赤いピアノ

　朝、散歩ついでにコンビニで買ってきたティラミスは一口目で「甘すぎる」と声に出しまうほど甘かった。でもこれが食べたかったんじゃないのともう一人の自分が言うから、それもそうだったと思いコーヒーを流し込む。友人の引越しを手伝ったときに貰ったコーヒードリッパーで淹れたやつ。今日は結構上手くいったから嬉しい。

　お気に入りの歌集、藤本玲未さんの『オーロラのお針子』を手元に置いてパラパラとめくる。Bluetoothで繋いだ安いスピーカーから、Apple Musicが選んでくれた私のためのchill mixが流れている。

　なんだこのいい時間は。いそいそと一眼カメラを取り出して写真に納めた。前から調子の悪かったiPhoneのカメラが先週からとうとう完全に起動しなくなってしまったため、写真に残したいときは一眼（またはインカメ）で撮っている。標準レンズを実家に置いてきてしまい、望遠寄りの単焦点レンズだけでは部屋の中はちょっと、いやかなり使いにくいのだけれど仕方がない。配達で届いた花束や、焦げて失敗した焼き魚なんかを同じように高画質で記録している。

　今週は月曜と金曜、2回だけの出勤になってしまった。リモートワークができる職種でもないため、だらだらと過ごしている。

　昨夜、待望の電子ピアノが家に届いた。サカナクションのライブ配信を観ていたら居ても立っても居られなくなって注文した、赤いピアノ。もう今日は来ないかなと思っていた20時頃、大きなダンボールが届いて小躍りしてしまった。早速箱から出して、もつれる指で覚えている曲を片っ端から弾いた。久しぶりの鍵盤。一人暮らしを始めて３週間ほど経ったけれど、ピアノをずっと必要としていたことがわかった。

　さて、問題はピアノを部屋のどこに置くか。88の鍵盤はどうにも長くて場所を取る。それと部屋にはギターが二台もある。いったいどこのアーティストだよ、とツッコミながらああでもないこうでもないと部屋の配置を考える時間は楽しい。いっそのことギターを壁に掛けてしまおうか、などと考え始めている自分がいる。

　さあ、今日はどんな１日にしようかな。