スキー合宿の思い出
※藤平さん主催の1時間で文章を書く企画に参加して書いたやつです
中学生の頃、私がスキー合宿に行った時の話です。うちの学校のスキー合宿は班ごとに話し合って自由にコースを決められるルールだったのでした。合宿の最終日、班の誰かが「せっかく合宿に来たんだから、どうせなら一度くらいプロが滑るような難しいコースに挑戦しよう」と言い出して、学生が滑る用ではない、あまり整備されていない山奥の斜面に向かうことになりました。しかしその日はかなりの雪が降っており、慣れない山道で私たちは道に迷ってしまいました。道を引き返そうにもどこを歩いてきたか分からない状態です。それでもしばらく歩いているとなんとなく森が開けてきて、何かしらの人工物がありそうな気配がしてきました。私たちはようやく一安心しつつ急ぎ足で道を進んでいきました。しかしその先にあったのはリフトでもペンションでもなく、長いゴムのついた発射台のような装置でした。発射台の向こうには木や石で出来た骨組みのような構造物があり、そして視界の遠くでは緑色の豚の頭がふてぶてしい笑みを浮かべながらこちらを睨んでいました。そうです。私たちは慣れない雪山をさまよい歩く内に、いつの間にかアングリーバードのコースに入ってしまっていたのです。
こうなってしまっては、このコースをクリアしなければ先に進むことはできません。しかしアングリーバードにおいては、弾丸となって飛んだ鳥はたとえどれだけ敵を倒し、スコアを叩き出そうとも着弾の衝撃で爆散して死んでしまいます。誰もが怖じ気づいてその場から動けませんでした。
すると突然、「よし分かった。俺が一発で終わらせて来る。」という勇ましい声がしました。野球部のキャプテン・田中くんでした。田中くんは精悍な面持ちで発射台に立ち、発射されました。勢いよく飛んでいった田中君は、コース序盤に立っていた木の板にぶつかるとタバコの箱になりました。田中君は「俺はポッピンアパシーだ!」と叫びました。ポッピンアパシーという銘柄のタバコになったのです。なぜタバコの箱だと分かるのかというと、その後ポッピンアパシーが放物線を描きながら叶姉妹の小さいバッグの横に並んでいったからです。叶姉妹のバッグといえばマツコ・デラックスさんでお馴染みのマツコの知らない世界でも先日特集されていた通り、ラグジュアリーな見た目とは裏腹に何も入らず、バッグとして機能しないほど小さいものです。その小ささを確認するためにポッピンアパシーが使われたのです。しかし叶姉妹のバッグに何も入らないのはただ単に小さいからというだけの理由ではありません。叶姉妹のバッグの中にはイリオモテヤマネコが棲んでいるのです。イリオモテヤマネコはその縄張り意識の強さで知られており、バッグの中にイリオモテヤマネコ以外の物が侵入することを強く拒むのです。ところでイリオモテヤマネコといえば南国の生物。スキー場なんかに連れてこられて大丈夫なんでしょうか。大丈夫じゃないんです。こうしてイリオモテヤマネコは現在絶滅の危機に瀕することとなりました。しかしイリオモテヤマネコが死んだことで田中君は叶姉妹のバッグの中に入ることに成功し、現在はアメリカで空手道場を経営しながら悠々自適の生活を送っているとのことです。
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