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三度目の絵金

絵金を見るために、過去二度高知まで出向いていました。
一度目は2012年、生誕200年の大絵金展。
二度目は2019年、赤岡の絵金祭り(お祭り中止になったけど)。

どっぷりがっつり鑑賞してるのでもういいかな~と思っていたものの、
夏祭り風に展示されているときいて楽しそうかもと。
絵金が観られるお祭りは赤岡だけではないし(10箇所ぐらいあるらしい)、
しかも開催日も別なのでまとめて楽しむのは不可能。
そう何度も高知へは行けないだろうと思いなおしてピャーッと行ってまいりました、場所はあべのハルカス。

最初のコーナーは見慣れた屏風絵が中心でしたが
撮影可能ブースでは櫓が組まれ、灯が入れられ、お祭り感を漂わせておりました。
普段ならじゃま~と思われる人影もなんだかそれはそれでありかもと。

朝倉神社の絵馬台
八王子宮の絵馬台
近年発見されたらしい石川五右衛門の絵馬提灯

絵金を知ったときの第一印象は血しぶきバッシャーの猟奇的な絵、
「残酷絵」とか「血みどろ絵」とかよばれてる界隈の派手なやつ?でという印象で、
そういうのが好みの一部の好事家にもてはやされてるアングラなイメージでした。
モチーフもなにかの場面を表してるんだろうなと漠然と思っていたのですが、芝居絵と知って、あ、な~る~~と。

それでも幼児などにとってはそれはそれは恐ろしい絵だろうし、
直視できない大人も沢山いるかも。
なぜこんな血みどろが神社や祭りの店先に??と思わずにはいられなかったのですが、
展覧会で経緯を知って至極納得。

現在でも赤岡の絵金まつりでは地歌舞伎の上演があるほどの土地柄ですが、
江戸時代末期、芝居興行禁止の統制が地方にまで及び、
代わりに芝居絵屏風が飾られることとなったのだとか。

なので想像するに生の舞台は無理だけど、写真で…いえ、VTRで、
いやライヴビューイングだー!といった気概で描かれたような。

歌舞伎自体見得や外連味の詰まったエンタメで
どれだけ沸かせられるかが勝負どころだったりしますが、
生舞台を越えんばかりの迫力や派手さを追求し、
観る客の心を湧き立たせようと挑んだのがこちらの芝居絵かと。

残虐な殺しの横で美しい女しょうがしれっと音曲を奏でていたり
忠義のためとやたら身内を手にかけてたりああ歌舞伎とおんなじ!と思える場面がいくつも。
ただの一場面の静止画というよりズームとパノラマを組み合わせたような感じで
より物語性を詰め込んだわくわくやぞくぞくを感じさせる構成になっているような気がします。

これが芝居絵と知ったときはちょっと安心したものでした。
血みどろ大好きな残忍な画狂人ではなく、仕事として仕上げる常人というw

とはいえいつもちょこっと感じずにはいられないのは芝居絵というのは隠れ蓑で、ホントは芝居を口実に「無残絵」を描きたい偏執狂だったのでは?という疑惑。
特に血しぶきには興味はないけど衆人楽しませるためこれでもかと一生懸命頑張って盛りに盛った結果コレで有名になりました、
というだけではないようなという気はするのですが。
多分に実のところは渡りに船的なw

需要と供給のマッチ。描きたいわ望まれてるわで。
奉納絵だからスポンサーはしっかりしてるし。

近くでじっくり拝見することができたけど、
俊敏性というかスピード感や躍動感、豊かな表情やポージングは
今時のマンガやアニメに勝るとも劣らず、
力強い描線と、鮮やかな配色は計算された視覚的演出と気迫のなせる業と感じ入った次第でした。

これなんかもう「無茶苦茶でござりまするがな」w

こんなの好きなんて言うとちょっと引かれるんじゃないかと心配したくなる展覧会でしたが、
外国人観光客や記念撮影している人も多く、
「浴衣半額Day」みたいなのを設け、観覧者も展示の一部となってお祭り気分を盛り上げるような機会があったら楽しいかも?という気がした催しでした。