ラッセル 幸福論

核兵器の廃絶などを訴えた「ラッセル=アインシュタイン宣言」でも知られるラッセルの幸福論。1950年頃の本だけれども実用主義的なところが今っぽい。

ラッセルは自分の意識を内にうちに持ってくるのではなく、外界に持つことの重要性、つまり「幅広く興味を持ち、その人やものの対象に対して友好的でいること」を訴えた。

感想としては非常に納得がいくし70年前の本とは思えないほど現代人にも必要な本だと思った。心配、嫉妬、恐怖など自分の心で生まれる感情に囚われすぎる人は少なくない。特にSNSがこうした感情のトリガーになることが多い。そういう人は、自分の興味を外界に向け、うつつを抜かせるものを探すべきだし、その対象を幅広く持つべきである。そして、これを教えるのは親の務めでもあると思った。自分は楽観主義で割と幸福だと思っているがなぜ幸福に感じやすいのか論理的に理解した。それでも、自分の内なる感情に、特に罪悪感に囚われることが最近あったし、そんな時は囚われすぎてないか自分に問いたい。

この本の中で最も気に入ったのは、第3章の競争である。ラッセルは成功は幸福の一要素に過ぎないと言っていて、確かにそうだと思った。成功ばかり追いかけて、他の幸福要素を犠牲にし過ぎて成功を掴んだ時に空虚感に見舞われないようにしたい。バランスよく、中庸的に競争という環境を楽しみたい。
また、退屈と興奮では浮気する人の精神分析をしていて面白かった。ラッセルは幸福な生活は概ね静かな生活でなければならないとしている。確かに、静かな生活がベースにあり、時折興奮する出来事があるのが一般的なものである。そのベースを楽しめるようでなければ幸福にはなれないのである。確かにその通りで、興奮に囚われている人は満足感を得ていなくて、常に何かを追い求めている。そして、それは徐々にエスカレートすることが大半である。この静かな楽しみは意外と人生において大切なものである。

個人的に、第一部の不幸の原因の方が面白く、後半の熱意や愛情等はよく言われるものだった。コロナ下で精神的にしんどい時間が続くが、そういう人は外界にぜひ目を向けてほしい。みんなに読んでほしい一冊だと思った。

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