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'1917' 盲目にならざるを得なかった男の物語

2020.02.26「1917 命をかけた伝令」鑑賞。
「スキャンダル」と迷ったけど、サム・メンデスなので。

邦題の通り、1次大戦中、ドイツ軍の罠から1600人の兵士たちの命を救うため、無人地帯へ飛び込み、作戦中止の命令を前線へ届ける若きイギリス兵の物語。

イーストウッドの'American Sniper'ぶりに、戦争映画を見たのだが、いつも決まって問いかけられるのは、

人が生きていくために必要な信念。
だが、それはあまりにも脆く、容易く崩れ去ってしまうもの。
そんな無慈悲な人間の定めを知りながらも、
あなたは、今信じているものを信じますか?

というもの。

今回の映画では、ウィルが伝令をしたあとの、マッケンジー大佐の言葉が印象的だ。
「また明日は、再び攻撃という命令が下されるだろう」
ブレイクとウィルが命をかけて遂行したものは、数ある伝令のうちの一つにすぎなかったことが、明らかになる時の、なんともいいがたいこの感じ。
人間という存在の虚しさを露わにしちゃう。

戦争という混沌たるものの下では、人は盲目にならねばならないのだろうか。'American Sniper'のクリス・カイルも、(戦争映画ではないが)'The Greatest Gatsby'のギャツビーも、今回の'1917'のウィルも、同じように現実界に向き合っていた存在だと考えるが、クリスとギャツビーを待ち受けていたのは、死であったのに対し、ウィルは生き延びることができた点は興味深かった。
その運命を分かつものは、上記の問いに対する姿勢であるのかもしれない。


--追記--
頑張って向き合ってきたラカンの理論も、数ヶ月離れるだけで頭から消えてしまうものだなあ。今回は最初の映画考察だけど、社会人になっても1ヶ月に1回くらいは更新できたらなと思う。

それにしても、多くの人々を盲目にし、全体を動かすことのできる戦争の威力はおそるべし。フロイトの『人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス』を、いつかまた面白い戦争映画に出会ったら、読んでみたい。

ちなみに個人的には、'American Sniper' 〉'1917'だった。

2020.02.28













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