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ハッピーじゃねぇよ、こらぁ


2月23日に行ってきましたよ。〃EPIC25〃。エピックレコードが25周年なんだそうで、それまでのエピックの歴史を作ってきたミュージシャンの方たちが一堂に会してのイベント。TMNや渡辺美里さん、THE MODSなどそうそうたるメンバー。しかし、僕の想いは3夜限り復活するバービーボーイズに。
僕が中学生のとき、テレビで見るものだった音楽を、どうしても自分でやりたいと思わせてくれたバンド、バービーボーイズ。杏子さん、KONTAさん、エンリケさんには、この業界に入ってから個々にお会いしたことはあるのだけど、バービーボーイズとしてのライブは観たことがなかった。高校に入ったときに、一度だけチケットがとれたことがあって、数週間くらい前からワクワクしてたんだけど、本番の前の日に学校で〇〇○(著者自主規制)吸ってるの見っかって……。 謹慎処分ですよ。さすがに次の日、広島市内にちょっと行ってきたいんだけどとは言えず自宅で課題をやってた。横の注意書きに書いとけよ、「あなたの健康を損なう恐れがあります。また、バービーのライブにも行けない恐れもありますので吸いすぎに……」って。100パー僕が悪いんだけどね。あのときほど反省したことはないね。未成年はいかなる理由があっても○○○は吸っちゃダメだぞ。
で、今回のライブ。しょぼかったらヤダなぁなんて思ってた僕がバカでした。感激感激感激。大好きだったということを差し引いても、すげぇいいステージだった。バンドとして現役じゃ ないのかっていうくらい。というのも常に第一線で勝負しているバンドと、ブランクがあるバンドとは華やかさが違うものなの、普通はね。演奏力とかルックスとかパフォーマンスとかじゃないところにある華がね。なんとなくわかるでしょ? メンバーはご存じのとおりソロでバリバリにやってるとはいえ、バンド、しかも昔の曲でここまでのステージなら、またやりゃあ いいのにと無責任なファンである僕は思うのでした。
今日は25日火曜日。早いCDショップではもう僕らの4thアルバム『WORLDILLIA』 が店頭にあるみたい。本当のリリース日は明日なんだけどね。自分のサイトのBBSを見てると聴いてくれた人の感想も多く寄せられているし、おおむね好評みたいだ。「今、学校の帰りに買ってウォークマンで聴いてます、最高です」って、まぁまぁ落ち着けよって感じもあるけどうれしいものだ。
この『WORLDILLIA』には今の時流に沿ってCCCD (コピーコントロールCD) としてレーベルゲートがついている。PCでのコピーに課金するシステムね。業界全体でCD の売り上げが落ちてるという現状に対する対策なんだってさ。
たまには『日経エンタテイメント!』みたいな話を……。
今回のテーマは「ハッピーじゃねぇよ、こらぁ」です。
八百屋さんは100円のナスビを1つ売れば10円儲かります。それを110個売って次のナ スビを100個買って残った100円で家族とおいしい夕食を食べましたとさ。こんな簡単な 構造がCD、コミックなど図書関係も含め崩れているの。
ある中古の書籍やCDやゲームソフトを扱う店の前を通ったら、テレビでよく見る、ファミリーを強調してキャンプ番組とかやってるタレントの声が、軽快なBGMに乗って「いらないコミックがあったらまとめて〇〇へ。電話一本で自宅までとりに行くからお気軽にハッピ —ハッピー……」って響いてた。このセリフは正確じゃないけど、まぁだいたいこんなもん。ばっかじゃねえかって思うもん。そのタレントさんはお仕事でやってるんだろうけど、ちょっと考えろよって。
コミックって400円くらいでしょ。この400円は紙やインク代じゃないの。もちろんそ れも多少含まれているけど、作者の才能と編集者の努力と情熱、それから生まれた作品に対して払ってるんだよね。読み終わったら売っちゃえばいいやという類のものじゃないし安いから中古を買えばいいというものじゃない。その中古が100円だとしても、それは努力やら情熱やらをバカにしてるか、それを自分のものだと勘違いして二束三文で持ち込んで、その店に利益を払ってるという人と、同じ穴の人だ。
こんなにきつい表現をあえて使うには理由がある。この状況が作者の生活やら創作活動やらを妨げるのは当然でしょ、出版社で働いてる人たちの家族も大変でしょ、そして何より新しい才能に出版社がお金を使えなくなる。これが僕の立場としてはいちばんの実感。 ここから話をCDというか音楽業界に戻す。コミックのほうがひどいけど、状況としては似てるからね。
僕らポルノグラフィティは6年前に上京してデビューするまでの2年間、事務所とレコード会社から合わせて1人頭15万円くらいもらってた。ローンで楽器ばっかり買ってたから東京の暮らしは楽ではなかったにしろ、その2年間は成長するのにとても有意義な時間だった。それが今回のアルバムを作らせてくれたのだろうと思うし、この先もそうだろう。なんの種が植えられてんのかわからない鉢に2年間も絶え間なく水や肥料をくれてたということを抜きには、その後のことは何も語れない。
じゃあ、そのお金はどっから来たの?直接は会社だけど、つまりはサザンや桑田圭祐さん、 福山雅治さんなどたくさんの先輩からなんだよね。その先輩の作品が当時から不法コピーや不法ダウンロードで食い荒らされてたら、今の僕らはなかったかもしれないわけだ。考えただけ でもぞっとする。
一音楽ファンとして、これからの新しい才能から生み出される音楽を聴いてみたいし、それに僕らがちょっとでも利用されればいいと思う。そうやって音楽はここまで続いてきた。僕らは負けずにやるだけだからね。
CCCDは音楽からのHELPというメッセージだ。
「自宅にて」


何年まえだ、これ?
wikiによると「WORLDILLIA」がリリースされたのが2003年というから、17年前か。
コピーコントロールCDってあったね。音楽の違法コピーが問題になってた頃で、簡単にダビングできないような仕組みがCDに採用された。一部で音質が悪くなったという人もいて、一時期話題になった。今もあるのかCCCD。
今から考えたら平和な時代だったよ。ダビングっていう言葉を知らない世代だっているんじゃないかな。自分の家のオーディオ機器で、友達用にMDだかCDRだかにダビングする。業者でもない限り、せいぜい3枚か4枚のことでしょう? それに対して、音楽の価値が損なわれるって戦っていた。作った人の身になれって。
それから考えたら隔世の感。
CDがお宅の棚を占拠して大きな顔をしていた時代から、ダウンロードに。それによってCDの物理的な存在感は減ったけど、それでもハードディスクの容量はくってた。当時の携帯やiPodの容量は貧弱で、音楽データはそれを圧迫していた。いいように言えば、人は音楽のために大事な容量を割いてくれていた。
そしてもはやダウンロードの時代も過ぎ去ってしまった。
ストリーミング。
ファイルをダウンロードすることもなく、ネット上で聞くことができる。
かつて、CDショップで「”ポルノグラフィティ”の新曲の…」と言って顔を赤らめていた少女も、今ではネットの検索欄にその名前を入れるだけで、合法、違法問わず聞くことができる。時代は変わりました。

いや、今の音楽にまつわる問題点を書きたいわけではなくて、時間は色々なものを変えていくな、と単純にそういう話です。
よその家の子供と一緒で、しばらく見ていないうちに全然変わるなと。

なんかの本で読んで印象に残っている考え方がある。それは「人間、生まれた時にあったものは自然の摂理のごとく受け入れる。二十歳超えてから出会う新しいものには対応できる。40歳を過ぎてからの新しいものは不自然なものと捉えてしまう」というもの。なんかこんな感じのもの。
それでいくと、テレビのリモコンのボタンを押してチャンネルが変わるのは自然なことだと思えるけど、スマホのタッチパネルはどことなく頼りなく思ってないこともない。
かっこいい自転車には乗っていたいけど、登り坂で後ろに子供を乗せた電動自転車のお母さんに軽々と抜かれるのは、なんとなく腑に落ちない、など。
ちょっと例えがうまくいかなかったけれど、まあそういうことだ。

機械のことはようわからん、というほどジジイでもないし、どちらかというと新しいテクノロジーは好きな方だけれど、それでも徐々にはついていけなくなるんだろうと思う。それはこの「音楽の聞き方にまつわる変化」にもその傾向は現れてくるはずだ。
なので最近は、音楽はスマホのスピーカーでしか聞かない、という若者の話を聞いても驚かないし、初めて買ったCD?いや、自分CD買ったことないっす、というヤングがいても説教を始めることはなくなった。
それはもう常識とかなんとかではなく、彼らにとっての自然なことなのだと考えて。

バイト時代、知人に北新地のちょっといいお寿司屋さんに連れて行ってもらった時、当時、流行りだした回転寿司について大将に話を聞いたことがある。大将は「いいんです。どういう形でも寿司に触れてくれたら。回転寿司を食べてる若い人たちの中から、もっと美味い寿司を食べたいと思う人がきっと出てくると思うんで」みたいなことを言ってた。
まあ、そういうことです。

おまけ

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<このマガジン内のアイテムの中には、めっちゃあっさりしてるのもあったり単品購入はあんまりお勧めしません> 月◯回、更新します!と目標にしようとした瞬間に、得も言われぬプレッシャーがのしかかってきたので、精一杯更新します、にします。たくさん更新するとこもあろうかと思いますが、あぁ、そういうモードなんだな、と思ってください。逆もまた然り。

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