見出し画像

THE LAND BELOW THE WIND

東南アジア赤道直下の世界第3の面積を誇るボルネオ島、その北東に The land below the wind (風下の国)と呼ばれる美しい国があるのをご存知でしょうか。

1963年9月、長きに渡るイギリス植民地から独立を果たし、同じくイギリス植民地であった隣のサラワク州、半島マラヤ、シンガポールとマレーシアを建国するに至ったサバ州です。

北海道より少し小さい州面積を持つサバ州は、西部に標高800〜1,200mのクロッカー山脈、標高2,642mのトゥルスマディ山などを抱き、その北東の端には、サバ州のシンボルとなっている東南アジア最高峰(標高4,095.2m)のキナバル山が悠々と聳え立っています。

その麓には低地混交フタバガキ林(東南アジアの低地熱帯雨林)が広がり、標高を上げると共に雲霧林、そして高山植物へと動植物相が変化し、キナバル固有の動植物も多くユネスコ世界自然遺産にも登録されています。

キナバル山には登山道や山小屋が整備されており、各国から登山客も訪れる人気の観光名所となっていますが、Kinabaluとは昔からこの地で暮らすカダザンドゥスン族の言語で Aki Nabalu(先祖の魂が休む場所)と言う意味があり、地元の人々にとって神聖な場所であり霊山となっています。

また、低地の広がる東部には太古から続くボルネオの巨木たちの森が残り、世界最小のボルネオゾウやボルネオオランウータン、ボルネオウンピョウ、大きな鼻を持つテングザル、世界最小の類人猿ボルネオギボン(ヒガシボルネオハイイロテナガザル)や不思議な姿を持つニシメガネザル、スローロリス、空飛ぶカエルやトカゲにヘビ、色鮮やかな鳥類や、無数の昆虫など、驚くほど多様な生きものたちが暮らしています。

そしてその生物多様性の高さは陸地だけに留まらず、州東部沖に広がるセレベスの海には、目を疑うほど多種多様な海洋生物が暮らす竜宮城のような美しい海も広がっていたりします。

そしてその多様性は動植物だけではありません。サバの州人口の7割弱は先住民族の人々が占めているのですが、大きく分けると42〜50民族、支族に分けると200以上もの異なるエスニックグループの人々がいらっしゃいます。

さらに英国植民地時代に、本土から移り住んでこられた中華系(サバ州は客家系の方が多い)や、北インド(現パキスタン付近)から来られた方々、そして近隣諸国からの移民も多く、多様性に富んだ民族構成となっています。

先住民の人々の間で話されている言語だけで50言語、方言を入れると80言語あると言われており、言葉や民族、文化風習や信仰の異なる様々な人々が、北海道よりひと回り小さいサバの大地で、時にぶつかることはあれど、それぞれを尊重し合い、絶妙な距離感で平和に暮らしています。

不安定な世界情勢となっている昨今、かつてのように気安く海外に足を伸ばすと言うことも容易ではない状況となってきてはおりますが、もし機会がございましたら、風下の国サバの大地に足を伸ばされてみてください。きっとサバの大自然や人々が、素敵な何かを与えてくれるような気がします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?