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何度も振り返ってはいたんだけど、ちゃんと隅々まで書き出していなかった。
今日はばあちゃんの命日。

そう、この曲はばあちゃんのこと歌ってる。
大学4年の秋に亡くなってしまった。一人暮らしをしていたので母から連絡が来て、その日はすぐに実家に帰ることが出来なかった。
嘘みたいだけど、その日の気温は今日ととても似ていて、雨も降っていて、秋の始まりみたいな日だった。

次の日実家に帰って、ばあちゃんに会った。こんなこと詳しく書くのもおかしいと言う人はいると思うけど、記憶は鮮明なうちに残しておいて忘れないようにしたい、忘れることなんてしたくないから、言葉にできる範囲で書くことにする。
不快な気持ちになる人が居たらごめんなさい。


ばあちゃんは痩せ細って、雨より冷たく、もう話すことも出来なくなっていた。いつも夏に帰省をすると「さやちゃん帰ってきたんだね〜おかえり〜」って満面の笑みで迎えてくれたのにその姿はもうなかった。たくさん泣いた。嘘みたいだった。


時は無常で、気づいたらばあちゃんの身体はこの世からなくなっていた。


ばあちゃんに大学の卒業式の袴姿みせたかったし、「絶対結婚なんてしないんだから!」ってばあちゃんに言って、ばあちゃんに「結婚して子供産んで幸せだよ」って言われてそこで反抗してしまったことを謝りたいし、ばあちゃんがまだ元気なうちにアジのなめろう作って「美味しいな〜」って思ってもらいたかったし、小さい時に連れってってくれたいくら丼のお店また行きたかったし、ばあちゃんが作ってくれた松前漬けもまた食べたかったし、社会人になった私も見てもらいたかったし、たくさん後悔してる。



ばあちゃんが大好きだからこの曲を作った、のはもちろんなんだけど、それよりもばあちゃんに伝えられなかった後悔とか、何も出来ない自分に対しての苛立ちをどこにもぶつけられなくて、この曲を完成させたと思う。


ー君の体温みたいな風が優しく吹いていたー

横浜駅、3番線、駅のホームでメロと歌詞が同時に頭に流れてきた。
最初はね、「君の体温みたいな春が」とか、「春の体温みたいな風が」とかだったんだけど、春の少しづつ湿り気がある空気が、人間の体温みたいで、張り付いてくる感じが嫌な感じだったんだけど、明確な根拠はないけど「これだ、、、」ってなったんだよね。そのまま、ばあちゃんのこと考えて作った、ばあちゃんに感謝だね。

ー嘘ついてまで笑ってみせるその姿に気づかないフリしていたー

絶対に辛かったはずなのに、私には全然辛そうな素振りを見せなかった。
ばあちゃんは病名も、余命宣告されていることも知らなかった。
このまま嘘ついたままでいいのかな、言わない方がばあちゃんにとっては良いことなのか、ずっと分からないままだった。

ー僕を責めないまま 海に混じった藤色の空に消えてしまったー

ばあちゃんとの最後の思い出が、地元の夏の花火大会だった。
ばあちゃんは弱りきっていたから、花火が打ち上がる場所の近くまで行って、車の中から母と叔母と私の4人でみた。
「もう、これが最後にみんなで見る花火なんだな」って私は思ってた。
花火に見とれているふりをして、こっそり泣いた。

だけどやっぱり花火は綺麗で、思い出として残ってるから、絶対歌詞に入れようと思った。実際に藤色の花火があったかなんて、そんなことは覚えてないけど、ばあちゃんは藤色が好きで、海の水面に映る花火の残像を、ばあちゃんとの別れを投影したかった。ばあちゃんは魚が大好きで、猫よりも猫らしく、魚の骨に身がなくなるくらい、綺麗に食べる。だから海の表現も入れたかったし、全てがここに詰まってる。

ー最期に言えなかった 「ごめんね」ー

これは、先述したとおりばあちゃんに対しての後悔の気持ちもあるんだけど、ばあちゃんが亡くなる前の日に、母がばあちゃんとケンカをしていたと聞いて、ばあちゃんの介護で大変だったのに、全然協力出来なかった私が母に対しても謝りたい気持ちだし、ばあちゃんが亡くなったことで色々生活が変わって、そこに対しても何も出来なくて不甲斐ない気持ちもあったから、シンプルだけど、この歌詞になったと思う。

ー去り際に交わした言 思い出せなくなってしまう僕を忘れていいよ 
だから恨んだりしないでー

ばあちゃんと最期に話したことは、悲しすぎるけれど、本当に覚えていない。
ダメだとは思っていたけど、ばあちゃんなら大丈夫だよ、また年末に帰省したら会えると、祈りの気持ちも込めて少しの可能性を信じていた。
本当に悔しい、当たり前のことを当たり前に思うな、もう一度ばあちゃんと話したい。

ー手に触れた時にはもう 冷たい花が 夢でもいいって何度も繰り返してたー

ばあちゃんが亡くなってから、しばらく夢に出てくるようになっていた。
ばあちゃんが生き返る夢も見たし、ばあちゃんとばあちゃんの家にただ居る夢も見たし、たくさん夢に出てきた。母も叔母もそんなに出てこなかったらしい。ばあちゃんは私のこと心配だったんだろうなあ。

ー君の体温みたいな風が優しく吹いていた 胸を突き刺すほどゆらりゆらりとー
ーsion…ー

ばあちゃんが本当に好きな花は「藤の花」です。
だけど藤の花だと、歌詞を広げるのが難しくて、
紫色の花でなにか共通するものがないか調べると、シオンの花言葉や由来が出てきた。分かりやすくて、私が伝えたいことが書いてあるのでぜひ。。
参照 ↓

優しい風なのに、「突き刺す」って表現が矛盾してて、大好きな人を思って書いたのにやっぱり後ろめたい気持ちがあるからこの言葉になったんだろうなあ。


歌詞を書いた当時のことを思い出しながらここまで書いたけど、どんどん記憶は薄れてしまう。でも私は忘れようとは一度もしなかった、毎年命日にはばあちゃんの好きな藤色の花を買って、ばあちゃんのことを考える日にしている。本当はこの曲だってばあちゃんには聴いてもらいたいけどね。
夢の中でまた会えたら、今度聴かせてみようかな。


おわり

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