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#13 だから頑張れる

いつものように、私は聞いて欲しいことがあると、友人Hの家に行きとにかく喋りまくる。
友人Hは、梅干し用のもみしそを混ぜながら話を聞いてくれている。そしていつもさりげなく引き出しから美味しいものを素敵なお皿に乗せて、美味しいお茶を淹れてくれる。「このお菓子食べてみて」それは見ただけで美味しそうな可愛らしい花の形のパイ。真ん中にはクリームがちょこんと乗っかっている。なかなか開かない切り口をハサミでチョキリ。バターの甘い香りが飛び出す。めいっぱいその香りを吸い込みながらお花を齧る私。「美味しい。」パッケージも可愛らしすぎるし美味しすぎる。こんな美味しいパイをさりげなく手土産に持っていく彼女は素敵。そうこうしているうちに、友人Rが皆のために大量に購入してくれたころもちを持ってお茶会に合流。私が愛して止まないころもち。どうして小包装だけになってしまったの?是非大袋の製造の再開を心から切望致します。
私達は、日頃の思い通りにいかない子どもへの苛立ちや、夫との喧嘩、ぶつけようのない不満を水道の蛇口を捻るように順に吐き出す。友人Hはたいてい聞き役になってくれて、「気にせんとき」とさらりと言ってくれる。この一言にこれまで私はどれだけ救われたのだろうか。持つべきものは友。
私は最近とある出来事があって以来、少しでもやりたいと思ったことは全てやることに決めている。子どもにも家族にも遠慮せずにやりたいことを自分のためにする。後悔しないために。生きているうちにできること。それは友だちと会う、何かを見に行く、など決して大きなことではないけれど、今しておかないとタイミングを逃してしまうかもしれない、私にとっては大切なこと。友人Hは3年前に母(あーちゃん)を亡くしている。私達の集まりにはいつも同じように席を並べてお酒を飲みながら大笑いしながら楽しい食事を共にしていたあーちゃん。ある時は庭に咲いた数々のお花を帰りに包んで持たせてくれ、ある時はそれはそれは美味しいローストビーフを作り大皿にどーんと並べてくれました。我が息子は幼少の頃に食べたその味を今でも覚えているくらい料理の腕前も素晴らしかった。
色々な話をしながら私が最近気になっていたことを口にする。「人って死んだら魂はどこにいくんやろ?」天なのか、はたまた普通に地上に残ったままなのか。「私の想像では空の上にあるようなかんじなんやけど…。」
すると友人Hは、「思った時は、このへんにいてくれてると思うねん。近くでいつもみててくれてると思ってるから今日も頑張ったよー、とか話しかけてる。そう思ってる方が頑張れるねん」
その言葉を聞いた時に、私の心の中からこみあげてくる何か。そうか、遠くじゃなくて近くにいてくれてるんや、なんて心強いんやろ。友人Hはそう思いながら日々を暮らしていたんやな。
私たちは、愚痴やらくだらない芸能人の話をしながら、それはそれは深い話までして、「あー夕飯何にしよう?」と言いながらテーブルを立ち、皆それぞれの家に帰ったのであった。もちろん、あーちゃんがしてくれたように庭に咲いていた「谷渡りの木」のふわふわの花をくるりと巻いてお土産に持たせてくれました。

#薫るバター
#谷渡りの木

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