自分に負けるな

嫉妬という感情は、望むとも望まなくても、子どもでも大人でも、生きている限り自分にまとわりついてくる。人は誰でも、自分を周囲と比較しながら生きていて、家族、友人、会社の同僚、恋人、日々誰かと時間を共有する中で、知らず知らずのうちにそのコミュニティの中での自分の立ち位置を確認し、ベストなポジションを探りながら生きている生き物だと思っている。

そして、負けたくない、優位性を保ちたい、という心情も、性別や性格に関わらず誰しもが持って生まれてきたもので、切っても切り離せないもの(その感情をコントロールできるか、表に出するかどうかは別として)。人生のどこかで、必ず向き合わなければいけないタイミングがやってくる。

焦りや不安、そして周りの人に対して抱く嫉妬心というのは、元を辿るとそういった、生き抜く為に人間に備えられたサバイバル本能のようなものなのではないかと最近思うようになった。そしてそれが、対外的に定まっている上下関係と一致しているのであれば、さほど問題にはならない。具合が悪いのが、対外的に定められた、あるいは暗黙のうちに両者間で築かれた上下関係と、実際のそれが逆転して、ねじれてしまった時だ。

例えば会社の中で上下関係にあった二人が、ある時を境に逆転したら?付き合っている男女間で優位に立っていると感じていた男性が、相手の女性の活躍によって優位性を失ったと感じたら?ある時自分の教え子が自分よりも目覚ましい活躍を遂げたら?後輩に自分の持っている知識や経験をあますことなく共有していたら、めきめきと成長してある時自分が追い越されるという脅威を感じたら?そういった、それまであった優位性が逆転した時、あるいは逆転しそうだなと感じた時に抱く焦りや不安、悔しさ。情けなさ。やるせなさ。そういった時に感じる感情は、まるでウイルスが体内で悪さをするようにものすごいスピードで人からエネルギーを奪い、負の感情が人の心を侵していく。

そのループから抜け出すには、自分の中に生じている負の感情にできる限り早い段階で気づき、認識し、向き合うこと。そして最終的には手なずけること。それができれば、何とか負の感情から自分を守ることができる。この時大事なのは、とにかく自分本位で考え、この状況、経験が自分の人生にどういった意味合いをもたらしているのかを、じっくり考えること。このプロセスは、できれば自分が心地よいと感じる空間で、誰にも邪魔されず、自分ひとりでじっくり考えるのがおすすめだ。そうして、今の環境に居続けることに自分なりに意味合いを感じ、納得感を持って時間を過ごせるようになれば、状況は好転する。そこまで到達すれば、それまでの努力や苦労、ネガティブな感情含めて、今の自分にとって必要な道だった、むしろその経験が糧になって、今の自分がある。その環境でふんばった自分に感謝をしよう、と思える日がやってくる。そして、渦中にいる時には見えなかった、気づけなかった、自分をサポートしてくれた人みんなに感謝する気持ちが湧き出てくる。そう思える日が、必ず来る。

不安という暗雲が立ち込めている時は、どうしても好転した時のイメージをクリアに描けないが、明けた時に、気づく。いかにこの大変な状況が、自分にとって貴重な経験だったかと。そんな風に語れる日のことを想像して、もうしばらくがんばろう。

「自分に負けるな」って言葉にすると、どうしても安っぽい響きになってしまうが、こんな時こそ、この言葉が持つ意味を胸にしっかり刻んで、力強く生きていきたい。

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