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反ワクチン・中核派・ノーマスク集団!ヤバイ奴らが大暴れ!!~東京オリンピック2020開会式の裏で~(後編)

 筆者は激怒した。必ず、かの邪智暴虐のオリンピックを中止させなければならぬと決意した。筆者には政治がわからぬ。筆者は、ただの「にわかオタク」である。コミケに行き、コミケで手に入れた薄い本を夜のお伴にして暮して来た。けれどもオタクへの迫害に対しては、人一倍に敏感であった。

東京オリンピック2020が開幕した。だが、筆者にとってはクソどうでもいい。コロナが蔓延して以来、コミケは中止・延期を余儀なくされている。まあ、コミケは何日も風呂に入っていなさそうな大きなおともだちが密になり、酸っぱい匂いを充満させるイベントなので感染リスクを考慮すると仕方ないだろう。では、オリンピックはどうだろうか。「世界中から万単位の人々が日本に押し寄せる・毎日のPCR検査などで医療リソースが割かれる・選手は毎晩S〇X三昧」などなど感染リスクになりそうな要素は枚挙にいとまがない。少なくともオリンピックの危険性がコミケ以上であることは間違いないだろう。それなのにオリンピックは決行である。これはオリンピックに対する不当な優遇であり、オタクへの迫害である。
 そんなわけで筆者としてはオリンピックが憎くて仕方ない。どうにかしてオリンピックに一矢報いることはできないだろうか。ニュースでは連日、アスリートの○○がメダルを獲ったという内容が報じられている。ならば、筆者はそれに対抗して、オリンピック開会式前後の三日間、競技場の外でアスリートに負けないぐらいの活躍をした人々(主にやべー奴ら)の姿を伝えたい。それこそが筆者によるオリンピックへのささやかな復讐である。そんな気持ちで今回の記事を書いてみた。本当は一回で書き終わりたかったが、記事を書いているうちに凄く長くなってしまったので、前編・中編・後編に分けてお伝えする。これは後編。前編はこちら。中編はこっち。

7月24日 ノーマスク集団・世界同時デモ@新宿 クラスター祭@渋谷

 オリンピック開会式の次の日、新宿にて、日本と子供の未来を考える会という団体によって世界同時デモが行われると聞き、私は新宿駅東口広場へ向かった。案の定、ノーマスクの集団がいる。ノーマスク集団をヲチし過ぎてもはや何とも思わなくなってしまった自分が恐ろしい。こうして、デモが始まった。デモが始まって一番最初に目についたのは自転車のオッサンである。オッサンの帽子に注目してみよう。六芒星に鍵十字という各方面に喧嘩を売っているマーク、そう「ラエリアン・ムーブメント」である。かつてホテルに信者を集めてヤリまくる「セックス教団」として名を馳せた宗教団体(※藤倉善郎氏「カルト宗教取材したらこうだった」を参照)は令和の時代では陰謀論に染まっていた。

デモの参加人数は700人ほど。サラリーマン風の男性や主婦、子供たち、かつてヘイトデモに参加していた元「行動する保守」の人、Qと書かれたTシャツやQアノンの象徴であるカエルのペペのTシャツを身に着けたQアノン信奉者とみられる人、ORペンダントをつけた幸福の科学信者とみられる人など様々な人が新型コロナウイルスやワクチンについて思い思いの内容が書かれたプラカードを掲げている。新宿のノーマスクデモを「反原発デモの黎明期」と表現する人がいたが、反原発デモの黎明期ってこんなに多様だったのだろうか。反原発デモの黎明期を知らない筆者としては非常に気になる。


 あと、陰謀論者はなんでも陰謀論に組み込む。例えば、デモ隊の先導車からのこんな演説。

「子供の運動会はダメでもオリンピックはやっているんですよ!おかしいじゃないですか!皆さんは気づいてますよね!?」

完全にオリンピックが陰謀論者に利用されてしまっている。クソオリンピックめ。

ノーマスク信者はあなたのすぐ隣に!

 もはやノーマスク集団のデモには慣れてきたので、まあなんというか予定調和なデモだなー。これが40分ぐらい続くのかー、などと思っていたのだが、一度だけ鳥肌が立ってしまう出来事があった。それはデモ隊が新宿駅近くの某自動車販売店の横を通り過ぎた時である。多くの通行人がドン引きしている中、某自動車販売店の店員とみられるスーツ姿の男性が一瞬だけマスクを外し、手を振っていて、それに対してデモ隊が店員に対して手を振り返していた。この某自動車販売店の店員のように、周りがマスクをしているから仕方なくマスクをしているだけで、内心ではノーマスク集団の思想に共鳴している「隠れノーマスク信者」は自分のすぐ隣にいるのかもしれない。確かに普段はマスクをしているのであれば、その人の内心の自由であるのかもしれない。だがやはり、自分のすぐ近くに、「コロナは嘘!」という思想に共感してしまう人がいたらギョッとしてしまうだろう。そのような意味でこの某自動車販売店の出来事は筆者の背筋を寒くしてしまうような「事件」だった。

ノーマスク集団と権力の馴れ合い、そして渋谷へ…

 デモも終わりが近づいてきた。彼らのテーマソング(?)である「PCR音頭」のメロディーにのせて警察の人たちへの「新宿のお巡りさんはいい人で〜♪平和にデモ行進できました〜♪みんなで言おうよありがとう〜♪(ありがとうー!)」と感謝の気持ちを伝えようとしている。これ、お巡りさんはどんな気持ちなんだろう。聞いてみたいなぁと思ったらお巡りさんたちは足早に立ち去ってしまい、40分に及ぶデモは終了した。


 そしてデモ終了後、ある車がデモの解散場所を通りがかった。車体には「BUSHIDO」と書いてあり、「コロナはただの風邪」という内容をスピーカーで流している。これは、与国秀行氏が代表理事を務める団体「武士道」の車なのではないか。黄色と白の車体の車は、新宿のデモの人々をスルーしてどこかへ向かっている。筆者はこの車の行方を追うことにした。

「武士道」って?

 そもそも武士道なる団体とはなんだろうか。そこから説明しなくてはならない。武士道とは幸福の科学信者である与国秀行氏が立ち上げた団体である。私が説明するより見てもらった方が早い。これが武士道が発行している本である。

「コロナから世界維新へ」(与国秀行)

 前書きと目次を見ればわかるように、常人には理解しがたい内容が並んでいる。こんなおもしろい団体が新宿の世界同時デモを無視してどこに行くのか。答えは渋谷にあった。

渋谷にて与国登場!

 新宿で世界同時デモが行われていた頃、それとは別に国民主権党が原宿から渋谷にかけてデモを行っていたそうだ。私が渋谷に到着した頃にはデモは終了しており、渋谷駅前で「クラスター祭」なるものが始まろうとしていた。クラスター祭に参加している国民主権党のメンバーは20人ほど。新宿のデモの参加者700人に比べたら雲泥の差ではあるが、今年5月に開催された千葉県知事選に出馬した平塚正幸氏や東京都議会選挙に出馬した中根淳氏はもちろん、今年5月に開催された「ノーマスクピクニック」に参加しているメンバーもちらほらおり、全体的に「濃い」メンバーが集まっている。その中で明らかに国民主権党のメンバーではない人が一人。そう、与国である。私と知人で「釈さんとバトってましたよね!?」「仲直りはしたんですか!?」と質問をぶつけてみる。(与国氏はFacebookにて幸福実現党の党首の釈量子氏を「政治センスがない」と批判し、絶賛内ゲバ中)しかし、与国氏は質問にハッキリ答えることはなく、微妙そうな顔でどこかへ行ってしまった。

演説が下手な中根・全く関係ないことをしゃべる与国

 与国をいじった後は、とりあえず国民主権党の面々の演説を聞いてみる。まず初めに話を始めたのは都議選候補だった中根淳氏。始めは「ワクチンをうつと外出したくなくなってしまい、強制的に体がSTAY HOMEさせられてしまう!」みたいなおもろいトンデモ話をしていたものの、いかんせん演説が下手である。ワクチンの話をしていたと思ったら、「皆さんはこの一年間、一目惚れをしたことがありますか!マスクをしていたり、オンライン越しにしか会えない状況で一目惚れができますか!?」のような、よくわからん話までしだして、イマイチなにを伝えたいかがわからない。カウンターに来たとみられる右翼の人にヤジを飛ばされて明らかにひるんでいる。こんなんでよく都議選に立候補したな。

 中根の次に演説をしたのは、与国氏。中根氏とは対照的に演説はうまい。日本政府のデイビット・アトキンソンの中小企業潰しや中国共産党による日本の土地の買い占めなどについての批判をし、「誰が正しいかを競ってはいけない、何が真実かを探求し、競っていかなければならない!!」「アイヒマンのような悪行をおかすなぁ!」「ユダヤ人迫害を行ったナチス、しかし、そのナチスにお金を出していたのはロスチャイルド、ウォーバーグ、ユダヤ人です。ホロコーストをこなしながらイスラエルを建国したというトリックを読み取らなければ本当の政治は見えてこない!」などと力説している。反ワクチンもコロナも関係ない、わざわざクラスター祭でやる必要性を感じない演説である。コイツはなんのためにクラスター祭に来たのか。与国の口からトンデモが出てくることを期待していた自分としては非常に残念だった。

 この後、武士道・国民主権党のメンバーによる歌が三曲ぐらい続いた。思ったよりつまらない。と思ったら、ここからが本番だった。

国民主権党、きちんと陰謀論やってました。

 何曲か気持ち悪い歌を聞いた後、有名人でない「一般の方々」の演説が始まった。これがとても良い。というか最高。

 まず、一人目が山口県から来たという40代ぐらいの女性。「ディープステートと呼ばれる人たちがデジタル監視社会をつくるためにワクチンをうたせようとしている、ということを年賀状にして100通から200通送ったところ、返事が3通しかこなかった」という話をしている。その後、友人が危険なワクチンとわかっていながら生活のために既に2回うってしまったという話をしだした途端、唐突に泣き出した。やばい、野々村の会見みたいになってる。超面白い。

「ディープステートや金融資本家の存在を知らなかったとしても、一生懸命生きている人なら、(ワクチンは)本能的に危ないとわかっていると思うんですけど、目の前の生活があるので目の前の崖に飛び込むしかないと思うんですよ。それが日本の現状なんです。」
「どうしても目の前の暮らしのためにうたなくてはいけない人がいて、その人たちを自分から崖に向かって歩かせているのが、この世界を支配している者たちのとてもいやらしくて汚いやり方なんです!」


次に喋ったのはブラジル出身の50代女性。Qアノンの象徴であるカエルのペペのTシャツを着ている。この人も強烈だ。「厚生労働省に電話すれば分かる!コロナが顕微鏡で見つかったことは無い!」「ブラジルでは死者が沢山出たというけれど、棺桶には石が入っていた!コロナは嘘!茶番!」と主張し始めた。

「調べれば調べるほどがいろんなことがわかってきます!」
「テレビで言っていることはおかしいんです!メディアもおかしなことをたくさんしているわけなのです!本当の情報は自分の頭で考えることです!」
「ツイッターも5アカウント凍結されました。本当のことを言うと凍結されちゃうのですねぇ!(自分の主張が)嘘だったら凍結する必要ないじゃないですか!」


その後、平塚正幸氏を本当の日本人と讃えたうえで、平塚氏に「ネットでいろんなデマが流れてますけど、平塚さんは創価学会なんですかー?」と聞き、平塚が「違います。」と答える。ついでに「平塚さんって幸福の科学なんですかー?」と聞き、平塚はさっきより元気に「関係ないです!」と答える。こうして「ファクトチェック」を済ませた後、彼女は演説を終わらせた。


次に喋ったのは白人男性。

「支配したいの!奴隷のように。そしてサイボーグ化したいの!内閣府の一部にムーンショット計画ってあるの知ってます?人間が自分の体を使うことなくアバターとして生きていくって話。気持ち悪いでしょ!?自然じゃないってことですよ!科学で生きていくってことですよ。科学は生活のために使うものであって、支配されるものじゃないでしょ!コロナはその入り口なんです!支配するための入り口です!コロナの支配に負けないで!コロナの恐怖に負けないで!」
「キリストにしか僕に頼れるものがない!これは広めているわけじゃないけど。」「安全な道を見つけてください!」「ありがとうございました~!ゴッド・ブレス・ユー!」「キリストの神の祝福があるように。アーメン!」



次は50代~60代の男性。Tシャツのインパクトがすごい。頭にはトランプ帽子を身につけている。

「ワクチンというものが、今とても危険だと言われておりますが、ワクチンの成分というものがmRNA、遺伝子組み換えのね、恐ろしいもの、ポリエチレングリコールとかね、酸化グラフェンとか自然界にないようなものが含まれております。だから、好き好んでうつものではない、と思っております。今、副反応というより主反応というものがたくさん起きております。(ワクチンで死んだと主張されている人が)751人とパネルにありますが、本当に危険な世の中になっております。」
「みんなが迎合して、はいそうですね、といってたら社会は良くならないんです。一人ひとりが当事者であるという意識をもって、私共は新生活様式と呼ばれているもの。その全てに反対していたしております。マスク、ワクチンはもちろんのことです。衝立もそう、アルコール消毒なんていうのもロクなものではないです。」
「本当にワクチンは毒であるということ。この世は何者かによって支配されているということ。そうしたことをぜひとも考えていただきたい。自らの力で考える力を現代人は取り戻してほしい。メディア・政府の言うことを鵜呑みにしている暁に未来はあるんですか?ぜひ自分の頭で考えるようになってほしい。渋谷スクランブル交差点の皆さん、無表情なパレードと決別してほしい。私はそのように思います。ありがとうございました。」

そして、陰謀論にまみれた「一般の人々」による演説は終わり、また国民主権党メンバーによるつまらん曲の披露となっていったので、飽きた筆者はすぐ近くにいた「ジーザスコール東京チャーチ」の若者に絡み、渋谷を後にした。

 反ワクチン・コロナ陰謀論についての筆者の意見

 とりあえず、一日目と三日目の反ワクチン&ノーマスク集団のデモを見ての感想を述べておく。時折、陰謀論を信じる人について、もっともらしく「対話が大切」などと述べる人がいるが、そんなものは現場を見ていない人間が言える欺瞞である。このレベルにまで振り切れてしまっている人を「マトモな側」に連れ戻すことはよほどのことがない限り不可能に近いだろう。とはいえ、このような陰謀論がこれ以上蔓延してしまうと、反ワクチン・ワクチン忌避が多くの人に広がることになり、それはそれで公衆衛生上の危機である。では、陰謀論やデマを信じてワクチンをうたないという選択肢をとる人を極力ゼロにするためにはどうすれば良いのか。この対策として、筆者が提唱するのは、「陰謀論やデマをネタとして笑い飛ばす」ということだ。筆者は、「既に伝播している陰謀論をネタとして消費することで、陰謀論を無力化させる効能があるのではないか」と推測している。「ワクチンで5G接続」という陰謀論は、散々ネットでネタにされたことで、最近ではネット上でそのような内容の陰謀論が唱えられることは少なくなり、この3日間のデモにおいても「5G」と書かれたプラカードが掲げられることはなくなった。この事実が示すように、笑いは陰謀論をある程度無力化する効能があるようだ。だから、この記事を読んでいる皆さんは是非、「ワクチンをうつとマイクロチップを注入されてサイボーグ化!」「ワクチンをうったりうたなかったりすると、世界線移動!」みたいな話をTwitterや日常生活でぜひネタにしてみてほしい。もしかしたら、その何気ない雑談で陰謀論にハマる人を減らせるかもしれない。

令和時代って、素晴らしい!

「この時期は温暖で晴天の日が多く、選手たちが自分の力を思う存分発揮できる理想的な気候を提供する」

 これは日本が東京五輪を招致する際に、IOCに提出した提案書の文言である。どうやら日本の夏はアスリートだけでなく、ヤバイ奴らも最適なパフォーマンスを発揮できる理想的な気候であったらしい。

 ものすごく不謹慎であるが、今まで筆者は「あ〜、オウム真理教が堂々と街中やテレビで活躍している時代に産まれたかったな〜」と考えていた。だからこそ、90年代を知る人々の話を聞いたり、当時のことについて調べたりするのは、筆者にとって何物にも代えがたい尊い体験であった。そのようなこともあって、筆者は自分が生きている今の時代を「つまらない時代」と心の中で卑下してしまっていた部分があったと思う。しかし、この3日間で「ゲバヘルをかぶって東京五輪2020に対して声をあげる若者」や「コロナを金融資本家の陰謀と唱える陰謀論者」など様々な人を観察してきたことで筆者の考えは大きく変わった。

「令和時代も悪くない!」

東京五輪や終わる気配が見えないコロナ禍。もしかしたら、私たちは今この瞬間にも、歴史的瞬間に立ち会っているのではないだろうか。ならば、この瞬間をできるだけたくさん目に焼き付けて後世の人々が令和時代の話を聞いたり読んだりして、ワクワクできるように記録を取り続けなければならない。筆者は今、そんな義務感で胸がいっぱいである。

アスリートだけでなく、ヤバイ奴らにとっても理想的な日本の夏。オリンピックはそろそろ後半戦である。ヤバイ奴らはどんな活躍を見せてくれるのだろうか。今後の動向に目が離せない。

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