今、蘇る血①

古畑任三郎が大好きだったもので、タイトルをオマージュしてみました。今日は馬の話。

皆さんは、300年に及ぶサラブレッドの歴史の中で、連綿と灯されてきた1つの灯が今まさに消えようとしていることはご存知でしょうか。そして、それに抗おうとする「浪漫」があることはご存知でしょうか。(世の中でウマ娘が俄にブームになっているようですので、波に乗っかりこのことについて触れてみます)

世界中に数多いるサラブレッドは、血筋を辿っていくと必ず次の3頭に行き着きます。

【ダーレーアラビアン】

画像1


【ゴドルフィンアラビアン】

画像2

【バイアリーターク】

画像3

画像は全てJRAのHPからのものですが、もちろん想像の絵に過ぎません。詳細は省きますが、サラブレッドとしての品種を確立するためにアラブ地方などから何百頭とイギリスに連れてこられた馬のうち、結果としてこの3頭の血が残ったもので、当時の人が「この3頭が全てのサラブレッドの祖先になる」と思っていたわけではありません。

兎にも角にも、全てのサラブレッドの始祖に当たるこの3頭を「三大始祖」と呼び、以来300年以上その血が受け継がれてきました。

そして、この三大始祖の1つ、バイアリータークの血脈が、まさに今この時に世界から消えようとしているのです。

(サラブレッドの血統は、主に父系の血に着目されています。その理由や母系の話はまた別の機会に書ければと思いますが、今回の話はあくまで父系の血脈の話です。)

三大始祖の血は、長い歴史の中で栄枯盛衰を繰り広げて来ましたが、19世紀頃から趨勢が明らかになり、今ではダーレーアラビアンの血脈が97%くらいを占めています。残り3%のうち2%がゴドルフィンアラビアン、1%がバイアリータークという状況です。

ゴドルフィンアラビアンも数字上は似たりよったりなのですが、バイアリータークについてはさらに悲惨な事情があります。それは、世界中に有力な種牡馬がほとんどいないこと。すなわち血を繋いでいける可能性か限りなく低い状況になっています。

サラブレッドの世界も類に漏れず弱肉強食で、ダーレーアラビアンの血脈だけでももはや血の多様性は確保できる状況ですから、ある意味バイアリータークに拘る必要はないとも言えます。

ただ、そこに日本特有の事情、日本競馬界ではまだバイアリータークが直近まで輝いていた(こんな国は日本しかありません)という事情が加わると、人の気持ち、すなわち「浪漫」が拘ってくるのです。

②へ続く

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