見出し画像

#9 声

私が高校1年生の時、母が体調を崩し実家で療養するために帰っていた時期があった。半年位だったと思う。月に1度位、母から電話がかかってきて、その電話越しから聞こえる声を思い出す時、今でもなんともいえない気持ちになる。「みんな元気か?」そう聞かれ、「うん」と答える声が、言葉に詰まり涙が溢れ出そうになるのを、堪えながら気付かれないように返事したのを覚えている。電話越しに聞こえてくる声は、蚊の泣くような小さな声で、電話も昔の黒電話でその受話器を握りながらの会話だった。あの時私は高校1年生、真ん中の弟が中1、末っこの弟が4年生。
祖母が夜の食事を作ってくれてはいたのだけど、それ以外の朝、昼、そして家の家事などどうしてたんだろう?バイトもしていたな、その時の記憶がまるで無い。今思うと母も子ども3人を置いて実家に帰る、というのはとっても辛かっただろうなぁ、心配だっただろうなぁ、と思う。
何をしても上手くいかない、何か大きな試練でも試されてるのかと思うくらい、なんだか八方塞がりな状況だな、と最近思いながら、そういえば高校1年生の頃の苦しかった時期を思い出した今日。
それが父の誕生日の日っていうのも、なんだか不思議な気がした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?