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「悪口言われたぐらいで示談金貰えていいな」と思っている皆さんへ

【2020/07/23 20:49】

「俺たちは必死に汗水流して働いて、毎月毎月金納めてやっとこさ返してるってのに。悪口言われただけで315万もボーナスもらえる上級国民はるかぜちゃんは、やっぱ違うわ〜。」

「春名風花、315万とかいいな〜。悪口言われただけでタンマリ大金もらえて、みんなにチヤホヤされてなぁ。なんか損害受けたわけでもないのに、どういう315万なんだよ?」

「金持ちの暇つぶしが羨ましい」

「じぶんさえ良ければいいってか」

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何を言ってるんだろう。そんなにうらやましいなら、あのとき代わってくれたら良かったのに。この金額はラクしてもらえる不労所得じゃなく、僕のこれまでの苦しみとトレードなんだから、そんなに10年ぶんの慰謝料が欲しいなら、僕と同じめにあって、10年間苦しんでみたら良いと思うんだよ。

慰謝料っていうのは、誰から見てもそれだけ苦しんだんだなってことが認められた人だけがもらえるもの。それに、何度も言うけど、いくらお金を積まれても、傷はなおらないし、記憶も消えないし、一度落ちた信用も名誉も取り戻せないし、ぺこぱじゃないから時だって戻せない。これで、あの苦しかった記憶が全部消えて無くなるわけじゃないんだよ。

何度も、何度も、先の見えない不安に押し潰されそうになったり、死にたくなるほど辛い経験をした人間に向かって「示談金貰えていいよね」って、何で言えちゃうんだろう。何にも分かってない。こんな思いしなくて済むなら、その方がよっぽど幸せに決まっている。誹謗中傷されずにネットを使えること、セクハラにあわないこと、いつ後ろから刺されるか怯えずに堂々と外を歩けること、普通に学校に行けること、生きているだけで友達や家族に迷惑をかけて、情けない気持ちにならないでいられること、どれほど僕が羨ましかったかも知らないくせに。

僕は必死に汗水流して働いて貯めてきた学費を裁判費用に使ってしまったので、そのぶん奨学金を借りないといけなくなったんですね。だから慰謝料をもらっても、もちろん嬉しいけれど、それは単に「今まで損してきたお金が元に戻って嬉しい」ってだけのことなんです。それと、もう10年近く嫌がらせを受けて、たくさんの仕事を失ってきたり、自分で警備を頼むための費用も払ったりしているので、トータルで考えたら、もらった慰謝料を遥かに超える損害が出ています。損したお金、かけたお金だけを純粋に計算しても、300万なんてものじゃおさまらない。これでも全然足りていないと思うんだよ( ;꒳​; )

また僕は裁判をしようと決心したとき、月収10万くらいで、5万円の家賃で都内で一人暮らしをしていました。実家から食糧を分けてもらって何とか生きていましたが、稽古場に行くための交通費を払ったら手元には何も残らない。お金も時間もコネも、何にも持っていない高校生でした。生活を限界まで切り詰め、芸能の仕事の空き時間に睡眠時間を削ってテレアポのバイトやイベントのアルバイトをし、お金を貯め、弁護士さんも自分でネットで探して決めました。そうしないと、そのささやかな生活すらも壊されてしまうと思ったからです。

金持ちの暇つぶしなんかではありません。羨ましがられる要素なんてどこにもない。

慰謝料というのは、「それだけの損害が出ている」と認められるからこそ貰えるお金。元の生活を取り戻すために必要な経費であり、慰謝料をもらうためには、まずそれだけの損をしないといけないんですね。皆さんは慰謝料を貰わなければならなくなるほど、どこの誰とも分からない人から脅されたり、理不尽に仕事を奪われたり、安心な生活や大切な人間関係を壊されることが、そんなにうらやましいのですか?慰謝料がもらえるなら、僕と同じめにあってみたいですか?

僕は慰謝料なんて形のお金ではなく、自分でオーディションを受けて勝ち取ったお仕事のギャラが欲しかったですし、せっかく自分の芝居で稼いだお金で、払う必要のなかった引っ越し代や警備の費用なんかも払いたくなかった。

なぜ示談にしたのか。それは動画で話したように、いまはまだネットの誹謗中傷に対する罪がとても軽くて、もしかしたら、逮捕されても大した罪にならないかも知れないと聞いて、ならばそれよりも慰謝料の額を公表した方が、ネットの誹謗中傷に対する抑止力になると判断したからです。

実はこれは言うかどうか迷ったのですが、たとえ10年間ネットで誹謗中傷をし続けていた人であっても、いま本人が罪を認めていて、逃亡のおそれがない事が分かっていて、初犯であれば、ほとんどが書類送検のみで、不起訴になってしまう事が多いそうです。警察の仕事は悪人を懲らしめて罰を与えることではなく、国民の安全を守ることなので、本人が罪を認めて反省する様子をみせていて、「この人はもう危害を加えるおそれがない」と判断されたら、それだけで終わってしまうこともあるんですね。

僕の担当の弁護士の田中先生は、過去にネットでひどいデマを流されて、ご自分のことでも実際にたくさんの裁判をしてきた経験があり、そのたびに、「何かをコピペしたような、心のない謝罪文が届くだけです。お金も戻って来ない(※刑事罰で課される罰金は国に支払われるので、被害者には一円も入りません)し、相手にも何のお咎めもなかった」と、虚しくやり切れない、悔しい想いをして来られました。それで、「春名さんには、相手から少しでも多くお金を取ることに集中して欲しい。必ず、それが後の誰かのためになるはずです」とおっしゃってくださって、僕も納得し、このような結果になりました。


全然うらやましくなんてないよ。こんな経験したくなかった。誰にも邪魔されず、普通に学校に行き、普通に安心して暮らし、本来もらえるはずだった仕事をもらい、やりたい仕事をし、自分で仕事したお金を、無駄遣いせずに、自分で堂々と使いたかった。今さらあやまられても、損したお金が戻ってきても、失った時間だけは、どうやっても二度と戻ってこないのだから。

あとね、僕のニュースをみて「悪口バンバン訴えて稼ぐぞー!!」って思っている人がいたら、それはちょっと甘いと思う。裁判所も警察もそんなに馬鹿じゃないから。きちんと傷ついた人に、それ相応の対価が認められることはあっても、法は、面白半分やお金儲けで訴訟をしているような人の味方じゃない。ヘタすると相手から逆に訴え返されて負ける可能性だってあることは忘れてはいけないし、慰謝料を払わされるのは、もしかしたらあなたの方かもしれない。特にネットでアンチに対して過剰に脅しをかけたり、無駄にファイティングポーズをとっている人は、相手だってその行為によって傷ついているし、あなたを訴える権利を持っていることを忘れないで。訴訟はゲームやビジネスじゃないし、自分に取って都合の悪い意見を封じ込めるための武器でもない。仮にあなたの主張が認められたとしても、やはりそれなりのお金しか貰えないと思うんだよ。

そのこと、どうか分かってもらいたいです。よろしくお願いいたします。


🌸記事中の表現について。示談金315万は刑事告訴を取り下げて貰うために相手方が支払う費用で、弁護士費用や成功報酬、告訴取り下げの費用等もろもろのもろが含まれている(それらを全部負担するので告訴を取り下げてくださいってこと)ので、実際に僕が受け取れるのはその中の慰謝料だけです。よって、向こうから見た話のときは「示談金」、僕から見た話のときは「慰謝料」と表記することにしました。


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