。バンド名は海外の人が聞いて驚くような名前としてつけたそうだ。

ページを読み進めると、ボーカル後藤さんのルーツとなる曲はUKバンドOasisの『Live Forever』だとの記述もある。

もしかして今日は、ここに並んでいるファンだけではなく、アジカンにとっても特別な日なのかもしれないなあ、とiPhoneの画面を眺めながら思った。

チケットを確認されて、会場に入ってもライブはなかなか始まらなかった。「こんなに待ったのは初めてかもしれない。」と英語でぼやくのが聞こえた。待ち遠しいんだ、皆んな。

たまに誰かが何かを叫んだり、ざわざわと話し声が続くなか、ライトが落ちてメンバーが登場した。

新しいアルバムにある数曲をまずは演奏する。聞き慣れたメロディに、安定した歌声。いつもはイヤホンから流れてくるリズムが、目の前で作られていく姿に感極まった。

音に合わせて飛び跳ねて、歌詞を口ずさんでいたら、何だか有難い気持ちでいっぱいになった。

この景色を見れるのは、彼らの音楽が世界に通用するものだから。そこまで到達するには、相当な努力や音楽に対する思いが必要なんだろうな、と勝手ながら思った。

そして、その領域に到達した彼らに感謝した。肌で音を感じることで、パワーが直に伝わる。私ももっと生きるのに必死になりたい。

曲の合間のトークでOasisの話になった。Oasisをテレビでみていたゴッチ(ボーカル後藤さん)は、すごいと感じたと同時に「簡単じゃん」とも思ったらしい。

私は楽器に関しては無知なので、何が簡単で何が難しいのかは分からない。でも簡単だ、って言い切ってしまうってことはきっと簡単なんだろう。誰にとっても「夢」は遠くにあるものと感じるけれど、「簡単じゃん」の積み重ねで誰しもいつかは到達できるのかも知れない、とも思った。

「簡単かんたん」と言いながらゴッチはOasisのWonderwall (だったと思う)を演奏し始めた。そのまま、その曲の一節を会場の皆んなで合唱した。メロディを認識できても歌詞が分からない私は、口をモゴモゴさせながら「家に帰ったら一度聴いてみよう」と心に誓った。こうやって文化は継承されていく。

ライブ終了後の物販で、物を買わないことで定評のある自称ミニマリストの私が、キャップを買った。これからロンドンはもっと寒くなるというのに、ペラペラで防寒の「ぼ」の字もない、キャップだ。でもめちゃくちゃカッコイイ。

衝動的に何か買わなくてはいけないと思ったのは、微力ながら応援したくなったからだ。ロンドンで彼らが演奏するのは3回目(?)らしいが、毎年のように来て欲しい。

また次いつ来てくれるのか、私がそのときここに居るかも分からないけど。でも、パワーをくれた彼らの応援をしたい。

"はじまったばかり We've got nothing."

『ボーイズ アンド ガールズ』と題されたその曲の一節を誰かの心に向かって叫ぶように演奏する彼らが目に焼きついている。

まだ、始まったばかりなのだ。

アジカンがOasisに憧れて夢を叶えていったように、私も憧れた誰かの作品を広めながら自分の小さな夢たちを叶えていこうと思った。


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ハルノ
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