【絵本作家】トミ・ウンゲラー(TOMI UNGERER)
大好きな絵本の一つである『すてきな三にんぐみ』の作家トミ・ウンゲラー。どの作品も非常に強いメッセージが込められ、少しシニカルで思慮深い作品です。おどろおどろしい雰囲気も多く、一瞬手にするのを躊躇しますが、読めば読むほどその魅力にはまっていきます。ウンゲラーの代表作になった本作品は、娘フィービーちゃんに捧げられて制作されました。
**<作品リスト>**
The Mellops Go Flying (1957)
Mellops Go Diving for Treasure (1957)
Crictor (1958) 『へびのクリクター』
The Mellops Strike Oil (1958)
Adelaide (1959) 『アデレード ― そらとぶカンガルーのおはなし』
Christmas Eve at the Mellops (1960)
Emile (1960) 『たことせんちょう/たこのエミール』
Rufus (1961) 『こうもりのルーファス』
en:The Three Robbers (1961) 『すてきな三にんぐみ』
Snail, Where Are You? (1962) 『どこにいるの、かたつむり』
Mellops Go Spelunking (1963)
en:Flat Stanley (1964) — Jeff Brown著、イラスト『ぺちゃんこスタンレー』
One, Two, Where's My Shoe? (1964)『どこにいったの、ぼくのくつ』
Beastly Boys and Ghastly Girls (1964) — William Cole編、イラスト
Oh, What Nonsense! (1966) — William Cole著、イラスト
Orlando, the Brave Vulture (1966)
What's Good for a 4-Year-Old? (1967) — William Cole著、イラスト
Moon Man (Der Mondmann) (1966) 『月おとこ』
Zeralda's Ogre (1967) 『ゼラルダと人食い鬼』
Ask Me a Question (1968)
The Sorcerer's Apprentice (1969) — Barbara Hazen著
Oh, How Silly! (1970) — William Cole著、イラスト
The Hat (1970) 『ぼうし』
en:I Am Papa Snap and These Are My Favorite No Such Stories (1971)
The Beast of Monsieur Racine (1971)『ラシーヌおじさんとふしぎな動物』
The Hut (1972) 『ぼうし』
Oh, That's Ridiculous! (1972) — William Cole著、イラスト
No Kiss for Mother (1973) 『キスなんてきらいだ』
en:Allumette; A Fable, with Due Respect to Hans Christian Andersen, the Grimm Brothers, and the Honorable Ambrose Bierce (1974)
Tomi Ungerer's en:Heidi: The Classic Novel (1997) — ヨハンナ・スピリ著、イラスト
Flix (1998) 『フリックス』
Tortoni Tremelo the Cursed Musician (1998)
Otto: Biography of a Teddy Bear(『オットー ― 戦火をくぐったテディベア』) (1999)
Neue Freunde (2007)『あたらしい おともだち』
Zloty (2009)
●『すてきな三にんぐみ』(1963年)作:トミ・ウンゲラー 訳:今江祥智
夜のシーンにどろぼうの三人組。ちょっとおどろおどろしい雰囲気ですが、最後盗んだものとその後の展開にぐっと来ます。最後に三人に似た塔が出てきますが、似たような塔をエストニアの首都タリンで見掛けました。
英語原題は「THE THREE ROBBERS」。とってもデザイン的で全く色褪せない素晴らしい作品。そして、日本語訳の方が素晴らしいという、稀有な作品で、大好きです。
●『ぼうし』
トミ・ウンゲラーの別の作品も読んでみようと手にしたのがこの作品です。表紙がのオシャレ具合と他愛もない「ぼうし」というタイトルにワクワクしました。なんでも助けてくれるぼうしの存在で幸せになる主人公がぼうしとの別れになったシーンは実はぼうしと出会ったシーンと重なります。
人生において大切なモノは何か、トミーウンゲラーは読者に問いかけます。
●「どこへいったの?ぼくのくつ」「どこにいるの?かたつむり」
この2作品はタイトル以外ほぼイラストのみです。素晴らしいクオリティのイラストで良く見ると靴やかたつむりが隠れていて、言葉を超えて楽しめます。
●月おとこ(原題:MOON MAN)
おどろおどろしいタイトルと表紙で、人に勧められなかったら、そしてトミ・ウンゲラーを研究しようと思わなかったら手にしなかった作品。原題の『MOON MAN』ならちょっとカッコいいけれど、『月おとこ』となると怖さが増してしまうのですが、何度も読めば読むほど味わい深いのです。月に関連した絵本は沢山ありますが、月の満ち欠けを組み込んだ作品は私が読んだ範疇では今のところこの作品のみ。
子ども達は「月のぼうや」と呼んでました。確かにちょっとお地蔵様っぽいぼうやっぽさがあります。
●『こうもりのルーファスくん』(Rufus/1980年)
トミの作品はいつも異質な者が主人公。誰しもが新しい世界を知って憧れるも、自分に合った環境が大切と知る過程が描かれている。蝶のコレクターのタータロ先生も、興味の範疇外のルーファス君とも仲良しになれるというのも示唆的。
●『FLIX』(フリックス) 作:トミ・ウンゲラー
●『あおいくも』(Le nuage bleu)作:トミ・ウンゲラー
また凄くウンゲラー節の利いた作品。肌の色が違うことで争ったり差別する現代社会を痛烈に批判するのみに留まらず、その解決策を提案。またそのあおいくもの健気なふるまいに心打たれます。
●『あたらしい ともだち』 作:トミ・ウンゲラー(75歳2007年)
今まで寓話的に描いて来た世界を、いよいよ具体的に黒人のラフィーとアジア人のキーとの友情をストレートに描いています。
●アデレード~そらとぶカンガルーのおはなし~
今までの怖い雰囲気の表紙ではなく、物凄くポップでビックリ。出版社のオーダーかしら??と思いきや、初期の作品。『クリクター』と近しい時期でフランスのオシャレ感が出てます。サラッと読むと、まあ普通と思いきや、やはり繰り返し読むとジワジワくるのがトミ・ウンゲラー。世界を飛び回って、自分を知るというメッセージが込められています。また、羽の生えたカンガルーという異質な存在の誕生に両親がビックリしたり、パリの街で"つばさのある 仲間たちが沢山いたり"、という人との違いの要素は孕み、泣いているシーンが幾つかありつつも、物凄くポップでハッピーエンドな軽いタッチの作品。
●クリクター(CRICTOR) トミ・ウンゲラー
初めて知ったのは、デザイナーが好きな本として挙げていたから。バーバパパに通じる感じ。(バーバパパは、1970年代にチゾンとテイラーが共にパリのリュクサンブール公園を散歩中、ある子供が両親に「barbe à papa(バーバパパ、フランス語で「わたあめ」)」と話しているのをテイラーが耳に挟んだ。アメリカ人のテイラーはフランス語が分からなかったためその意味をチゾンに聞いた所インスピレーションを受け、パリのカフェでいたずら書きした手紙からバーバパパが生まれた。ので、1958年に発表された本作の方が先となる)
でも、ペットをかわいらしいウサギなどではなく、蛇にしちゃうところが、ウンゲラーらしく、さすがの腕力。
●たことせんちょう(エミールくんがんばる)EMILE 作:トミ・ウンゲラー
これは、震えました。まず、奥付に、トミ・ウンゲラーの本名がまだ掲載されてます。そして、付録の本には、なんと三島由紀夫含む対談が掲載されています。日本の絵本のレベルを上げようと組まれた新プロジェクトの意気込みを目の当たりにして、絶句しました。
で、この
●『ラシーヌおじさんとふしぎな動物』
遂に私は本作を開いて、震撼しました。
多くの絵本は、自分の大切な人に捧げると記されていることが多く、トミ・ウンゲラーの作品は全て違う人に捧げられているのですが!なんと「かいじゅうたちのいるところ」で有名なモーリス・センダックに捧げられているではないですか!
さて、お話ですが、表紙からまた物凄い奇妙な象のような生き物が登場。タイトルでも"ふしぎな動物"と言っているので、いよいよ謎が深まります。で、そんなおどろおどろしい動物が表紙なので、また手に取るのを躊躇してしまったので、ちょっとラシーヌさんと仲良くなって、ソファーでお茶している絵とかはもう、いとおしさを感じてしまうほど心の変化があるんですよね。ゾッとするくらいの見た目で変わっているのに、それをもろともせず向き合う大人がいつもトミ・ウンゲラーの作品には登場します。そうそこから、バイクに乗って出かけたり、滑り台を一緒に滑ったり、ブランコに乗せてあげて、リボンまでつけてあげて。
●ゼラルダと人食い鬼
また、この恐ろしい表紙画と、タイトルが手に取るのを一旦躊躇させます。期待しないで開くものだから、一ページ一ページ非常に面白いのです。
「はい、このページで感じることを!」と私が言って、子ども達が次々に発見していきます。ベットサイドテーブルの下にお鍋のようなものが描かれていて、子ども達をこれは一体何だろうと議論になりました。そこへやってきたヨーロッパ人の夫が「これはトイレだよ。昔の家はトイレが外にあったから、夜中トイレ行くのは寒いし、これで用を足したんだ。因みにベットについてるカーテンも、断熱のだめなんだ。」と教えてくれました。私たちはてっきり夜中お腹が空いたら食べるスープがあるのかと思いましたが、なんとヨーロッパも日本もトイレが外とか家が寒いとか共通の悩みだったわけですね。。。あともう一つ、暖炉の前にいつも描かれているネズミ捕りみたいなモノが何だろうと話してたら、夫が「これは暖炉の火を強くするために空気を送る器具だよ」と教えてくれました。なるほど言われてみれば、そうだと分かりますが、楽器かなとさえ思いました。
そして、この本は思わず作ってみたいな~と思うような料理一面のページがあります。
ゼラルダは6歳で沢山の美味しそうな料理を作るのを何度も読んでいると、料理をしたくてうずうずしてくるから不思議です。おどろおどろしい雰囲気とは打って変わって、読み手に料理の魔法を伝える一冊でもあります。
人食い鬼と、ゼラルダのパパは同じように鼻が大きいのが特徴で、ハーモニーキッズたちは冒頭では「パパが人食い鬼なんじゃないか?」など想像が膨らみます。実際はひげが違うと見比べたりして、結果も別人だったわけですが、同じ地域で同じような民族の中でも、それぞれ違い(子どもを食べる嗜好の人とそうではない人)があるというのをウンゲラーは表現したのではないかと思いました。
●Otto: Biography of a Teddy Bear(『オットー ― 戦火をくぐったテディベア』(1999)
●トミ・ウンゲラーの絵本論
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