苗字とあだ名の話

子供のころ、自分の苗字が嫌いだった

小学生の頃は苗字をもじった変なあだ名を男子から付けられたし、電話口で名前を言っても正しく聞き取ってもらえないし、字だけ見た人は読み方を間違うし、スマホで戸籍通りに入力しようとすると文字化けするし、既成品のハンコは殆ど売ってないから大体オーダーメイドだし。

なんて不便で面倒な苗字なんだろう……

本当に苦痛だった。だから、将来は読みやすいありふれた苗字の人と結婚するのが密かな目標だった。


でも今は、あるきっかけのおかげで自分の苗字を気に入っている。

具体的には覚えていないけれど、小学4年生くらいの頃に友達の誰かが苗字+ちゃん付けのあだ名で呼び始めたのが始まりだった。

それからは当時所属していたクラブを始めどんどんそのあだ名が広まり、気付いたら多くの友達がそのあだ名で呼ぶようになった。

なんか呼びやすいんだよね!と言って皆がそう呼んでくれるのがとても嬉しかった。


それから暫くして地元を離れ、私はこのあだ名を知る人がいない所に引っ越した。

流石にこのあだ名ではもう呼ばれないんだろうな…と思っていたのに、なぜか私は今も例のあだ名で呼ばれ続けている。

誰が言い始めたのかは知らないけど、どこかの誰かが全く同じあだ名を付けて呼び始め、気付いたら多くの人がこのあだ名で私を呼んでいるという状況である。なんで全く同じあだ名が付けられて、しかもなんでここまで広まってるんだろうか…

でも、昔みたいに嫌な気持ちは全くない。きっと皆が悪意なく呼んでくれているからなんだろうなぁ

そして最近は何故か職場でもこのあだ名が浸透している。

何はともあれ、こうして皆が気軽にあだ名で呼んでくれるおかげで、珍しい・読みにくい・聞き取りにくい、と三拍子揃ったこの苗字が好きになれた。

ちなみに、最近とある同じ苗字の芸能人が有名になったおかげで、「○○と同じ苗字だね!」と読み方を間違われにくくなったのも大きい。本当に有難い限り。

もし昔の野望通りに読みやすい苗字の人と結婚して苗字が変わったら、それ以降に知り合う人は私を旧姓では認識しないんだなぁ…と思うことがある。

昔はそれが本望だったはずなのに。
今はそれがちょっと寂しい。

だから、たとえ苗字が変わっても、今呼んでくれている人には変わらずこのあだ名で呼んで欲しいなぁ…と密かに思うのでした。


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