「屈辱の連敗」と引き換えに手に入れた守備改善の兆し?

試合情報

J2リーグ第17節 鹿児島ユナイテッドFC vs 東京ヴェルディ 
@白波スタジアム 13:00KO
前半0-3/後半1-0 合計1-3
〈得点者〉
(東京V)小池ー52分
(鹿児島)韓ー8分・42分、牛之濱ー40分
両チームスターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓

止まらない失点

前節、あまりにも衝撃的に見える、必然の敗戦を喫したヴェルディ。今節は前節の前半3失点の原因となった中盤ラインの守備の基準を持たせ、その中盤ラインを突破させない守備を披露してほしい試合となる。なんと鹿児島戦前の時点で9戦連続失点中とどうしても失点が止まらない現状。水戸ホーリーホック戦以来クリーンシートは無い。今節こそは、と言いたいところだがJ2初挑戦組のアウェイ戦では相手に勝ち星を献上することが多いということも、ちょっと頭をよぎるそんな試合前であった。メンバーとしては安在と山本がプロ初先発。梶川と林も久しぶりの先発となった。
対する鹿児島ユナイテッドは3連敗中で21位だが、昨季FC琉球をJ2昇格へと導いたキムジョンソン監督が率いている。攻撃的なサッカーをするのは変わらず、攻撃がハマると上昇していけるだけのポテンシャルを持ち合わせているチームだと思った。
それではいつも通り攻撃と守備の2局面で振り返っていきたいと思う。

攻撃

ヴェルディ、前半の攻撃の形は下図だ。

相手の鹿児島は4-4-2中央圧縮型で構える守備スタイル。ヴェルディの攻撃時は2-3-5。ライン間は閉鎖されボールを入れられず、IHはマークに付かれるシーンがありハーフスペース間から前進できないシーンは多かった。ただ相手の中盤ラインはヴェルディのSB-IH-IH-SBの5レーン全てを守らなければならないため、幾度か横に伸びてしまいライン間をヴェルディが使えたものの、前を向かせてもらえずサイドに追いやられるシーンが多かった。この試合の鹿児島の守備の狙いは真ん中は閉めサイド誘導から圧縮しボールを取りきる守備だ。鹿児島は潮音にはある程度フリーで持たせていたことからも、最優先が真ん中を閉めることであるのが分かる。結局そこからサイドに出してボールロストがかさんでしまったり、中盤でロストしてそのままカウンターのパターンも幾度かあった。サイドでボールを持ててもクロスはほとんど合わず前半はそれらしい攻撃がなく、鹿児島の思い通りに進んでしまった。

ハーフタイムで梶川→コイッチ、近藤→ヨンジで4-4-2へ変更。ミラーゲームにした。鹿児島はプレッシングラインをミドルサード〜ディフェンシブサードに下げ、ヴェルディの2-2ビルドアップには2CFで対応するようになる。ヴェルディはまず自由がある程度ある2CHにボールを預け前進し、アウトサイドレーンのSBからのクロスも狙っていた。そして得点シーンだが、2CHがフリーなので遅れて鹿児島のCHが寄せるとその裏のギャップを突き縦に速い攻撃で得点を生み出した。これは相手の守備方法を逆手に取った素晴らしい攻撃プロセスではないかなと思う。キーパーのミスはあったものの流れは良かった。また優平がライン間でフリーマンの役割を受け(もともとそういう選手でもあるが)相手のマークのずれを作っていた。前半は動きすぎたが故にネックになってしまったが、後半はミラーゲームの中でずれを作る存在としてかなり活躍していた。しかし、この中でもクロス精度や、シュートがポストに阻まれるなど、なかなかフィニッシュワークで精度が少し足りず、4-4-2の時間帯で上手く得点が奪えなかったのは難しさをより増してしまう展開となった。

80分くらいからは佐藤に代えて若狭を投入。3-4-3に変更。しかしその間に鹿児島も選手交代で4-5-1へ。5レーンを確保され残る攻撃手段はHVが1トップ脇からのクロスの選択肢。しかし、相手DFラインに跳ね返され得点とはならず。1得点に終わった。

守備

前半は下図のような形で守備をしていた。

鹿児島はSH、もしくはSBが常にインサイドとアウトサイドをどちらかのレーンを埋める、そんな動きをしているように感じた。実際1失点目、3失点目は左サイドでSBとSHのインサイドとアウトサイドの関係性が見てとれるシーンだった。そういった形の2-4-4。ヴェルディは序盤は梶川が前に出て4-4-2で横圧縮し守っていたが、徐々にいつも通りの4-5-1からの守備になってくる。上図にあるように、前から行けなかった時の相手の選択肢が多すぎたのだ。さらにこの日のヴェルディは幾度も守備基準が無いことを露呈させるシーンを見せていた。それが下の画像2枚だ。

実際、バランスを崩して縦パスを入れられているシーン2つだ。しかし、実際はこれだけでなく前半は何本も縦パスを入れられている。そしてこれの原因は、相手CFのハンがポストプレーを得意としているのは恐らくスカウティング済みなはずなのに、縦パスのコースを容易に開けてしまっていたことに起因する。ましてやその守備により酒本にもポストプレーをされ失点もしている。
シーン1では優平が中原に左から制限をかけるようにプレス。しかし山本が梶川との距離感を無視して五領のマークに行ってしまったのだ。その動きでセンターレーンがガラ空き。縦パスを入れさせてしまう。優平の寄せた角度的に中原から五領へのパスコースはほぼ無く、山本が五領にマークする必要はほぼない。
シーン2は相手に少しずつプレスをかけ、赤尾まで下げさせるも、梶川が前にプレスして中原をフリーにしてしまう。もちろんその後ろの山本は左後ろから中原にアプローチするもワンタッチでハンを使われ、前進を許した。
このようにサッカーでは当たり前の相手、味方、スペース、ボールを見てプレーするところからすでにミスが起こっている。相手の位置、味方がカバー・マークができるのか、出て行った後のスペースは使われないか、ボールは今から寄せても蹴られないのか、そんなところだろう。後ろからの声がかかってるかは分からないので何とも言えないが、この守備の順番はいかんせんおかしい。ホワイトの試合後のコメントでも、守備原則のところの指摘があった。正直、ヴェルディの選手達が出来ないとは思っていなかったんじゃないかと筆者は推測する。

そして後半、4-4-2vs 4-4-2のミラーゲームになるのだが、相手はCHvsCHの構図をあまり好まなかったのか、全体の重心を低くしそこのデュエルはあまり仕掛けてこなかった。しかしそれが裏目にヴェルディの2CHは前に重心を置かされる(本来は置きたくて置いているが)。そしてクロスのセカンドボールや相手中盤ライン付近でのボールロストで高い位置を取るヴェルディSBとCHの裏を使われてカウンターで裏返しにされるシーンが目立った。しかし、これは後半攻めに出た代償とでも言うところだろうか。致し方ないものかなと感じた。実際は鹿児島のカウンターの質に助けられたところもあったが。

まとめ

この試合も結局守備基準のない中盤を幾度も突破されてしまうという試合になった。1週間では修正できなかったのか、はたまたメンバーチェンジで終わらせてしまったのか、真相は分からない。ただ試合後のコメントで守備原則には触れており問題意識はあるようなので、何かしらの変化に期待したい。というか変化してもらわないと困る。前半3失点を2試合連続など、もう見たくはない。京都戦のレビューでも同じことを繰り返すと言ったものの、誰もそんなことを望んでいない。ホワイトの真価が問われる1週間となるのは間違いないだろう。
次節は強力な前線の選手を揃えている甲府。3-4-3システムなので、中盤の守備の出来は試合に直結する可能性が高い。そもそもどのチームとやってもそうだが、より関わってくる可能性がある。次節を楽しみに待ちたいと思う。

最後までお読みいただきありがとうございました😊

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