君の後ろを未来がすり抜ける
恥ずかしがりやで、消極的な彼女は、いつもぽつり一人でいた。そんな彼女は、歌うことが大好きだった。家に帰ると、いつも口づさんでいた。
彼女の楽しみは、夢を見ることだった。夢の中だけは、彼女が唯一、自由にのびのび笑顔で楽しんでいた。
いつも、もう一人の、強い自分に憧れていた。夢の中では、同じ夢を追っているバンド仲間もいる。学校が終わると、いつも練習して、ワイワイと楽しく過ごしていた。
ある日、夢が見れなくなった。次の日も、又次の日も、見れなかった。自分自身が変わっていけない現実世界で辛い日々が続いた。
その頃、クラスに転校生がやって来た。彼は、背中にギターを背負っていた。
彼女は、彼をみてなんだか懐かしく、愛おしい気持ちにさえなった。
彼女は、学校の帰り道、誰もいない公園で、よく歌をうたう。たまたま、歌声を聞いた彼は、そっと近づいて
「バンドを組むから歌ってくれない?」と彼女 に頼んだ。
彼女は、嬉しかったが、恥ずくしくて、びっくりしすぎてその場を立ち去った。家で、彼の言葉がぐるぐる回っていた。歌いたいと思った。
次の日、また彼が近ずいて来て
「君の後ろを素敵な未来がすり抜けるから。だから大丈夫。自分の気持ちに素直になればいいんだよ。」とつぶやいた。
その言葉が、彼女の心に突き刺さった。勇気を出して一歩踏み出してみようと決めた。彼の他に、2人のバンドメンバーがいた。少しだけ、前を向いただけで、彼女の周りに、友達でいっぱいになった。
彼女は、久しぶりに夢をみた。バンドメンバーが、自分から去って行く夢をみた。夢の中っでいっぱい泣いた。また、一人になるのが怖かった。涙を流しながら目が覚めた。
その朝、彼女は慌てて学校へ行った。みんなが教室にいるのか、急いで走って見て回った。涙が、溢れて溢れて仕方ない。嬉しくて嬉しくて仕方ない。愛おしくて愛おしくて仕方ない。
彼女が、彼に出会って、少し勇気を出して行動しただけで彼女の世界は大きく変わった。
仲間がいっぱいになって過去が変わったのだ。
放課後、バンドの練習の時間、彼女は彼女らしく、透き通るような綺麗な声で精一杯想いを込めて歌った。
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